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その男、帆模田玲央という。

ここから同性愛者のキャラクターが出てくることになりますので、苦手な方は注意してください。

「俺の名前は帆模田玲央ほもた れお。2組だ。よろしくな。」


 隣で夕日の差し込む廊下を一緒に歩いている、身長が2メートル近くの男はそう名乗った。


「僕の名前は佐藤晋平。隣の3組で委員長をやることになった。よろしく。」


 とこちらも名乗っておく。とはいえ、委員長の仕事で遅くなった自分をわざわざ待ってまで話しかけてきたってことは名前くらいは知ってはいそうだけど。入学式の式辞で全校生徒の前で自身の名前も言ったしね。


「それで、どうして帆模田君は僕を待っていたの?」

 すかさず僕は疑問に思っていたことを投げ掛ける。


「入学式の式辞の時から少し気になってたんだよね。どうせこの後の予定もないし、話しかけて今のうちに仲良くなろうと思ってさ。」


 そう言って笑顔をこちらに向けてくる。別に嘘をついているようには見えないが、話しかけるのならば明日でもよかったのではと思う。


(しかし帆模田君、かなりイケメンだなぁ。)

 端正な顔立ちに加え、高身長。笑顔も板についており、声色も紳士的でまさに「ザ・モテ男」という感じの男であった。

 なお自分は身長が167㎝程。その背丈はちょっとうらやましく思う。


「帆模田君って女の子にものすごくモテそうだよね。ちょっとうらやましいかも。」

 僕もこんなスタイルだったら中学校の時に振られなかったのかな、などと考えてしまう。考えてもどうしようもないのだけれど。


「いや~、全然そんなこと無いぜ。事実『彼女いない歴』=年齢だからな。」

「嘘ぉ!?」


 いや、こんなイケメンいたら絶対クラスの女子が黙って見ていないだろうに。不思議なこともあるもんだ。

 よほど女運に恵まれていないのだろうか。


「それと、俺のことは『玲央』って読んでくれて良いぜ。そっちのほうが呼びやすいだろ?」

「そうだね。こうして話すんだから下の名前のほうが良いよね。僕の事も晋平とか好きに呼んで良いよ、玲央。」


 そういって僕は帆模田とお互いに名前で呼びあうことにした。


『晋平』……悪い気はしないな。


 初日から下の名前で呼び合う仲の友達ができるのは、地元から離れた高校に通う僕にとっては非常にありがたい。優しそうな人だし、玲央とは良い友達になれそうだ。


「ハァ...ハァ...」


 などと思っていると何やら帆模田の息づかいが少し荒くなっているように感じる。顔をうつむかせ、その顔も心なしか赤くなっているようだが、廊下に差し込む夕日のせいだろうか。


「どうしたの、玲央。」


 そう呼びかけると、玲央は「何でもない」と答えた。


 やはり気のせいだろうとは思ったのだが、もし本当に体調不良でそれを無理して隠しているとすればこのまま歩かせるのには抵抗がある。


「そういえばこの高校って、校内に自販機があったよね。」

「そういえば一階の東棟と西棟をつなぐやたら横幅が広い廊下にあったな。」

「僕、学校で自販機使うってのに興味があるんだよね。こんなの中学校の時にはなかったからさ。どう?そこで飲み物でも買って、自販機前のベンチでお互いのことを話してもっと知り合わない?」


 この流れなら相手に気を遣わせずに休ませることができるはず。


「お互いのことを...知り合う...?」


 そういって僕の提案を真剣そうな表情で呟く玲央の息づかいはやはり荒かった。

 やっぱり気を遣って体調が悪いのを悟らせないようにしているに違いがない。


「どうかな?誘ってるのは僕だし、飲み物ぐらい奢るよ。」


 であればやはりこれ以上無理をさせる訳にはいかない。

 本当は肩を貸したりしたいけど身長差がありすぎるし、それにまだ玲央の足取りはしっかりしている。


 そこで僕は玲央を無理にでも休ませるべく、先に進んで玲央を自販機の方へ誘導することにした。




 一方その頃、玲央は隣にいる人でもない限り誰にも聞こえないであろう声で独り言を呟いていた。


「お互いに名前で呼び合うのはもちろんのこと、俺のことイケメンだって言ってたしお互いのことをもっと知りたいってこれはつまり俺とその気があるってことでは...。」


 そう呟く彼の目はまるで獲物を狩る獣のソレである。


 そんな玲央の様子を、先に進んでいく僕は気づくことができなかった。


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