第57話「消炎と波導の爆炎」
とある男が目を覚ました。
千夜が目を覚ました。だがあの男に手を出して死にたくないと感じた。
潜在的恐怖心が勝ってしまった瞬間だろう。
だが千夜は自身の眠る力の前に臆するのは嫌いだということがわかった。
自分のために力を奮う。世界を理から救うために力を行使する。
なんというか不安などなかった。
ライカを手に入れるという目標は当面の間保留になるが……まあいいだろう。
燃焼的だったと言わざるを得ない。
研究所を抜け出した千夜は一人で生きていくことを誓う。
たまには帰ろうと思う。
どうせ精神支配で全ての人間は俺の意のままだからな。
千夜は最初はその日ぐらしだった。
親はいつの間にかいなかった。
確か記憶ではいたはずなのだが……俺が化け物と知っていなくなっちまった。
千夜は化け物だ。
この世界では超能力なんて言うものが存在するなんて思われていなかった。
最強の能力を持つゆえに能力を複数持つ時点で人間としての規格外の力を持つのである。
千夜は夢があった。確かたった一人の妹がいた。
そいつは今でもどこかの病院で入院していると思う。
会いに行って兄ちゃんの元気な顔を見せてやりたいもんだ。
そういえば弟もいるが、最近真のやつは会いにこないな……まああいつはあいつで頑張っているだろ。
ダンジョンの素材を売って生活するのも悪くないかもな……
だが可笑しい。俺の天然的な索敵レーダーによると1人の幼女がなんか男たちに狙われているような気がする。
聴覚も異常なまでに発達している千夜は聞き取る。
「来ないで!! なんで私を捕まえようとするの!?」
「ダークエルフという貴重な存在を見つけたのですよ……狙わないわけがないですよ」
とりあえず現場に特急に行くことにした。
空を飛んだ。爆進移動で宙を飛んだ。千夜はその幼女の場所に来た。
そこの幼女は耳が尖がっていた。
しかも褐色である。いや褐色なのはいいが耳がエルフのように尖がっている。
ダークエルフというと確かにファンタジーだ。
だが自分には関係ないことだ……関係ない?
いや確かに関係ないのだが……だが腑に落ちない……俺はどうしちまったんだ?
目の前に男たちに狙われている幼女がいる。
助けないのは男としてすたるんじゃないか?
千夜は人の好い男じゃなかったがあの事件で人が変わったのか……いやもともとの優しさがあるのかわからないが……千夜の取る行動は一つだった。
目の前の男たちから幼女を守る。
男たちに精神支配を行う。
簡単に動きを止めた。
「お兄ちゃん……誰なの?」
「行くぞ……あいつら直にあとで記憶を失って目覚めるからな……」
「お兄ちゃんものうりょくしゃってやつなの?」
その場からお姫様だっこしてダークエルフ? の幼女を抱えて飛ぶ千夜。
しかしこんな面妖な耳を尖らせたダークエルフなのか本当に?
そんなファンタジーな生物がいるなんてと千夜は驚いていた。
とりあえずアジトにしている誰も借りてないワンルームのアパートで夜を明かした。
コンビニでオレンジジュースを買ってくる。
千夜の好物だ。いつもオレンジジュース……健康のために野菜ジュースやトマトジュースも飲む。いうなれば嗜好品だ。オレンジジュースは缶に入ったやつをいつも買ってくる。
ダークエルフの幼女は名前をリアンナ・マギレスクと言うらしい。
まだ9歳だというらしい。本当に幼女なのかよ……と千夜は思った。
リアでいいなと勝手に名前を省略した。
「リアはどこから来たのかな?」
「ダークマギアスターのダークエルフの森から来た」
「なんだそれ……それはどこにあるんだよ?」
「そんなの私が知らないわよ……ここはどこなの私のいた場所とは文化も社会制度も違うのよ」
「そうだなたぶんリアは異世界から来たんだなたぶん」
「異世界……? そうだよねやっぱりここは私のいた世界とは違う異世界だよね」
「当分お前を匿ってやるからな……俺はこの世界で一番強い超能力者だからな」
「そうなのお兄ちゃん?」
「俺には無導千夜って名前があるんだが……千夜でいいぞ」
「それじゃあ千夜兄って呼ぶ千夜兄は私の魔力に惹かれているの?」
「魔力か……」
そうであるリアの魔力らしきもの……高位の超能力者だと相手の能力者の力内包する力がなんとなく測れるが……リアの魔力というものは確かに高いと感じ取れる。
リアはなんでこの世界に来てしまったのだろうか……この世界は意外にもろくでもないからな……恐怖と絶望が支配する糞汚い世界だと言うことに。
ダンジョンが出来たことにより暗黒組織がまた派閥をかねている。
そいつらが俺たちのような天然的な能力者狩りをしていることを知っている。
今でこそ研究所があるがそれがない時代は暗黒組織が警察よりも力を備ええていたから能力者たちは自衛をするために闇に溶け込んだものだ。
俺は知っているこの世界の闇を。
だからこそその闇を潰す。この世界から闇を潰してやる。