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異世界キャバクラ   作者: ゴーストライターK
16/24

ライバル店出現?

色恋管理のプロとしてイケメンインキュバスを紹介されるヒロ。面接もかねて話してみるのだが・…

ヒューリーは席を立って、一旦裏方に消えていった。

 それからややあって戻ってくる。今度は一人のイケメンを連れて来た。冴え渡る青髪に、執事が着るようなタキシード姿だ。めっちゃサマになってる。男からしてもカッケエってなるやつだ。

 彼は爽やかに微笑むと、胸に手を当てて丁寧に頭を下げた。

「お初にお目にかかります。インキュバスのジョシュアと申します」

「インキュバスか。なるほどな」

 俺は感心して頷いた。

「元ホストってところかな」

「ご明察」

 ヒューリーが紹介する。

「ジョシュアはあの優良ホストクラブ『グランド・イリュージョン』でナンバーワンだった、一流のホストだよ」

 ほう、と俺がさらに感心すると、ジョシュアは優雅に肩を竦めてみせた。

「まあ、それも元ですけどね」

「なんで店をやめたか、聞いていいか」

 過去は探らないのが礼儀だが、これはどうしても気になることだ。

それにジョシュアの雰囲気が、むしろ聞いてくれと言っているような気がした。彼からしても何か考えがあるのかもしれないな。

 そしてジョシュアは頷き、改まって話し始めたんだ。

「僕も僕で、やがては自分の店を持ちたいと思っているんです。ホストとしての経験や資金は集まりましたので、もう充分かと。あと足りないのは、マネジメント側の経験ということです」

「おいおい、こっちも求めてるのはマネジメント側のやつだぜ」

 それもジョシュアは充分な業界人じゃねえの。

れっきとしたマネジメントの経験こそないみたいだが、元ホストということは、客の女にキャバ嬢もたくさんいただろうしな。

彼に嬢の管理を任せるのは、ホストに自分の客の管理をさせるようなもんじゃねえのけ。

「こいつは渡りに船じゃねえかよ。都合よすぎて、気味悪いくらいだぜ」

 天の采配っていうか、運命じみたものを感じるね。

 けれどヒューリーは呆れて、

「バカね。この街ではこういうことが有り余ってるのよ。常にチャンスが転がっているから、それをどう引き合わせるかっていうことも重要な要素になる。うちのママは、とっても顔が広いんだから」

「需要と供給のマッチングね。さすがママだ」

「僕、ここで待機してて、まだ三日ですからね」

 とインキュバスのジョシュアが言った。

「本当にこんなに早く引き合わせてくれるとは、驚きましたよ。しかも、相手があの『エデン』の店長とはね」

「おっ、うちの店を知ってるのか。少しは有名になったみたいだな。嬉しいかぎりだぜ」

「ご謙遜を。競争が激しいこの帝都プラザで、『エデン』は急速に売上を伸ばす超優良店ではないですか。僕なんかでお力になれるものか、はなはだ心許ないですよ」

「おいおい、嬉しいことばかり言ってくれるねえ」

 俺はすぐさま上機嫌になったが、

「バーカ。ホストの口車に乗せられちゃってさ」

「はっ!?」

 しまった。いつの間に。

「僕、男も行ける口なので」

 ジョシュアがペロリと唇を舐め、妖しい微笑みを浮かべた。

俺はすっかりブルッちまったね。

こいつは本物の、根っからのインキュバスだ。

敵になると怖いもんだが、味方になってくれるというなら頼りがいがある。

「ジョシュア、って言ったよな。ここのスナックの紹介なら、身元も保証されたも同然だろう。なあ、どうだ? うちで、嬢の管理をやってもらえるか」

「はい、もちろんです。こちらこそ、ぜひお願いします」

 ただ、とジョシュアは人差し指を上げた。

「僕はインキュバスです。兄妹種に当たるサキュバス族には誘惑は一切通じませんので、そこのところご承知ください」

「ああ、わかってる。サキュバス族の面倒は俺が引き続き見るよ。おまえは他の種族を見ててくれ。それだけでも充分助かる」

「かしこまりました」

 慇懃に礼を取るジョシュア。

「とくに重点的に見るべき種族はありますか」

「とくに、エルフ族だな。あいつらとサキュバス族は仲が悪いから、うまいことエルフ族の矛先を逸らしてくれると助かる」

「なるほど。それは普遍的な問題と、その解決方法となりそうですね。いつか自分の店を持ったときにも、そのテクニックは使えそうだ」

「じゃあ、時間があるときに、うちの店に来てくれ。みんなに紹介しよう」

 そして俺はジョシュアと乾杯し、改めて親交を深め合ったんだ。

 やれやれ。いい男ってのは男から見ても惚れちまう。



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