サキュバスVSエルフ 仁義なき戦い5(全6)
サキュバスはヒロのアドバイスを受け、売り上げを伸ばしていく。
一方エルフのほうはというと
そこでエレナが割って入ってきた。
「ちょっと、ヒロ? いいの? サキュバスに肩入れしちゃって。特定の種族に荷担したら、差別だって言われちゃうよ」
「ま、大丈夫だって。俺にも俺の考えがあんのよ」
「……ヒロがそういうなら」
俺はサキュバスに耳打ちする。ひゃん、と耳責めされて感じたみたいな声は出さないでくれますかね。これだからサキュバスは信用ならん。演技か本気かわかんねえんだっての。まあどっちでもいいけども。
「えっ、そんな方法で? え~気乗りしないし」
「いいから、やってみろよ」
「てんちょーがそういうなら……うん、やってみるし!」
アンナはいつものハイテンションで席に戻っていった。
状況を見守っていたのは、エルフのプリシアも一緒だ。
サキュバスはどうするつもりかと窺っている。
そしてアンナはお客さんの隣りに座ると、さっきまでとは打って変わって、ギャルっぽいなりは潜めた。
「あ、あんちゃん?」
お客さんも戸惑い出す。そこでアンナは、品のある仕草でお酒を注ぎ始めた。それはまるで、高級料亭で修行を積んだような、洗練された手つきだった。
「さあ、ぐいっともう一杯……だし!」
「お、おお!」
お客さんの顔が、さっきまでとは違った意味で赤くなっている。
そりゃそうだろう。ギャルっぽかった子が、いきなり上品な大人の淑女へと変身したのだ。
色気の質が変わってきて、そのギャップにやられてしまっても仕方ない。
そして気づいたやつもいるだろうが、これはエルフたちのやり方だ。サキュバス族に足りなかったのは、エルフ達のいいところでもあったからな。
「ひ、卑怯でありんす! 店長、どうしてサキュバスにだけあのような秘策を授けたでありんすか! このままではエルフが負けてしまうでありんす!」
「ああ、その代わり、おまえたちにはまた別の秘策を授けてやるよ」
「えっ、わっちらにも秘策が?」
「もちろんだ。聞きたくねえのか?」
「き、聞かせていただくでありんす!」
その尖った耳に小声で話す。ひゃん、と耳責めされて感じたみたいな声はおまえも出すんかーい。まあ想定の範囲内だけどな。
なんなら息吹きかけてやろうか。
ふっ、てよ。まあセクハラになるからやんないけどさ。
「そ、そんな方法を! やれと!」
「やらなくてもいいぜ。負けていいんならな」
「くっ…! やってやるでありんす!」
顔を赤くしたプリシアは、思い切った感じで席に戻っていく。そしてお客さんの隣に座ると、お客さんの袖を掴んで、猫撫で声で言い始めた。
「わっち……ドンペリが呑みたいなぁ……でありんす」
「えっ、ど、どうしたの、プリシアちゃん!」
「わっち、ちょっと酔っ払っちゃったのかも……。熱くて、服、脱ぎたくなってきた。もっと熱くなりたいな……なんて」
「ドンペリ! ドンペリ持って来い!」
お客さんがプリシアを酔わせて脱がそうと、必死になってきた。
しかし残念。
エルフは恐ろしく酒に強いから、いくら呑ませても服は脱がんぞ。キャバ嬢舐めんな。
「ヒロ」
とエレナが話しかけてくる。
「いいの? プリシアってば、自分からお客さんに近づいちゃってるよ。あれはあの子が言うところ、おさわりなんじゃないの? どうやって納得させたのよ」
「なーに、簡単なことさ。〝恋愛特区法〟によるおさわりってのは、性的接触を意味するのよ。
つまり、キスとか、胸触らせたりとか、足触らせたりとかだな。だから、ああやって服の袖を引っ張ったりするのは、おさわりに入らないんだ」
「なるほどね。さすが、ヒロ。エルフにサキュバスの真似事をさせるとはね」
「言い方。エルフは潔癖すぎるところがあったからな。元々清濁併せのむのがこの帝都プラザって特殊な街だろ。それを少しわからせてやっただけのことだよ」
「でも……徐々に差が開いていってるね」
エレナは指を差す。もちろん二つの棒グラフにだ。
サキュバスとエルフの勝負は、過去に例がないほど白熱し、店の売り上げも歴代トップクラスとなるだろうってのは、もう疑いようがない。
だが……じわじわと差が広がっている。
どちらも売り上げを伸ばしていくがサキュバスが優勢。このまま、サキュバスが逃げ切るのか?
それとも、エルフに起死回生の言ってはあるのか、次完全決着