サキュバスVSエルフ 仁義なき戦い3(全4)
サキュバスとエルフの売り上げ対決が決まった。
翌日からグループに分かれて作戦をたてる。
対決は開店前からヒートアップしていく…
勝負に負けたほうは、帝都プラザの超一流の料理を相手にご馳走することに決まった。
控え室では、さっそくサキュバス族のリーダー・アンナによる檄が飛んだ。
「いいっ? この勝負はただの勝負じゃないよ! サキュバス族とエルフ族によるどっちがより男心をくすぐるかっていう勝負なの!」
なんだその勝負。
「これでサキュバスがエルフ風情に負けたら恥よ! あんなド貧乳が何人もいるような種族に、あーしたちが負けるはずがない! 巨乳こそサキュバス! サキュバスこそ巨乳! 男心をくすぐるのがあーしたちの存在理由! 存在価値! アイデンティティなの!」
三回とも同じ意味の言葉じゃねえか。あとサキュバスにも貧乳属性の子いるじゃねえか。その子半泣きだぞ。いいのかオイ。
「絶対負けられない戦いが、ここにある! さん、はい!」
『絶対に負けられない戦いが、ここにある!』
他のサキュバスたちも唱和した。
なんだこれ。昭和かよ。どこぞのブラック企業かっての。
一方でエルフはというと……。
リーダーのプリシアが口を開いた。
「ようござんすか、皆さん。この勝負はただの勝負ではありんせん。エルフ族とサキュバス族によるどっちが高貴で品が良く殿方と相応しい関係を築けるかを問う勝負なのでありんす」
とだいたい同じことを言っていた……。
「これでわっちらエルフが負けたら末代までの恥でありんす。エルフとはあらゆる種族のなかで最も高貴かつ品があり知的で美しい種族。殿方に惚れられないはずがないでございましょう」
なんかエルフの方向性が違くねえか……?
「それがあんな下品なサキュバスどもに負けてもいいのですか? ダメでありんす。ダメに決まっているでありんす。たとえ貧乳でもでありんす。わっちの胸を見てごらんなまし。
これですよ、これ。
これでも売上トップクラスに躍り出るくらいはわけないのでありんす。
そう、女とは胸の大きさにあらず。胸の大きさにあらずでありんす。
くり返します。胸の大きさなどどうでもいいのでありんす。
肩こるとか巨乳死ね」
しくしく、ってなんか違う意味でエルフ族からも泣き声が上がってるんだが。だってエルフにも巨乳いるじゃん。それをリーダーから全否定されたら泣くわ。
あと貧乳ってマジで需要あるから。
卑屈になる必要ねえから。
「それでは皆さん、ご唱和くださいますよう、お願い申し上げますさかい。せーの、巨乳死ね!」
『巨乳死ね!』
殺さないでくださいよ。うちの大切な稼ぎ頭たちを。
「サキュバス朽ちろ!」
『サキュバス朽ちろ!』
どこが高貴な種族だよ、こんな唱和やっててよ……。AA
はあ、と俺は息をついた。
そして手を叩いてみんなの注意を引いた。
「ほらほら、そろそろ開店だぞ。準備しなさい、準備を」
控え室では、サキュバス族とエルフ族が距離を取っている。空気もギスギスしてんじゃねえかよ。
あーあ。
ま、しゃーねーよな。
そりゃ、こういう流れになっちまうわな。
まあ、うちの嬢たちはその二種族だけってわけでもないんだが。
他にもヘルプ要因として、変幻自在なスライムの子がいるし、リザードマンとかケンタウロスの子もいるわけよ。
まあ日本人観光客からは色物扱いされちまうけどな。
そういう子たちは今回の勝負は静観するに限るわな。
問題なのは、やっぱり、あの子だな……。
部屋の隅に一人で座っている、ハーフエルフのクリスだ。
手鏡で前髪を整えている姿は、まあぶっちゃけ、俺から見ても可愛らしい。
お客さんからもかなり指名受けてるしな。
あの控えめな感じが、男にとっちゃグッとくる。
薄幸そうな雰囲気も、つい構ってあげたくなるし。
若い男からおっさんまで、幅広い世代に人気がある。
うちのホープってところかな。
だけどなかなかお店に溶け込めないんだよな。
やっぱハーフだってことで、どっちつかずの中途半端な子って見られちまってるのかね。
まあ俺たち日本人だって、黒人ハーフや白人ハーフの子を変わって目で見ちまうところがあるからね。こっちの異世界人だってそう思ってもなんら不思議じゃないんだがね。それでもちょっと、やっぱり、これでいいのかなって思うよな。
腕時計を見ると、おっと、もうこんな時間だ。
「店長、玄関開けますね」
用心棒で門番でもあるリザードマンが、そう聞いてきた。
「ああ、頼む」
さて、今日もいよいよ開店だ。どうなることやら。
いよいよ開店。エルフとサキュバス勝利を手にするのはどちらか??