一日の長がありました。
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事の起こりは、今より25年前。
後のギンジの父となる”一ノ瀬 亜紋”が、何気なく発した言葉であった。
『なぁ、これって”魔石”か?』
自らが討伐した魔獣から、転がり出てきた石を掴みとる。
それを共に旅をしていた女性、ユミルへと掲げて問いかけたのだ。
ユミルに家名は無い、神に仕える時に俗世のしがらみと共に捨ててしまわなければならないから。
言うまでもなく、後のギンジの母である。
『魔石……? それは、瘴石と言うものですよ』
大気中の瘴気が固まった事により発生すると言われる魔獣、その肉を食べる事が出来るのは”全身の瘴気を一纏め”にしたからだと言われている。
その結果出来上がるのが瘴石であり、瘴石の大きさによって”元々どれほどの瘴気を蓄えた強敵”かが分かるという。
もちろん瘴気の塊という事だけあって、人体にとっては有毒である。
魔獣の強さを測る以外に、当時は価値を見い出せ無いでいた。
『そうか……魔石だったら、土産に丁度いいかと思ったんだが』
『土産って、イオリさんにですか?』
イオリとは、亜紋達の旅に付いて行きたがっていた僅か10歳の少女の名前である。
まだ幼い少女を連れていける筈も無く、土産を持って帰ると説得して納得させたのだ。
『そうだ』
『イオリさんは変わった物がお好きですからね』
ふふふ、と柔らかな笑みを亜紋に向けるユミル。
『まぁ、土産は別の物にしようか』
『そうですよ、まだ旅は始まったばかりですから』
これから先でも、たくさんの”変わった物”と出会えます。
ユミルはそういって、亜紋の腕を抱き寄せた。
『……逆に、魔力を含んだ石とかって無いのか?』
15歳にしてはやや強面の亜紋は、出来るだけユミルを意識しないように努めた。
意外と、初心な男である。
その結果が今の質問なのだが、それにはすぐに答えて貰えた。
『ああ、それでしたら”魔鉱石”という物が有りますよ』
『そ、それはどんな物だ?』
ぐいぐいと、腕を抱く力を増すユミル。
亜紋さんはタジタジである。
『大気中の魔力が、時間をかけて鉱石に染み渡った物ですよ。利用法としては、鍛鉄の時に混ぜ合わせると上質な鉄になるとかなんとか』
『そ、そうか……』
だったら……と、亜紋は苦し紛れに次の質問をする。
『ま、魔力と瘴気の違いって何なんだろうか』
『え、と。それは……』
ここに来て、言葉と同時にユミルの抱く力が弱まる。
『どっちも目には見えない物だろう? その2つには、どれだけの違いがあるんだ? 全く違う成分なのだろうか?』
ついにユミルから開放された亜紋、ようやく一心地つけた瞬間である。
この隙を逃さないとばかりに、次々と質問を投げかけた。
『そう、ですね。魔力は”良いもの”瘴気は”悪い物”としか、それ以上は……』
研究されていない、ユミルの答えはそうだった。
『なら”良い瘴気”が魔力で、逆に”悪い魔力”が瘴気って考え方はどうだ?』
『それは……』
無い、とは断ぜられない。
何故ならば、研究されていないのだから。
亜紋の新しい着眼点を、ユミルは面白いと感じてしまった。
一考の余地はある、どちらも”目には見えない不思議なエネルギー”なのだから。
『試してみよう』
『……はい!』
そういって、先程手に入れた瘴石を元に試行錯誤を繰り返す二人。
こうして【賢者】が提唱するより15年も前に、魔石を発見し利用法を確立していった。
こと魔石に関してだけ言えば、二人の方が一日の長があったのだ。
まぁ、そんな事ギンジも知らないが。
――――――――――
「ま、まぁ……魔水が”簡単に”作れることは分かったよ」
ギンジから魔水の作り方を教わり、釈然としないも納得はするクリス。
しかしその方法には、もう一つだけ問題があった。
「でも……魔石の利用価値が上がったせいで、昔に比べると値段が上がっているんだ」
元々は廃棄されるだけだった瘴石も、ここ10年は右肩上がりで買い取り値段が上がっている。
組合員がその恩恵を授かっているのだから、必然的に購入する為の金額も右肩上がりだ。
更に魔石の精製法も複雑であり、最終的な値段も跳ね上がってしまう。
その為、魔石を燃料とした”魔動車”の乗車賃も結構高い。
未だに馬車を利用する商人や、馬を利用する人が後を絶たないのはそういった背景による物だ。
乗合魔動車に乗っている者は金持ち――そう判断すれば、ギンジ達が強盗にあった事も必然だったのだ。
つまり、クリスが何を言いたいのかと言うと。
「結局、高価な魔水が高価な魔石に変わっただけだよ。これじゃあ”タダ同然”とは、到底言えない」
で、あった。
なるほど確かに、ギンジは”魔水などタダ同然”とキッパリ言い放ったのだ。
一度魔力を抽出してしまえば、ただの石ころとなってしまう魔石。
そんなものを潤沢に使えと、そう言っているのか。
これじゃあ話しが違うと、クリスが憤慨するのも仕方がない。
「何か、他にも隠してる事があるんじゃない?」
しかしクリスは、ギンジに対して怒りをぶつける事などせず。
逆に、もっと情報を寄越せと詰め寄った。
「……って、言われてもな」
しかしながら、ギンジの答えは”特別な事は”もう無いだった。
「嘘でしょ? だとしたらガッカリだよ、まぁ…魔石の利用法については、目からウロコだったけど」
「そう、ですね。魔石の購入金額は、これからも上昇していく事が予想されますし。魔水と比べてどうか、と考えると……少々微妙かと」
クリスが目に見えて肩を落とし、ギルバートは簡単に試算をだして表情を曇らせた。
しかし、ギンジは何でそこまでおかしな計算をしているかが分からなかった。
「……魔石じゃなくて、瘴石を買えば良いだろう?」
自分で狩っても構わないが、と付け足すと二人から大きなため息が漏れ出す。
「いやいや、瘴石の瘴気抜きってかなり複雑じゃないか」
「そうですよ、論文によれば”3日3晩浄化をかけ続けた水に浸し……”」
うんぬんかんぬん。
ギルバートが説明してくれた工程は数十にも及び、確かにそれが本当なのだとしたら確かに複雑だ。
しかし……魔石については一日の長がある、二人から教わったギンジとしては首を傾げるだけの結果になった。
「……いや、そんな面倒な事しなくても。天日に6日程晒してたら、瘴気なんか勝手に抜けるだろう?」
「「「……はぁ?!」」」
ギンジの一言に、もう少しで空気になりかけていたアンナからも驚愕の声が上がった。
亜紋とユミルの試行錯誤の結果、魔力と瘴気は『性質は違うが同成分』だった。
闇において発生した瘴気が、光における清らかなる性質によって変質したあーだこーだ。
要するに『明るい所では魔力、暗いとこでは瘴気が生まれやすい』だ。
それに気付けたのは偶然にも、亜紋達が廃棄した瘴石が魔石へと変化した物を「魔鉱石だ!」と喜んで拾っていった人をみた時だ。
その時は、二人とも苦笑いしか出てこなかったが。
「……それに、魔石の魔力も”無くなったら補充出来る”んだし。最初に買ったら、後は作れば作るだけ安くなると思うんだが」
「……魔石の、再利用?」
「いやいやいや……え、嘘でしょ? 嘘だと言って!!」
次々にぶち込まれる、ギンジにとっては常識となってる知識。
さすがは一日の……いや、15年の長がある二人の息子だとしか言いようが無い。
二人の慌て様に「何かおかしな事を言ったか? 」などと、アンナに向かって訊ねるギンジ。
そんな事言われても、二人同様に驚いているアンナに答えられる筈がないのに。
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