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弟(兄)は戦闘員じゃありません。  作者: ちゅーにびょーのてまえ?
2/2

実力テスト?

続きでーす。

楽しんでください〜!

シアとトウキの模擬戦という名の決闘は中庭で行われることになった。シアは特に気負うこともなく武器を手に取ったり、振ってみたり、細かい装飾を観察したりしていた。


「おーい、シア。武器は決まったか?」

じっくりと武器を見ていたシアははっとしたように慌てて武器を置いた。


「武器って自分の使ってはいけないですか?どうもしっくりくるものがなくて...」


「やめた方がいいとは思う。相手も自分の武器持ち出したりしたら、不利になることだってあるから。」

今回の相手はトウキ。

あの、水鏡国の次男だし、すんごいものを持ってきそう。


「あー、シア君。私もあまりおすすめしないのだが...。」

後ろからアレックス先生が歩いて来ていた。

アレックス先生はなんだかんだ言って面倒みがいいので心配になって様子を見に来たみたい。


「...わかりました。」

シアは渋々二本の長剣をとる。

へー、珍しい。私たちの国でもあまり見ない剣術だ。


「魔術の使用はありですか?」

シアはアレックス先生に問いかけた。


「...一応、ありだ。実力テストだからな。」

眉間に深いシワを寄せ、難しい顔して答えた。

多分怪我の心配してるんだろうなー。

でも、魔術ありなら、シアの圧勝だと思う。

私よりほんの少し魔力が低いだけだし、無暗唱もできる。

それに、私達が知らない魔法もたくさん知ってそう。


「それは良かったです。」

にこりと楽しそうに笑うシアにアレックス先生は不穏な空気を察知さたよう。


「それじゃ、トウキの様子を見に行ったら試合開始だ。絶対殺すなよ。」

相変わらずのむずかしい顔のまま少し離れた所にいるトウキの所へ歩いていくアレックス先生。

しわがこれ以上深くならないといいけど。


「もちろんです。絶対に殺したりしません。」

さっきの腕一本って本気なのかな?

確認しておきたいけど、ちょっと怖い。

シアは私に穏やかな顔しか見せてきていない。

だけど、さっき見せた一面は、本気でそう思っているように聞こえたし、そうするつもりのように聞こえた。

腕一本って、切り落とす気?

寒くもないのに、鳥肌がたっていた。


深く考えてはいけない気がする。


「シア、頑張って!」

結局、そんな言葉しか出てこなかった。


「それでは両者、結界の中に入ってくれ。」

向こうの準備が終わったようで、自信満々なトウキが丸いドームの結界の中に入っていく。


「ありがとう、ククリ。」

うーん、こっちは気楽な感じだけど...大丈夫かな?

トウキがすごく苛立ちそう。


シアも同じように丸いドームの結界の中に入っていく。

二人が決められた位置につくと、アレックス先生が説明を始める。


「これは決闘ではあるが、シア君の実力テストを兼ねている。くれぐれも命を奪わないように。また、武器の持ち込みは決められたもののみ、魔術の使用は許可するが、この結界を壊したら、壊したものの勝ちとする。まぁ、ないとは思うが。」

一通り話終えるとアレックス先生は結界から出る。


「それでは始め!」

その掛け声と共に、トウキがシアに真っ直ぐ突っ込む。

シアは振り下ろされる大剣を難なく避けた。

そして、右手の剣でトウキの腕を軽く切りつけた。

深い傷ではないのであっという間に傷が消え、馬鹿にしたようにトウキが鼻を鳴らす。

シアは少し驚いたようにトウキを見る。

水鏡家の特徴は高い自己生成能力。

そう言えば、うっかり伝え忘れてしまった。


少し考え込むように立ち止まっているシアにトウキはもう一度突撃する。


シアはすれ違いざまに先程トウキに傷をつけた場所と同じ場所を軽くきりつけた。


「止血。」

そうシアが呟くと、トウキの傷の血は止まった。

だけど、治っている訳では無い。


「魔術で止血すると、私の魔素が着くので回復できない。思った通りだ!」

すごく嬉しそうに小さく呟いだシア。

あっさりトウキの自己再生を封じたシアにみなは驚きを隠せない。ちなみに言うと、魔素を定着させるって...どういう事?ってなっているんじゃないかな。私もそうだけど。


「だからなんだ!」

トウキは自分に身体強化をかけて、素早く振り返り、大剣をものともしない動きで何度も振り回す。シアがそれをかわしてはいるが、服まで気遣う余裕はないみたいで所々切れていく。最後の思いっ切り振り下ろされた大剣が砂埃を舞わせる。

一瞬、結界の中が見えなくなった。


「まとえ。」

シアの声が聞こえた。次の瞬間。


「あああああぁぁぁぁ」

と叫び声が響いた。


砂埃がおさまると、シアがトウキを抑え込んでいた。

背中を左足で踏み付け、トウキの右手を右手で引っ張り、左手の持っている長剣をトウキの右腕の根元に突き刺していた。

あれは、痛い。

ていうか、本当に腕を...

周りから悲鳴が聞こえる。

少なくとも、私とアレックス先生を含め、今の状況に寒気を感じていない生徒はいないと思う。

ちらっと、2階で二人の決闘を見ていた兄の方へ視線を向ける。

兄は何ともない顔で、それを見ていた。


「早く降参してください。腕を切り落としたくはありません。」

淡々とそういうシアからはなんの感情もためらいも感じない。

多分、この傷も治らない。シアが自己再生をさせるわけがない。

血が流れ続けている。血溜まりが少しずつ大きくなる様は恐怖を嫌悪を呼び起こす。シアはトウキが降参するまで動くつもりはないみたいでじっと呻くトウキを見ていた。


「シア君、一旦離れてくれ!トウキ、早く降参しろ!!」

決闘は、どちらかが降参するか、死ぬまで結界が解かれることは無い。今回は、模擬試験用なのでどちらかが降参するか、意識を失うまで続くのだ。意識を失う重体になるまで戦わせたくないアレックス先生が慌てたように叫ぶ。だが、シアが離れる様子もないトウキは痛みのせいか呻くばかりであった。


「いいから離れろ、シア君!トウキを殺すつもりか!?早く離れないと、失格する!!」

流れた血の量の多さにアレックス先生は顔を青くしていた。

その声にシアは離れた。

表情は無表情のまま、シアの藍色の瞳がすうと細められると、大きな氷塊とそれを囲むように細長く鋭い氷の欠片がトウキを守るように現れた。


「トウキ...!?早く傷の手当てしないと...!」

アレックス先生の声を無視して、トウキが左手でゆっくり立ち上がる。その顔は苦痛に歪んでいたが、目だけが闘志と怒りで満ちていた。

シアはそれを黙って見ていた。攻撃しようと思えばできたのに全く手を出さずにトウキが立ち上がるのをただ、見ていた。


「俺に何をしたか分からんかったが、お前は殺す。俺に恥をかかせてお前は無傷で決闘を終わらせたりしない。」

静まり返る中庭。

二人の距離はまだ遠いが、トウキの紋章魔術は放たれるのを待つばかり。しかし、シアが動く気配も魔術を構築する気配もない。


「不思議な魔術ですね。どんな仕組みだろう。」

じっとトウキを観察してシアに私は呆れてしまった。

気になるのはそこー?


「体内の魔素を使うのではなく、特定の魔素を空気中から体に刻まれた魔法陣を通して魔術を発動させているのか...後ろにある氷塊は体内に収まりきらなかった魔素を氷塊として顕著させ、魔素を補充することによって術の回転を上げ、補助していると。メモほしいなぁ...。」

シアが突然話し出す。なんというか、兄の友である賢者のマレドを思い出す。彼も研究に没頭すると独り言が増えてきてちょっと怖いのだ。

トウキも何言ってるんだって顔してるし。


「喰らえ!我が敵を貫き通せ、氷塊の針雨!」

トウキがそう唱えると細長い氷の破片がシアに放たれた。

放たれたそばから、氷塊が裂け新しい氷の破片が生成される。


シアに最初の氷の破片が届きそうだった時、シアが言い放った。


「塵とかせ。」

その一言で、氷の破片も氷塊も...結界も消え去った。

塵となったそれらは風が吹くと飛んでいってしまった。

私達は、何も言うことが出来ずにいた。


「シア君、お疲れ様です。凄いですね。結界までも壊してしまうとは...。トウキを医務室に連れていきなさい。」

二回から飛び降りた兄がシアの元に歩いていく。

トウキは唖然としたままシアを見ていた。


「その必要はありません。私の魔素を拭いされば自己再生が始まります。」

シアがトウキの肩を軽くなでると傷はふさがっていく。


「...なんで...。」

トウキはいまだに立ち直れずにいた。

トウキと私には明確な力の差がある。紋章があるとはいえ、魔力の差は歴然。剣術もまたしかり。

だけど、トウキは同い年の子たちの中では負け無しで、ある程度の大人にだって勝てる。


シアは、特に何も言わず、兄とこちらへやってきた。


「お疲れ、シア。」


「ありがとう。でも、正直集中できませんでした。あの魔法、凄いですね。ぜひ調べたいです。何かと応用が利きそうな魔法です!」


「マレドを思い出すようなセリフです。」

学園長モードの兄が珍しく苦笑いした。


「...懐かしい名前。」

私は遠い目をしていたと思う。

だって、すんごい個性的なんだよ。

うん。


「この実力なら、歪みの森に自由に出入りしても大丈夫そうなので、許可付きの学生カードを発行しときます。放課後に学園長室に来てください。何種類か書かなければいけない書類が増えたから時間がかかりそうですよ。」

とほほと兄が肩を落とす。

最近忙しそうにしていたみたいだし、大変なのかな?


「よかったら、書類仕事も手伝いましょうか?私、得意ですよ?」

シアの提案に兄は悩んだ。本当に悩んでいた。

さすがに受けちゃまずいでしょ。

早く断れと言う目で見ていたが、それでも悩んで、断ることができないみたい。そんなに大変なのか。


「すみません、今のは忘れてください。出しゃばりすぎたみたいですね。」

シアは苦笑いしてその様子を見ていたが、さすがにダメなのかと察したらしく提案を取り下げる。


「いや、偶にお願いしていいか?俺の手が回らない学園の行事の時とか、クリーチャー討伐のメンバーからの証言をクリーチャー辞典に載せる文章とか。学園長でなくてもいい仕事を頼みたい。」

悩みすぎて、お仕事モード出てる。

確かに、他の賢者は自分の興味のある仕事か、研究しかしない。

雑用させても全く仕事しなかったり、忘れたりしてしまうのだ。

おかげで兄は毎日高い書類の山を一人で処理している。

偶に私にまで書類の仕事が回ってくる。


「わかりました。お役に立てることがあって良かったです。」

その言葉に辺りの空気が緩んだ。

どうやら、シアが兄に恩義を感じていると察したらしく、兄がシアを止められると思っているみたい。

まぁ、実際依頼主だし、ある程度は従ってくれそうだけど...

この状況を狙って発言してたりしないよね...?

もしそうだったら、頭良すぎなー。


「さて、私は仕事に戻ります。皆さん授業頑張ってくださいね。」

にこやかに挨拶して帰っていく兄に私以外みなお辞儀する。

やっと一息つくと、教室に一足先に帰ることにした。

ざわざわと興奮冷めない様子のクラスメイト達を残して。


「疲れたー。シアは?」

うーんと伸びをしながらのんびり歩く。後ろから着いてきていることはわかっていたので振り返らずに聴いた。


「特に。でも、服が酷いことになってしまいました。」

しゅんと独言のように呟いたシアに振り返った私は笑う。

シアの服は不思議なデザインの服で少し軍服にも近い。

基本の色は白で両肩から袖の上部に青の線その縁に濃い紺色があり、袖の端は折られていて金のような黄色の線と銀メッキっぽい三つのボタンがついている。ボタンにも細かい模様が描いてあるけど、近くで見ないとわからない。逆に服の前にはボタンはなく、白の四角い布で固定されたものが四つ上から並んでいる。

これは、ボタンが隠れて見えないだけかも。

襟は立っていて首の半分より多くを遮っている。灰色の線が縁取られている。因みに上着の下は金っぽい黄色だった。

下のズボンは白。全体的に汚れやすそうだなー。

言っておくが、シアは下にインナー着てるみたいで服が結構切れているけどそんなに怪しい格好ではない。うん。

模擬戦でもした?って感じのボロさだから。


「これから街にでも行く?今日は本格的な授業はないし。」

サボり上等!

入学式も終わってるしね。


「...今日は、止めておきます。クラスの雰囲気もつかみたいですし。早めに行って書類仕事も手伝いたいですから。」

少し考えてから、シアは微笑んだ。


「そうか...。残念。久々に街にいけると思ったのに。」

一人だと街に行かせてもらえないからこの3ヶ月ぐらいずっと学園の中だった。暇すぎて教科書も全部読んでしまった。偶にライラ先生と魔法で遊んだり、ジュード先輩と手合わせしたりもする。でも、毎日って訳にはいかないから結局暇だったのだ!


「良かったら、明日の放課後に行きませんか?」

気遣うようにシアが提案してくれた。

もちろん私は即答。


「絶対行こう。明日は休みだから朝早く出かけよう!」

ふふん楽しみー!

シアといれば兄も許可してくれる!

明日行くところ決めないと〜


「それと、着替えたいのでククリを教室に送った後、一度部屋に戻ってもいいですか?」

シアが苦笑いしながら言った。

いけない...私としたことがはしゃぎすぎた。


「別にここで別れてもいいけど?」

気恥しいから、素っ気ない反応を返してしまった。

シアは気にしてなさそう。

良かった。


「流石にそれは、護衛としてまずいと思います。」

苦笑いしながら答えたシア。

なんか、見慣れてきた。


「わかった。あーあ。つまんないの。」

うーん。

やっぱり、ちょっと窮屈。

シアじゃなかったら、まいてたかも。


「あー!あと、敬語禁止ね!言うの忘れてた。」

私はシアをビシッと人差し指で指す。

シアはきょとんとした後頷いた。


「えーと、わかったよ。」

すぐにそう返してくれたのでちょっと意外。

敬語キャラなのかと思った。


「うんうん。こっちの方がいいや。他の奴らにも敬語やめた方がいいよ。同じくらいの年齢なんだし。ちょっと距離感感じると思う。」

そうじゃなくても、あの時のシアはぞっとする迫力があった。

人を殺し慣れたような冷徹さを垣間見た気がするのだ。


「初対面の人には敬語使っちゃう癖があって...そんなつもりはないんだけど...。」

困ったように笑ったシアに笑いかける。


「癖ならしょうがないけど、これから3年間は一緒なのに敬語じゃ堅苦しいからねー。」


「そうだね。俺もこっちの方が楽だから、ありがたいよ。」


二人で話しながら教室に戻ると、何人かいるだけだった。

シアは困ったように私の席のそばにたった。

まだトウキの荷物があるから座りにくいみたい。


「トウキは強かった?なんかあっさり勝ててたけど。」

さっきに試合はシアの圧勝に見えた。

トウキの攻撃が一撃も当たらないなんて、思いもしなかった。


「そういうふうに見えてた?全くそんな事はないんだけど。」

驚いたように目を見開いたあと、困ったように笑うシア。

本当にそう思っているみたい。


「へー?」

続きを促すように私が言うとシアは一気に話出した。


「トウキは大剣を使っていたから当たるとダメージが大きい。攻撃も早くて避けるのに精一杯だったよ。結局、服にはあたってしまったからね。トウキの剣術はすごい腕だね。俺は剣術自体はそこまで上手じゃないから受け流しは危ないって思ってたんだ。自己再生なんて見た時は驚きすぎて試合の事忘れそうになった。考え事しながら戦うのは結構大変だから集中力もそんなに高くなかったと思うよ。それにあの魔術。全ての氷の破片が俺に向かって来ていた。全部を避けるわけにもいかないから大きめの術を使わざるおえなかったんだ。」

どこか嬉しそうに話しているシアに私は驚いた。

やっぱりマレドみたい...うーん、なんかごめんシア。

でも、マレドよりはクレイジーさが低いから、大丈夫だよね?


「へー。私は余裕ぶって避けてんだとばかり思ってたけど違ったのか!」

おどけてそう言う。


「俺はそんな嫌なやつじゃないから。」

シアは既に見慣れた苦笑いを浮かべた。


「...それは、本当か?」

突然私の後ろからトウキの声がしてびっくりしたー!

シアは見えてたみたいで驚いたようには見えない。


「え、トウキ...もういいのか?」

先程の血溜まりを思い出して反射的に聞いた。


「ああ。それより、今言っていたのは本当か?」

トシアこわばった顔でシアの返事を待っていた。


「そうだよ。君は強かった。」

真顔で返すシア。

だけど、うん。私でもこれはちょっと腹立つかも。


「嘘だな。俺よりお前の方が強い。」

トウキの剣呑な眼差しがシアを貫き、今にも殺しそうだ。

私は確かに腹立つとは思うけど、そんなに怒ることなのかとトウキの言葉に混乱した。そもそも、誰かに負けることだってある。

それがシアだったってだけじゃない?


「...おい、トウキ、どうした?」

私が話しかけても無視。こちらに視線すら寄越さない。

なんか大丈夫じゃなさそうなんだけど。


「俺は、ククリと戦ったことは無い。だが、ククリは俺より強い。俺はククリよりお前の方が弱いと思った。」

怒りを抑え、低い声で淡々と話し出したトウキ。

ないこれ。


「ククリの方が戦闘力高いと思うよ?そして君も俺より攻撃力は高い。」

シアが客観的にそういう。

多分、シアが言ってることは嘘じゃない。

私もシアが私と兄より強いとは思えない。


「...お前、全然本気じゃなかった。だから、余裕そうに見えた。」

でも、トウキの言っていることもわかる。

シアは全く本気じゃなかった。

本人はなんだかんだ言ってるけど、本気じゃなかった。


「そうだね。俺は道具を使って手数で相手を追い詰めるのが得意だから。」

真顔のままシアは答えた。


「...なんで、なんでお前はっ!」

どうしてシアにトウキが食ってかかるのかがわからない。

私もいい加減イライラしてきた。

別にシアと仲良くしろとは言わない。

ただ、負け犬の癖して何偉そうにしてるのかが理解できないのだ。


「トウキ、いい加減にして!シアに恨みでもあるわけ?」

会ったばかりのシアにあるわけがない。

そういう視線で二人の間に割ってはいる。

トウキは私の方を見て悔しそうな顔をした。


「ククリ、彼のこと責めないであげて。」

小さめの声でシアが私に言う。

私が何か答える前にトウキが口を開いた。


「お前なんか、嫌いだ...。絶対許さない。」

顔から表情が抜け落ちていた。

ぞくっと寒気を感じる。

先程シアに感じた寒気とはまた違うものだった。


何も言わずトウキがシアの方に近寄る。

シアは私の腕を引き、トウキが自分の席につけるように後ろに下がったのだ。


荷物を全て取り出すと、もう一度シアをキッと睨み指定の席へと移動した。

教室内の緊張した空気がほんの少し緩む。

それでもまだ殺伐とした雰囲気にため息が零れる。

こんなん3年間大丈夫か?

シアをちらっと見ると、トウキを見ていたが、こちらに気付くと微笑んだ。

シアは、すごいなー。

堪えているようすがない。


ドアががらがらと開き、アレックス先生が入ってきた。

一瞬部屋の空気に驚いたようだったが、皆の視線が私達とトウキに注目されていることに気付くと、ため息をついた。


「それじゃー、授業始めるぞ。」

アレックス先生の緩い声に生徒たちは動き始める。

こうしてAA組の新学期が始まった。




次の話はとりあえず、街に行くからの文字数余ったら夏休み直前まで飛ばそうと思ってます。

ちなみに、8000文字を目処に書いてます。

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