神殿に着きました
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「あの…!大丈夫…ですか?」
布で隠すのを諦めた女性は、両手で大事な所だけを隠し少年の元へと駆け寄って声をかける。
横になって目を瞑っていると少しはマシになっていくのだが、女性の声が頭に響いて回復が遅れている。
まぁ揺さぶられるよりはマシか、何て考えていたのが悪かったのか。
女性は声を掛けても反応しない少年に痺れを切らしたのか、はたまた意識が無いのかと心配したのかユサユサと少年の身体を揺らし始めた。
「うっ…!や、やめ…」
「あ…!大丈夫…ですか?何処か怪我はない…ですか?」
少年が反応を返した事により、ようやく揺らすのをやめる。
しかしやはりまだ心配なのか、少年の側からは離れずにじっと様子を窺っている。
「…大丈夫、少し気分が悪いだけ。暫くすれば治るから」
いつまで経っても側を離れない女性を安心させようと、少し気合を振り絞って返事を返す。
それで離れてくれるかと期待したのだけど、女性は「だったら…」と少年の背中を優しく擦る。
正直放っておいて欲しいと願う少年であったが、実際に少しずつ楽になっていくので無碍には扱えない。
しかし…
先程も言った様に女性の服は、すでに役立たずな布と化している。
そんな状態で倒れている少年の前へとしゃがみ込んでいる、つまりは…何処がとは言えないが、丸見えである。
頑なに目を瞑って見ない様にしている少年は紳士であるが、最初にチラリと見えてしまった分は不可抗力と言えるだろう。
目を開けるに開けられなくなった少年は、早く離れて欲しいと強く願った。
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「ありがとう…ございました。お陰で助か…りました」
暫くして、回復したと女性に告げるとようやく離れてくれた。
自分の状況にかなり無防備な女性に、少年は着ていたローブを渡す。
胸元が少々窮屈そうではあるが、無事全身を隠す事が出来た。
改めて女性を見てみると、歳は20くらいの少しおっとりした感じの女性だ。
目は垂れ目がちで、涙ボクロがあるのは少々エロスを感じる。
襲いたくなる気持ちも少し分かる、と頭に過り直ぐにそれを打ち消す様に頭を振るう。
突然の行動に女性は、不思議そうに首を傾げた。
「…いえ、たまたま通りがかっただけなので」
「それでも、助かった事にかわり…ありません。良かったら、お礼をさせて…貰えませんか?」
別に良い、と断る少年に対し「是非に」と譲らない女性。
この後行く所が有るから、と伝えると漸く諦めてくれた。
「…それじゃあ」
「あ…あの、じゃあこのローブはいつ返せば…良いですか?」
ああ、そう言えば。
と、少年は今から行く所を告げておく。
神殿に行って、その後に組合へ行って、最後に宿へ行く。
宿はまだ決めて居ないので、組合を通して連絡してもらえれば。
そう言うと、女性の顔に笑みが浮かび。
「だったらちょうどいい…ですね、私は神殿に務めている修道女…ですので」
笑顔のまま「これでお礼も出来…ますね」と続ける女性。
行き先が同じなら断る理由も無くなったな、と嬉しそうに先を行く女性の後を少年はついて行くことにした。
神殿の中に入ると、荘厳な雰囲気に圧倒される。
高い天井や綺麗なステンドグラスに目を奪われ、キョロキョロと見渡すその様子は田舎者丸出しで有る。
先程女性に取り次いで貰った神父は、そんな人たちに慣れているのか優しく微笑んだまま少年を見つめている。
少年が落ち着いた頃を見計らい、神父が祝詞を唱え始め遂に成人の儀が始まった。
次話
漸く主人公の名前が明らかに