サキュバスVSエルフ4 仁義なき戦い3(全6)
拮抗する接待合戦。エルフも、サキュバスも健闘するが、サキュバスがヒロにアドバイスを求めに来る。
ヒロは……
「キャバクラ『エデン』、開店です」
門番のリザードマンが、大きな両開きの扉を押し開いた。
すると、外にはすでに黒山の人だかりができていた。
「おお、やっとだぞ」
「待ちわびたぜ」
いやいや時間通りの開店だろ。つってもしゃーねーか。
はっきり言って、ここエデンは、かなり売れてる人気のキャバクラだ。
人気の嬢は数週間先まで指名予約でいっぱい。
何かしらの記念日には事前にオークションにかけられて、指名料が何十倍にまで跳ね上がったりもするわけで……。
まあ、これは店の力っていうよりは嬢の実力だよ。嬢にもよるが一人あたり、一日で何百万も稼ぐんだ。
店全体ではヘタすると億いっちゃうよ億。
管理するこっちとしては、彼女らの機嫌を損ねて余所に逃げられちまうのが怖いわけだ。
まあ、みんな、この店が好きだって言ってくれてるけどな。
「店長、ドンペリ空きました!」
ボーイが報告してきた。
「こっちは最高級のバーボンです!」
さらにもう一人。
おいおい、ペース速くないか。
いやめっちゃ早いよな、これ。
原因はやっぱりアレかね。勝負が白熱してるのかね。
あんまお客さんに無理させちゃいけないよ。
ってもうベロンベロンに酔ってる人もいるじゃねえか。
おいサキュバス、それとエルフ。おまえら人間をなんだと思ってんだ。養分かっての。
店の壁には、サキュバス族の売上の棒グラフと、エルフ族の売上の棒グラフが張り出されていた。
「っていうかいつ作ったんだ、あんなん」
「気づいたら張られたわよ」
つけ回しのエレナが肩を竦めた。
やれやれってか。こっちがやれやれだわ。
店内はいつもとは明らかに異なる、異様な熱気を孕んでたってね。
「お客さん、サキュバスの栄光のためにもう一杯! 頑張ってくれたら……たーくさん、サービスしちゃうぞ? え、アフターも? うーん、どうしよっかなぁ。あと一本ドンペリ開けてくれたら、考えちゃうかもぉ?」
「お客様、あんな下品な連中のほうは見てはいけませんって。あんなにバカスカ呑んで、食べてと……醜悪の極みでございましょう? あれにつられてこちらまで品を失ってはいきゃんせん。わっちらはもっとゆっくり、上品に、優雅にお酒を楽しみましょう? さあ、こちらが、最高級のバーボンでございますきに」
どっちもえげつねえことやってんなあ……。
バカ高いフルーツの盛り合わせとか、本格キャビアとかも、ばんばん頼まれてんじゃねえか。
まあ、こっちの物価は日本の五分の一だから、あれだけ呑んで食っても財布に優しいんだけどよ……。
ってそれでもこんなにペースが速かったら、お店は戦場みたいな有様だ。店長の俺まで皿洗いを手伝わなきゃいけない。
やれやれだ。洗剤で手の肌が荒れちまうわな、って乙女みたいなこと思っちまったじゃねえかよ。
さて棒グラフを確認してみるか。
うーん……。
互角だな。
いい勝負だ。
サキュバス族も、エルフ族も、普段の数倍の売上を記録している。
もうこれ両方とも勝ちにしてやりたいよな、店長としてはよ。
誇らしいよ、はっきり言ってよ。
だけど、二人は納得していないようだ。
まずアンナが駆け寄ってきた。
「てんちょー! このままじゃ勝てないし! あーし、エルフをコテンパンにしてやりたいのに、このままじゃギリショーにしかなんないし!」
ギリショーってなんだ。ああギリギリ勝利か。
どっちにしろ勝つとしか思ってないんかよ。
勝利を確信とか、すげー自信だな。
ナンバーワンゆえの恐怖とかもあるだろうによ。
内心では、思ったより焦ってんのかもしれねえけどね。
「なんか秘訣教えて! あるんでしょ店長なら! 勝利できる秘訣が!」
ずいぶん都合のいいこと聞かれてんな。
まあいいか。
「あるぜ。勝てる方法」
「ほんと?」
ヒロのアドバイスを受けたサキュバス。勝負はさらに加速していく