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異世界キャバクラ   作者: ゴーストライターK
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サキュバスVSエルフ 仁義なき戦い1

キャバクラでの人間関係が難しいのは人間も亜人も一緒。

そんななか、とうとうエルフとサキュバスのトラブルが勃発するが・・・

うちにはカーテンによる仕切りはねえんだよね。あれはおさわり有りのお店のためのものだから。つまりうちはおさわりは禁止なわけ。

なんでって?

嬢に触りたければそういうお店に行けばいいだけだからだよ。

 おさわり有りのキャバクラは「セクキャバ」って呼ばれることが多いね。セクシーキャバクラ。

嬢もお客さんの膝の上に乗って接待したりとかもするよ。

キスしたりおっぱい触らせたりね。

本番はなしね。本番はデリケートな問題だから。

また別枠になる。

 まあそれはいいとして、おさわり有りか無しかの話ね。

そこんとこ帝都プラザではしっかり区別されている。そう、いわゆる〝恋愛特区法〟ってやつでね。

どこまでが〝恋愛〟でどこからが〝恋愛〟じゃないかっていう線引きもそこに示されてんだけどさ、一応ね。

まあ正直観念的で曖昧でわかりづれえんだけども、ともかくおさわり有りの店なのか無しの店なのかは、ハッキリさせとかなきゃいけないんだ。

お上がそう言ってんの。

騎士隊もときどき見回りに来んの。

悪いときは覆面っていうかさ、一般人のふりして来やがる、あいつら。

まあ、騎士ってのは服装だけ変えてもバレバレなんだけども。雰囲気とか、体格とか、髭でわかっちゃうわけよ。

そりゃもう立派な髭よ。

カイゼル髭みたいなバカ丸出しのやつもいるけどね。

 うちの嬢もそこらへん弁えてて、あ、騎士の人だって気づいたらそれ相応の対処をするし、こっちの管理者側にすぐ一報入れてくれるんだけど。

騎士のほうもバレバレなの自覚してたりしてて、もう普通にキャバクラ楽しんだりするね。

言っとくけどその支払い税金ね。

名目上は風紀の監視だから。必要経費っていうわけよ。

バカバカしいよな。


 それはまあ脇に置いとくとしてよ、問題は〝恋愛特区法〟に基づくおさわり有りか無しかの問題ね。

普通のキャバクラか、セクキャバか、どっちのお店を出してもいいんだけど、これはくり返すけど明確にしとかなきゃいけないわけ。

で、うちは無しの店ってことにした。

理由? 

そりゃこの「エデン」の前身だったキャバクラ「エンゼル」がそうだったっていうのもある。

そこが俺の原点だから。

やっぱ初心は大事にしとかないとな。

 まあ何があったのか潰れちまって、俺がそのあと引き継ぐっていう訳わかんねえ状況になっちまってるけど、その理由に関しては誰も知らないし教えてくれねえけども、まあ営業形態を同じにしたところでこっちまで潰れちまうってこともないと思う。


 だけどそれとこれとは話が別でよ、店がおさわり無しってことでお上に届けてんのによ、実際にはお店ではおさわりがあると問題があるわけよ。

前身だった「エンゼル」がそこらへんが理由で潰れたような感じではなかったけどよ、こっちの「エデン」が看板と内実に相違があって、それが騎士隊に見つかっちまったら大事なのよ。

やべーのよ。

店つぶしたくねえのもあるし、俺も業務上の過失で逮捕されて裁判にかけられちゃうんだぜ。

 俺って国籍日本だからこっちの帝都プラザは外国扱いで、どっちの国の法で裁かれるかって言ったら現地法になんのね。

つまりこの中世から近世レベルの法で捌かれんの。

魔女裁判だってあり得るぜ。つまり事実無根で証拠もねえのに一方的に火あぶりってやつよ。

日本人が帝都プラザで生活するってかなりリスキーなわけ。

わかる? じつは毎日が命がけなんだ。 やれやれだよな。やんなっちゃうよ。

っていうわけでな。


日本の普通のキャバの店長なんて、事務処理やってるかそこらへんほっつき歩いてるかってことが多いんだけど。俺は命かかってるからね。店内パトロールは日課でないといけないわけだ。

おさわり無しがきちんと守られているか。もし嬢に触ろうとしたやつがいたら出禁にしなきゃいけない。

 っていうわけで今日も店内をパトロール。


「エレナ、どうだ。普段どおりか」


一見ボーイのようなパンツスーツ姿のサキュバスに声をかける。

今朝、俺の家に来て叩き起こしていった乱暴なやつだ。ドレスを着ればまだまだ嬢として活躍できる美貌を備えているが、彼女は一足早く引退してる。

「今のところ問題なしね。私のマッチングもうまくいってるみたい」

嬢と客のあいだには相性ってもんが必ずある。

自分が喋りたい男には、聞き上手な嬢を。

そして他人の話を聞きたい男には、お喋りな嬢を。

ってな具合だな。

そこらへんを見きわめて采配するのが、いわゆる〝つけ回し〟と呼ばれる奴らだ。

難しい仕事だよ。

もちろん性格の善し悪しなんてのは千差万別だから、組み合わせなんてものは無限に考えられる。

そしてそれが店の売り上げに直結するんだ。管理側として責任重大なんだけどよ。

まあ、そこらへんは経験豊富な嬢だったエレナに任せるに限る。

なんてったって元ナンバーワンだかんね。

「ん? あのテーブル、少し騒がしくなってきたわね」

 エレナの目がすっと細くなった。

 俺には違いなんてわからなかったが、どうやら一悶着起きたようだ。

「行ってみよう」

 そのテーブルには、店の上客である男たちが座っていた。どちらもある会社の重役らしく、湯水のごとく大金を払ってくれる。一ヶ月の売上のうち、なんと十パーセントが彼らによるものだ。

「店長のヒロです。いつもありがとうございます。いかがなさいましたか」

 俺は胸に手を当て、丁寧に挨拶をする。何か粗相があってはたまらない。

 しかし、問題は思わぬ方向のようだった。

 専務(あだ名)は苦笑しながら肩を竦める。

「俺たちは別にどっちでもいいんだがね」

 専務の部下らしい課長(あだ名)も笑っている。

「俺はどっちともがいいんじゃないかってね」

 どっち?

 なんのこっちゃと思ったが、問題はこのテーブル席についた、二人の嬢にあるようだった。

「アンナはん、いい加減にしなさんし。うちのお店はおさわり禁止ですよって」

 郭言葉で言うのは、もちろん日本人の花魁なんかじゃねえ。パツキンのチャンねえであるエルフだ。名前はプリシアっていうんだけど、まあ、売上トップクラスを常に維持し続けるハイレベルなキャバ嬢だよ。

 で、そのプリシアがお冠なのが、もう一人の嬢、サキュバス族のアンナだ。

「なーにお堅いこと言ってんのよ。ちょっとくらいいいじゃないのさ。あーしだって別に嫌だとは思ってないしねー」

 アンナはピンク色の美しい髪と、妖艶なモデル体型が凄まじい破壊力を持つ一級品のキャバ嬢だ。性格も明け透けで裏表がなく、他の嬢たちからの信頼も篤いが……。

 エルフのプリシアからしたら、見過ごせないらしい。

「店内の風紀が乱れるんは、あなたたちサキュバス族がそんなだからでござんしょ。わっちらエルフは迷惑してますし、他の種族だって迷惑しとります。もし融通の利かない騎士隊の殿方に見つかりでもしたら、どう責任を取るおつもりですの。最悪、お店がつぶされてしまうかもしれへんのですよって」

「考えすぎだって。プリーさ、売上であーしに勝てないからって、こっちの足引っ張ろうとすんのやめてくれる?」

 そう、たしかにエルフのプリシアも売上トップクラスだが、真のトップではない。常にナンバーワンを維持し続けるのは、このサキュバスのアンナだった。

 余裕で地雷を踏み抜いたらしく、プリシアはお冠だ。

「なんですって!? 本来わっちらに売上の差はないはずでありんす。あなたがお店のルールを無視して、自分からお客様に触ろうとしなければ、ですがね!」

「何が触るよ。こんなもん、ただのスキンシップでしょうが。キスしたわけでもないし。でもでも、お客さんなら、あーし、ちょっと本気になっちゃうかもねー?」

 そう言ってアンナは、若い課長に接近していく。首ったけに腕を回し、ゆっくり唇を近づけていくのだ。

「だから! そういうのがアウトだと言うとります!」

「かったいわねープリー」

 アンナはやれやれとウンザリした様子だ。

プリシアのほうはマンガみたいにプンスカしている。

「おさわり無しと言ったら、なしでありんす。キャバクラというのは、体で客を取る仕事とは一線を画します。そこの線引きを曖昧にしたらいきゃんせん。アンナはんも、キャバ嬢としてプライドがあるなら、色気以外の部分で勝負してみなさんし!」

「うわーうざー」

「うざいとはなんでありんすか!」

キャバ嬢のプライドとか面白え話だし、また別の機会にじっくり聴きたいんだけど……。

おまえら、お客様の前で何白熱してんだよ……。

 俺は隣のエレナに話しかける。

「なあエレナ、マッチングはおまえの仕事だろ。この二人を同じテーブルにつけたら、そりゃケンカするだろ」

 元から、光の一族のエルフと、闇の眷属のサキュバスだからな。

仲いいなんてことはあり得んことだ。

それがさらに、プライドをかけたトップ争いをしてる二人だっていうんだからな。そりゃケンカするわ。

 エレナはうーんと頭に手をやった。

「うーん、これは私の采配が失敗だったかな。この二人ならそろそろ、次の段階に進めるって思ったんだけど」

「次の段階?」

「そ。まあ、それは今からでも遅くない、か」

 そう独り言ののように言って、エレナは、問題の二人に話しかけた。

「ね、二人とも。勝負してみない?」

『勝負?』

 エルフのプリシア、サキュバスのアンナ、二人の声が重なった。

「そう、プリシアはサキュバスのやり方が気に入らないんでしょ。アンナは自分のやり方で文句をつけてくるプリシアがうざったい。なら、ここはどっちが優先されるべきか、白黒つけてみようよ」

『……』

 二人はお互いに目を合わせて、

「やってやろうじゃん!」「望むところでありんす!」

 と受けて立った。


エルフとサキュバスの仁義なき戦いが始まる。


今月は、過去最高のお客様のご来店になりました。




スタッフ一同深くお礼申し上げます。




評価を頂けると嬢の評価にも反映されます。よろしくお願いいたします。



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