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15. 悲鳴

「ああアーミィ。夜分にすまん」

「村長殿が謝ることではないじゃろう。して、様子はどうです?」

 ヨシスケとアーミィは無事にドアの前で村長と合流した。アーミィは息一つ乱れていない。

「まずは一旦中へ」

 村長はそう言って家の中へと二人を招き入れた。


「ヨシスケよかった、大丈夫だったみたいだな」

 ベイリットが片手を上げて小声で囁く。家の中ではベイリットとメーズルが向かい合って座っていた。二人が少しからだの向きを変えるのに合わせて、村長とアーミィとヨシスケは、車座になるように座った。


「ベイリットから話を聞いた。ちょっと厄介かもしれないな」

 メーズルが小さく低い声で話し出す。

「ワシもヨシスケから大筋は聞いておる。メーズル、早速作戦を聞かせてくれ」

「それは話が早い。とにかく、既に村に入り込んでいるのだから、あまりもたもたしてはいられねぇ。ベイリット、ヨシスケ、それぞれ手分けして動ける人を起こしてくれ。男でも女でもいいが、できれば氷の防御魔法が得意な人を。家に残るものがいれば、錠を必ずかけるように。分担は任せる。人影に鉢合わせないように注意しろ。人手は欲しいが全員を起こす必要はないから、無理はするな」

「「はい」」

「起こした人達を井戸に集めてくれ。あそこは周囲に家もないし、少し低くなっているから気付かれにくいだろう。伝達は最小限で。詳しくは井戸で説明すると」

「「はい」」


「アーミィさんは井戸で待機して、集まった人たちに説明をお願いします。ただし、奇襲に気を付けてください。確認されている人影は2つだが、それ以上いないとは限らない」

「よし」

「俺と村長は、人影を探し、様子を伺う。しばらくしたら、俺が井戸までいこう。村長は引き続き人影の監視を。井戸の人たちと合流したら、皆で村長の元に向かう。そこで一気に挟み撃ちにしましょう。上手くいけば、村の外へ追い出せるはずです」

「俺とヨシスケは」

「挟み撃ちの気配がしたら、起こすのを中断して加勢に来てくれ。一応、相手に仲間がいることも想定して注意深くな」

「わかりました」

 ヨシスケもうなずいた。


「もし、誰かを襲うようなことがあれば、合流前でもすぐに俺と村長が交戦します。気配がしたら、アーミィさんは井戸にいる人を連れてすぐに加勢をお願いします。ベイリットとヨシスケは、ある程度人が集まるまで、村人に声をかけ続けてくれ。ただし、その時は井戸ではなく即加勢に来てくれるよう伝えてくれ。……これでいかがでしょう、村長」

 全員が村長の顔を見る。村長はゆっくりとうなずいた。


「よし、いいじゃろう。……して、スキルダとブリーズルはどうした?」

 スキルダはリーズの母親の名前だ。

「さっき、スキルダがブリーズルを起こしに行きました。今は多分、家の窓に板を置いて回っているのではないかと。あと、怪我人が出るかもしれないので、薬の準備も頼みました。……ちょっと時間がかかっているようですな」

「ふむ、あまりのんびりはしておれん。メーズル、アーミィ、ワシらは先に行こう。ベイリット、ヨシスケ、すまんがスキルダとブリーズルを探して、伝言を頼む。帰るまで家から決してでないこと、とな。あとは、ドアの錠をかけたのを外から確認してくれ」

「「はい」」

「絶対に無理はするでないぞ。よし、では」

 そういうと、3人は素早く外を確認し、音もなく闇へと駆け出していった。


「よし、俺らも動くぞ」

 ベイリットがそう言ったと同時に、スキルダが息を切らして戻ってくるのが見えた。よほど慌てているのか、パタパタと足音をたて、ランプまでつけている。


「スキルダさんっ、どうしました落ち着いて……」

「ブリーズルがいないの!」

 スキルダは声を押さえながらも、叫ぶようにそう言うとベイリットの腕を掴む。


「なっ……」

「家中、屋根裏にも、地下にも……どこにも……どうして、あの子、どこに……!」

「リーズが?どうして……とりあえずスキルダさん、落ち着きましょう!」

 二人のやり取りを呆然と聞いていたヨシスケは、ふと朝の会話を思い出した。


『……楽しみにしておいて!今年のはとても美味しくできたの』

『それはいいな。すげー楽しみ。』

『でも、もう何回か混ぜた方が良さそうなのよね。うーん、夜中に起きて混ぜようかなあ。』

『新婦が無理するなよ。十分いい香りだよ。』

『ふふっ、ありがと。』


「……ノイチゴジュース……」

 ヨシスケが呟くと、スキルダとベイリットが振り向いた。

「ッベイリット!! 倉庫だ!! リーズ、ノイチゴジュースを夜中にかき混ぜるって……」


 ベイリットはそれを聞くと弾かれたように走りだし、ドアに手をかけた。

 しかし、その時……。


「キャー!!!」


 闇を切り裂くような悲鳴が聞こえた。

 この声は間違いない、リーズだ……!


「くそっ!」

 ベイリットはドアを開け、飛び出していった。


「ブリーズル! ブリーズル!!」

 スキルダはランプを落とし、自分もドアの方に駆け寄る。ランプは衝撃で火が消え、中に入っていた燃料のアルコールが染みだした。ヨシスケは慌てて押し止める。


「スキルダさんはここに!」

「ヨシ君でも……!」

「村長からの伝言です! 帰るまで、家からでないこと、だそうです! リーズは必ず、俺とベイリットとで守ります!」

 ヨシスケはスキルダさんの肩を掴んで強く言った。


 スキルダは涙を流し、無言でヨシスケを見つめている。ヨシスケはそっと肩を離し、もう一度口を開いた。

「……必ず、守ります」

 そう言うと、踵を返してドアに手をかけて急いで外に出た。


 倉庫を見ると、丁度ベイリットが中に入っていくところだった。家々に明かりが点り、村はパニックになりかけている。村長達の姿はわからない。運悪く、人影を見つけられないまま遠くまで行ってしまったんだろうか?


 次の瞬間


 轟音と共に、倉庫の窓とドアが吹き飛び炎が吹き出した。

「ベイリット! リーズ!」

 ヨシスケは全力で倉庫に向かった。

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