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芸能界、作曲家兼プロダクション社長は、才能のかたまりを見つけた。 ~こら、抱きつくのはやめなさい!~

作者: マス シゲナ

はじめましての方ははじめまして。

今までの作品を少しでも読んでいただいた方は、おひさしぶりです。

今回、4作目となります。

短編、恋愛物です。

少しでも、楽しめたらいいなと思っております。


 いろんな企画のオーディションで、よく見かける女の子がいる。


 時に、アイドルグループのオーディション。


 時に、映画のヒロインを決めるオーディション。


 ジャンル問わず、様々なオーディションを事務所を通して受けにいくが、ほとんどが最初の選考か、二次選考で落ちている。


 本来、事務所のマネージャーが、どこが悪いか、どうすれば良くなるとかと、説明したり、注意したりするはずだが、なにも言わない。

 何人もの同じような売れない卵を持つマネージャーは、とりあえずオーディションを受け、仕事を取れというスタイルをとっている。


 そして、この女の子もそういった、ある意味被害者である。

 そうハッキリ言って、マネージャーが悪い。


 確かに、時にはそういうやり方で、選ばれ売れる卵も出てくる。

 しかし、それはその卵の努力による才能が開花した結果であり、マネージャーの実力でもなんでもない。

 それを、このマネージャーは、俺が育てた。見つけた。俺凄いと自慢しているらしい。


 と、同じ事務所にいる、俺の友人から聞いた話だ。

 結構、有名で嫌われているらしい。


 さて、その友人から聞いた話だと、まもなく、その女の子の契約期間も切れるらしい。


 そして、今日、最終契約その日が来ると友人から教えてもらい、今回最終まで残った、オーディション会場に来ている。

 更に、最終契約日という事で、そのマネージャーも来ていた。


 結果、今日も最終オーディションまで残っていたが、女の子は選ばれなかった。



最終ここまで、残ってはいたが落ちてしまったな。

 残念だが、契約に基づき、今日で我が事務所は君との契約を打ち切られてもらう。

 ……うちとしても、いつまでも君のような、売れない者を残しておくことは出来ない」


「……はい」


「もし、諦められず、他の事務所に契約するのはかまわない。

 それで、君が売れて活躍出来たなら、その時は応援させてもらう」


「はい……今まで、ありがとうございました」

 女の子は頭を下げた。


「じゃあ、今までご苦労さん」

 マネージャーはそう言って背を向け会場を出ていった。


「……うっ、うっ」

 マネージャーの姿が見えなくなり、頭を上げた女の子の顔は、涙で濡れまくっていた。



「えっと、大丈夫かい?」

 陰で見ていた俺は近寄り、ポケットからハンカチを出し、差し出した。


「……」

 女の子はハンカチと俺を何度も見比べる。

 突然、知らない男が声をかけハンカチを渡そうとするんだ、警戒して当たり前か。

 そう思っていたら


「ありがとう……ございます」

 女の子はハンカチを受け取り、涙を拭いた。


 それが俺、作曲家で独立の芸能事務所を構える、遠峰武春とおみね たけはると、俺が見つけた才能のかたまりな女の子のファーストコンタクトだった。




 女の子、天城司あまぎ つかさは小学6年生の12歳で、芝居や歌の発声は俺好みであり、歳のわりに大人びた、かわいい顔つきで、身長もそれなりに高く、スタイルもいい

 様々なオーディションでも、その事に触れていた。

 ただ、芝居は途中でセリフを噛み、演技の表現力は足りなかったと思う。

 歌に関しても、振り付けについていけず、また、歌い続ける体力がない。

 でも、そういった事は練習次第でなんとでもなるし、それ以上に声の質、発声量、リズム感は素晴らしい。

 それを、あのマネージャーはアドバイス1つも出さず、放りぱなしだったのだ。

 まったくもって、腹が立つ。

 ……まあ、お陰でこの子と出会えたしよかったんだが、ここで問題が発生した。


「私、もう諦めようと思ってます」


 そう、この子はすっかり自信を失くし、諦めていたのだ。

 ……あの、くそ野郎が~!


 俺達も会場を離れ、近くの喫茶店で話す事にした。

 まずは名刺を渡して、俺の事を説明し、知ってもらった。


「遠峰芸能……プロダクション社長。

 遠峰、武春さん」


「知ってるかな……結構作曲しているんだけど」


「……知ってます。

『ラブ・マシンガン』とか、『深き霧雨』とか、作曲した」


「そう! 知ってるんだ?

 嬉しいな~。

 それで話は戻るけど、君が落ち込み、諦めたい気持ちもわかる。

 だけど、俺からしたら、頑張れば君はいくらでものびるし、絶対に売れて人気者になれる。

 俺が保証する。

 諦めないで、ねっ?」


「……でも」


「君はどうしてオーディションを落ちたのかも、全然わかっていない。

 それは、今まで君についていたマネージャーの責任であって、君じゃないんだ。

 君は今まで一度でも、あのマネージャーからアドバイスを受けた事あるかい?」


 司ちゃんは首を振る。


「だろ……俺の事務所に入ってくれたら、俺もいくらでも歌のレッスンもするし、演技指導者もいるし、ダンスのコーチもちゃんといる。

 1年……いや、早くて半年頑張れば、仕事は取れる。

 そのあいだ、レッスンの費用もいらない。

 出来限りレッスンは出てもらいたいけど、無理もさせない。

 ある程度の時間になったら君のご両親に連絡するし、俺か誰かに送らせる。

 どうだろうか?」


「どうして……そこまで?」


「君に最高の才能を見た。

 そして、惚れ込んだ!」


「!」

 司ちゃんは急に顔を真っ赤にして、頼んでいたクリームソーダを勢いよく飲みほして

「私で、いいんですか?」


「君がいいんだ。

 君が欲しい」


「えっと、今なら家にお父さん、お母さん、います。

 今日駄目なら諦めるって言って出てきたから、今の事、話してもらってもいいですか?」


「もちろん!

 もともと保護者のサインをもらわなくちゃならないし、(契約してくれるなら)いくらでも話にいくよ」


「あ、ありがとうございます。

 頑張りますから、末長くお願いします」


「うん、よろしくお願いします。

 じゃあ、行こうか。

 道案内、よろしく」


「はい!」


 こうして、このあと無事に契約も取れ、司ちゃんは晴れて我が事務所の一員となった。

 やったぜ! 



 この時、司ちゃんの初恋も始まったとは気づきもせずに。




 半年後、司ちゃんは中1ながらファッション雑誌の仕事を取ったのを切っ掛けに、ドラマの脇役、CMなど、少しずつ取れるようになった。


 噂では、前のプロダクションのマネージャーは、凄く悔しがっていて、事務所からいろいろと責められているらしい。

 ザマァみろだ!


 仕事が取れたからといって、司ちゃんはレッスンを受け続けている。

 司ちゃん曰く、早くドラマの主役を取りたいらしい。


 そういう事なら、俺もいくらでも手を貸す。


「司ちゃん?

 そろそろ、うち来て1年だけと……歌、出してみない?

 俺、何曲か書いたんだけど、どう?」


「本当ですか?

 ……あ、でも、どうだろう。

 まだ、ダンスが難しくて、何度も間違えちゃうから」


「えっ、そうなの?

 んじゃ……振り付けの少なく出来る曲で出して見る?」


「え、う~ん。

 遠峰社長……出来ればもう少し延ばす事ってできます?」


「そりゃ、もちろん出来るけど……まっいいか。

 仕事詰めすぎても仕方ないし、司ちゃんが納得できて、余裕があればで」


「ごめんなさい………社長」


「いいよ、気にしないで」


 この日は、これで残念ながら話は流れた。

 残念……早く、司ちゃんの歌声を世間にひろめたいのになぁ。



「って、言われたんだけど、司ちゃんのダンスってどうなの?」

 翌日、司ちゃんの演技指導担当とダンス指導担当の2人に聞いてみた。


「そこまで下手じゃないよ?

 ただ、歌いながらリズム取るのが少し苦手みないだけど」


「演技もそうね。

 セリフをいうのに集中して、動きがおかしいところもあるけど、それはそれで面白いけどね。

 あの子らしいと思うし微笑ましいわ。

 私的にはそれを残しつつ、スムーズに演技できたと指導していきたいわね」


「そうか……じゃあ、歌をうたうのはもう少し待つか。

 んじゃ、2人とも司ちゃんの指導頼むね」


「わかった」


「わかったわ」



 それから1年、司ちゃんは中2になり、ドラマの主役も一本取れたが、年相応なドラマの役が少なく、自然、妹役や、いじめる同級生などの脇役が多くなる。


「あー、早く、大人になりたーい」

 最近の彼女の口癖だ。


「大丈夫だよ、仕事してたら気がつけば、いつの間にかなってるよ」


「ほんと~?」


「本当さ、高校卒業して、バンドでインディーズデビューしたけど、俺だけが曲が合わなかったりで、バンドを首になって、ついていたマネージャーに『作曲しながら、うちに入らない?』って言われ、8年間言われた通りにマネージャー業頑張って、書いた曲も売れて、独立して今の事務所を構えるが出来た。

 お陰で、司ちゃんに会えた。

 そう思うと、あっという間な時間だったよ」


「ねえ、そういえば社長って歳いくつなの?」


「え?

 突然だね、今29……あ、来月で30になるわ。

 マジ、早いもんだな」


「そっか……16もあいているのか」


「えっ、なんか言った?」

 後半呟くように言ったから、よく聞こえなかった。


「ううん……社長って彼女いるの?」


「……いや、残念ながら。

 高校時代は何人か付き合った事あるけど、続かなかったし、本命は彼氏いたしね。

 どうして、そんな事聞くの?」


「ちょっと気になったから」

 そう言って、ソファーから立ち上がり、こちらに来て後ろにまわり、仕事している俺に抱きつく。


「こら、仕事の邪魔だよ。

 ふざけるのはやめなさい」


「……ふざけてなんかないよ。

 私、社長の事好きだよ……このまま彼女出来なかったら、私と結婚して?」


「……大人をからかうんじゃない。

 とりあえず離れなさい」


「私、本気なんだけど……よしっ!

 社長、これからどんどんアピールしていくから、よろしく」

 離れなて、宣言しドアから出ていった。


「……え、マジで言ってるの?

 えっ、え?」

 それから呆然として、しばらく仕事が進まなかった。




 それから3年が過ぎ、司ちゃんも17歳なり、俺も33になった。


 あいかわらず、隙をみせれば抱きつき、愛の言葉を紡ぐ。


 そして、俺もあいかわらず恋人は出来ず、事務所では根回しがまわっているように、所員全員あたたかい目で俺達を見守っていた。


 司ちゃんの仕事は順調で、年相応の学生の役ももちろん、色気のある大人の役もでき、念願だったドラマの主役も増えている。


 中学を卒業する記念に、卒業と桜に関する歌を披露。

 これが、ネット上でも1ヶ月かからず100万回以上の視聴を越え、更にダウンロードもかなりのモノになった。


 それも含め、爆発的に顔が売れた司ちゃんだが、高校にあがり一人暮らししている。

 売れた事により、司ちゃんの実家がバレ、ファンが押し寄せ、ご両親に迷惑がかかり、引っ越しも余儀なくなってしまった。

 高校も芸能活動が許可でき、芸能人が集まったクラスに入っている。

 今の暮らしているマンションも近くな為、ちょうどよかったと言えばよかったのだが、これも有名税なんだろう。


 あと困った事に、テレビ雑誌に俺に抱きつく司ちゃんが報道され、事もあろうか、どうどうと『事務所にスカウトされた12歳の時から、遠峰武春社長を愛しています』と言いきり、一時期仕事も減ったが、それほどあたりも悪くなく、逆に仕事も増えたようだ。

 ……俺の作曲依頼も少しだが増えた。


 そして、やはり今日も司ちゃんは嬉しそうに抱きしめて愛の言葉を伝えてくる。


 ……俺の独身生活も、わずかかもしれない。


いかがでしょうか?

この話とは、別の主人公の話も考えていますが、評価次第で書こうか迷っています。


もし、気になる、読みたいなど思う方は、下の星を押していただけたら嬉しい限りです。


また、この作品とは違う異世界物を書いて貯めてます。

6月1日から予約を入れているので、こちらも気になる方は、読んでいただけたら嬉しいかと。


よろしくお願いします。

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