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56. 仲間

ご指摘いただいて誤字(後書き部分)を修正しました。

ありがとうございます。

 部屋に荷物を武器と防具を置き、ナハトの様子を見てから、ノイたちはヨーセフの家へと向かった。途中、ちらほらと村人や冒険者にも会い、ハンネスやエルメルと挨拶をしていた。たまにノイやシオンのことを知っているであろう人もおり、妖獣(ようじゅう)や二人について聞こうとしていたが、ハンネスの気迫に押されてて、大したことを聞くまえに、村を楽しんで、とそそくさと去っていった。


 お蔭で特に何事もなくヨーセフの家につき、ハンネスがドアを開ける。奥からパタパタと足音が聞こえてきた。

「あら、よかった、丁度こっちも準備ができたのよ。ちょっとまってね、ヨーセフ! ヨーセフ!」

 小走りで出てきたマルガレータは、階段に向かって声を張り上げる。その声を聞きつけたのか、奥からミラがかけてきた。

「いらっしゃーい! 待ってたのよ。ヨーセフ、クリスタの所に行ってるの。でもユスティーナとリータもいるから、聞こえないのかもね。リータが大はしゃぎだったから! 私、ちょっと行って呼んでくる。父さんとエルメルは、あっちで母さんを手伝ってて! あ、お酒持ってきてくれた? とっておきのノイチゴ酒!」


「おう、もちろん」

 ハンネスが持っていた箱を掲げる。楽そうに持っているが、赤い液体が入った大きな瓶が八本も入っている。

「こっちも持ってきたよ。今年はノイチゴが豊作だったからな。リータが大好きなんだ」

 エルメルも持っていた箱の中身を見せる。こちらにも赤い液体が入った瓶が、三本入っていた。

「すてき! じゃあ、父さん、エルメル、よろしく!」

「おう、じゃあノイ、シオン、アルベルト、先に行ってるな」

 そういうと、ハンネスとエルメルはマルガレータと奥へと行ってしまった。ミラは大きな声でヨーセフを呼びながら、階段を駆け上がっていく。


 少しして、階段から人が降りてきた。ヨーセフを先頭に、その後ろにはミラがリータを抱いている。そして、その後ろにはユスティーナと、ユスティーナに支えられた女性がゆっくりと歩いてきていた。


「ノイ! シオン!」

 リータが嬉しそうに手を伸ばす。ミラが軽くしかりながら階段を下り、リータを下におろすとリータはノイに向かって走ってきて抱き着いた。ミラはあっちにいってるね、といってそのまま奥へと走っていった。

「クリスタ元気になったの! ありがとう!」

 ノイに抱き着き、嬉しそうにいうリータをノイが撫でる。はしゃぐリータをヨーセフがそっと抱き上げた。


 ノイがユスティーナを見ると、少し目を赤くしたユスティーナがほほ笑みながら立っていた。

「あなたたちが、ノイとシオン?」

 そういうと、ユスティーナの隣にいた女性がゆっくりと歩いてきた。女性は少し小柄で、簡易なワンピースのようなものを着ている。少し短めのスカートから出ている足がとても綺麗だった。


「おう、オレがシオンで、こっちがノイ。お前は?」

 例によって物怖じしないシオンが答えると、女性はにっこりとしながら近づいてくる。

「あたしはクリスタです。ユスティーナに聞いたんです。あたしを治してくれたって。本当になんてお礼を言っていいか、それに」


 クリスタはシャキシャキとしゃべりながら、ノイにどんどん近づいてきた。ノイはその分後ろに下がるが、とうとうドアに背中がついてしまった。クリスタはそれでも止まる気配もなく近づいてくる。

「ちょ、ちょっと待って!」

 ついにノイがそう叫ぶと、クリスタはぴたりと止まった。そして、目を細めてじいっとノイを見つめる。

「どうしました?」

「どうしたもなにも……」


 後ろから、ユスティーナの笑い声が聞こえた。

「クリスタ、ノイに近づき過ぎよ。あと五歩さがりなさい」

「うそっ、ごめんなさいっ」

「いっ」

 クリスタは慌てたようにそういうと、勢いよく頭を下げたが、頭がちょうどノイの顎にぶつかってしまった。勢いよくぶつけられたノイはじんじんとする顎を押さえる。クリスタも相当痛かったようで、そのまま膝から崩れ落ちていた。シオンは困ったようにノイとクリスタを交互に見ており、ユスティーナとアルベルトは手で顔を覆った。


「いったー……もう謝ってるでしょ! 殴らなくてもいいじゃないですか!」

「ええっいや違、君が」

「ううー、身長縮んじゃったらどうしてくれるんですかー」

「君が頭を下げて勝手にぶつかったんだ、クリスタ」

 アルベルトがため息をつきながら床にうずくまるクリスタの肩を支えようとする。

「うそっ」

 クリスタはそういうと、アルベルトの手をすり抜け勢いよく立ち上がる。その過程でノイとアルベルトに頭がぶつかりそうだったが、二人ともすんでのところで避けることができた。シオンはよくわからないままクリスタに向かって少し身構えている。


「ごめんなさい、あたし眼鏡がないとほとんど見えなくて……」

 しゅんとしょげるクリスタの肩をユスティーナがそっともち、丁度いいくらいの距離に連れて行ってくれた。

「眼鏡は焼失してしまったんです。眼鏡を扱っている商店のティモは今避難していて、すぐには手に入らなくて。ね、ほら、これじゃあ旅どころではないわ。治ったばっかりでもあるんだから、しばらくはヨーセフの所にお世話になっていなさい」

「でもー」

「でもじゃないの。三、四日で戻るわ。妖獣が倒された知らせはもう隣町にも届いてるだろうし、ティモもじきに戻ってくるから、ね」

「アルベルトー……」

「明日一緒に行くという話なら、反対だ」

「二人とも意地悪です」

「はいはい、それよりあなた、二人への自己紹介が途中なんじゃないの」

「うそっ、ああごめんなさい」


 クリスタは改めて、()()()()()()から頭を下げた。

「あたしはクリスタ。治してくれて、ホントにホントにありがとう、すっごい感謝してます。それと、これから一緒に旅をすることになるって聞きました。どうぞ、よろしくお願いします。ホントは、明日の朝も一緒に行きたいんだけど……」

「だめです」

 クリスタがちらりとユスティーナを見るが、ユスティーナはほほ笑んだまま間髪入れずにそう答えた。クリスタはぷくりと頬を膨らませる。そんなクリスタを見て、ヨーセフが穏やかに声をかけた。


「まあまあ、その分、リータと遊んでやってくれ」

「リータ、クリスタとあそぶ!」

 いつの間にかヨーセフから下りていたリタが、ぎゅっとクリスタに抱き着いた。

「リータ、クリスタとずっとあそびたかったのよ。たくさんたくさんあそんで、クリスタ」

「リータっ……!」

 クリスタはリータの手を取り膝をつくと、ぎゅっとリータを抱きしめた。

「あー、もう、ホンッとにかわいいですー! わかりました! たっくさん、遊びましょうね!」

 すっかり機嫌が直った様子のクリスタを見て、アルベルトがため息をつき、ユスティーナが安心したように笑う。


「よし、じゃあ行こうか。皆、待っているようだ」

 ヨーセフはそう言うと、奥へと続く廊下に歩いて行った。こちらが診療所で、廊下の先がヨーセフたちの居住スペースになっているのだろう。クリスタはリータと手を繋ぎ、リータに先導される形でヨーセフについて行った。ユスティーナとアルベルトとシオンもその後に従い、ノイも一番後ろをついて行った。なんだか圧倒されて全然話ができなかったことが少し気がかりだったが、どうやら班員になることを歓迎してくれているようだ。ノイは少しほっとして、ゆっくりとみんなの後をついて行った。


 その日の夕食は、とても素晴らしかった。途中、何度か来客があり、その度にマルガレータは村人からの差し入れだといって、料理やデザートや果物を運んできた。村人は少しだけ顔を出し、ノイとシオンに声をかけ礼を言い、ゆっくりするようにとすぐに帰っていった。さっぱりとした人たちで、皆気を使ってくれたらしい。マルガレータ達が準備してくれた料理を合わせ、テーブルから溢れそうだ。知らない料理も多かったが、どれもおいしく、豪華というよりはどこか素朴で、それでいて手の込んだ料理には、歓迎の気持ちが現れているようだ。


 ミラの母親、カサンドラはキビキビとした女性で、見た目がミラとよく似ていた。とてもしっかりとしていて、食事中にはミラやリータに優しくお行儀を注意することも多かった。食べ方の分からないノイやシオンにも、丁寧に教えてくれて、ぎこちないながらも楽しく食事を堪能することが出来た。彼らは、ノイやシオンに村のことや周辺のこと、大陸のことを色々と教えてくれた。村は移住者が多く、ハンネスやカサンドラ、エルメルは時期は違えど全員移住してきたらしい。


「俺は若けえ頃、冒険者をしていたんだ。だが、各地で見る防具や武器に興味を持ってな。結局アリストクラティで鍛冶屋に弟子入りしたんだ。そのあと、凄腕の奴らが集まるこの村で店を持ったのさ」

 ハンネスの話に、エルメルが大きく頷きながら口を開いた。

「この村には、元々修理する店しかなかったんだよ。世界から集まる腕利きの冒険者は、すでに武器や防具は揃えて来ていたからね。そんな中、ハンネスの店はとても評判になったんだ。カサンドラも、ハンネスの店の評判を聞いてこの村に来たんだったよな?」


 エルメルがカサンドラに話を振ると、リータの口元を拭いていたカサンドラが上品に答えた。

「ええ、私も冒険者だったの。今もそうだけど、防具は重いものが多いでしょう。私の戦闘スタイルに重い防具は合わなくて、苦労していたの。そんな時に、ハンネスの評判を聞いてこの村に来てみたのよ。ハンネスは世界中の防具や武器を知っていて、どんな注文にも答えられるって言われていたから」

「でも、そのまま父さんを好きになって住み着いちゃったのよねー、いたっ」

 横から口をはさんだミラのおでこをカサンドラは軽く叩く。ほんの少し、頬が赤くなっていた。


「私は商人の見習いとして、この村に来たんだよ。その時はまだ成人したばかりで、将来何になりたいのかもあまり決めていなかった。私は兄が多くてね、成人したら家を出ないといけなかったから、なんとなく大きな町に行って、なんとなく商人に弟子入りしたんだ。でも、この村に来て、ハンネスの武器や防具を見て、本当に驚いたんだ。なんて繊細で大胆な仕事をするんだろうって。それで、迷わずハンネスに弟子入りしたよ」

「そんなこと言って、シーラに一目ぼれしたからじゃねえのか?」

 ハンネスがニヤニヤと笑いながらエルメルに向かって殴る真似をする。


「なっ、確かにシーラは当時から可愛かったが、当時はまだ10歳だった! 私は本当にハンネスの武器や防具に惚れ込んで……」

「はは、悪りぃ悪りぃ、褒められ過ぎてちいっとむず痒かったもんでな」

 エルメルが真っ赤になって立ち上がると、ハンネスは豪快に笑って、手を振った。


「シーラ?」

「私の奥さんで、リータの母親だ。この村で宿屋兼食事処を営んでいた、老夫婦の孫娘だったんだ。リータを産んですぐ、老夫婦も、そしてシーラも亡くなってしまったけどね」

 シオンが聞くと、エルメルが静かに優しく答える。少し下を向いてしまったノイに向かって、エルメルがにっこりする。

「気にしないでくれ。シーラは賑やかなのが好きだったんだ。こういう場で紹介になければ、夢で怒られてしまうくらいにね」


 その後も、色々と話をした。ヨーセフも移住者らしく、ずっとこの村に住んでいるマルガレータとのなれそめも聞かせてくれた。難しい病気に罹っていたマルガレータを当時薬の商人をしていたヨーセフが治療したらしい。もっとも、この話は始終ミラが語っており、二人はただにこにこと聞いていただけだったが。そして、誰一人ノイやシオンのことを無理に聞こうとする者はいなかった。少し身構えていたノイは、こっそりと安堵していた。


 料理もあらかたなくなり、お酒が中心になってきたころ、カサンドラはノイチゴ酒を数杯飲んだあたりから、途端にミラとそっくりになった。そのかわり様にノイは驚いたが皆は慣れているようで、そろそろ帰り時だなと言って、ハンネスが両肩にまだ話し足りないミラとカサンドラを抱えて帰った。エルメルも、お腹いっぱいになってクリスタと部屋の隅でうつらうつらしていたリータを抱いて一緒に帰っていく。


 現世で初めてノイチゴ酒を飲んだノイは、一口目から前世と同じ感覚を覚えてそれ以降はジュースに切り替えた。ドラゴンになっても、お酒が弱いのは変わっていないらしい。その分、シオンはとても強いらしく、ノイの残した分までおいしそうに飲んでいた。ただ、さすがに飲み過ぎたのか少しうつらうつらとしている。ノイはユスティーナとアルベルトと明日の打ち合わせを済ませると、眠そうなシオンに肩を貸しながらヨーセフの家をアルベルトと共に出た。クリスタはもうしばらく入院で、ユスティーナもそれに付き添うらしい。


 アルベルトが泊っている宿の前で別れ、軽く寝息を立てているシオンを引きずりながらゆっくりと村を歩く。月明かりがとてもきれいで、始流の塔が昼とは違う輝きを見せていた。あんまり遅くなるなよ、と言いながらハンネスに渡された鍵を握り締めながら、明日からの旅に期待を寄せ、ノイは鼻歌を歌いながら部屋へと向かうのだった。

旅の仲間が揃いました。

ノイ、シオン、ユスティーナ、アルベルト、クリスタの五人でしばらく旅をしていきます。ただとりあえず、クリスタはもう少し留守番です。


少し更新が遅くなりそうです。すみません。

来月には再開する予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 後書き部分は誤字報告ができないみたいなので。 >ノイ、シオン、ユスティーナ、『アルバイト』、クリスタの五人でしばらく旅をしていきます。 アルベルトさん・・ですよね?。
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