溺愛は、ごめんです。
もう何度目になるだろう、涙を流しながら目覚めたのは…。
夢の中でいつも私は、何かから逃げていた…。
目覚めと共に流れ落ちた涙を拭いながら意識を覚醒させると、そこには見慣れない天井があった。
「………どこ?」一瞬意味が分からず、辺りを見渡すと
「良かった、目が覚めたんですね?」とドアの側に立っていた男の子がホッとしたように、私に向かって問いかけてきた。
(うわぁ、可愛い子!!!)私は、状況も分からずその男の子に目がくぎづけになった。
と、遠くからドタバタと足音が聞こえてきたかと思うと、慌ただしくドアが開いき
「お嬢様!!良かった。目が覚められたのですね。凄く心配致しました…。」ポロポロと涙を流しながら、これまた可愛い女の子が私に向かって言ってきた。
そして、その胸にギュウっと抱きしめられ、息苦しさのあまり窒息しそうになっていると、
「とりあえず、離してあげて下さい!」とドアからベットにの側にやってきた男の子の声に抱きついていた女の子が窒息しそうになっている私に気付き、慌てて腕を緩めてくれた。
「痛む所はないですか?」と優しく男の子は私に聞いてきてくれたので、私は正直にさっきからズキズキする頭の事を話した。
すると男の子は、侍医を呼んで説明をすると言う。正直言って今の状況も整理できていない私には、何も言うことが出来ず、大人しく男の子の言うことに従うことにした。
しばらくすると侍医が来てくれたらしく、ゆっくりと話し始めた。
そして、
「メアリ様は、記憶喪失になっておられます。頭を強く打たれたせいで、ご自身の事も何も覚えておられないようです。」
その言葉を聞いて、私の頭はクエッションマークでいっぱいになった。何故なら記憶はある。が、ここの記憶ではない。
私は、サクラ、井上 サクラ、高校2年の17歳の日本人のハズ
でも、視界に入ってくる髪の毛の色も、手のひらのプニプニ感もどう見ても、私ではない。
そんな私をほぉって、周りは慌ただしく動き出した。
私を窒息させかけた女の子は、
「とりあえず、旦那様と奥様に何と言えば…。私が付いて居ながら、お嬢様にケガを。いっそ私も頭を打って、いや、そんな事をしたら、お嬢様のお側にいられなくなる…。かくなる上は、お嬢様を攫って…。」とブツブツ怖い呟きが聞こえてきたが聞こえていないふりをしつつ、私自身はどうしたらよいのかわからない。
女の子の言う旦那様や奥様とは、私の今のお父さんやお母さんの事だと言うのはわかるが、今の私の記憶には無いどうしよう…。などと考えていると
「 ……………でよろしいでしょうか?」と男の子が問いかけてきた。
思考に耽っていた私は何も考えず、
「はい」と口だけで答えて、また、思考に耽る。
「では、お父様とお母様に報告して参ります。」と男の子は私の手をとり、手の甲にキスを落としてドアから出て行った。
流れるような動きに唖然としていると、
「……お嬢様、本気ですか?相手は王太子様ですよ?王妃様になられるのですか?」と私を睨むように見てくる女の子
(はぁ?何それ?お伽話?王太子って何?あの子、王子様なの?誰が今のこの状況を的確に教えて下さい…。)