邂逅しました。
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アンナがパンケーキを頬張る中、一足先に食事を終えたギンジは店内を観察する事にした。
男性客3割、女性客7割といったところか。
ギンジ等のように男女ペアでの客は他に数組だけで、後は一人で来ているか女性同士のペアで来ているかだった。
一人で来ている客は黙々と食事を摂っており、ペアで来ている客は楽しそうに会話を行っている。
おそらくギンジと同じく初来店であろう、何人かはギンジの様に店員の姿に戸惑っていた。
かと思えば、逆に店員と親しげに話をしている常連らしき者もいる。
最後に見た女性なんかは、口元が緩みだらしない笑顔を浮かべて店員を目で追っていた。
……最後のは見なかった事にしようか、などと苦笑いを浮かべたところでアンナの食事が終わった。
「ごちそうさまでした! すいません、食べ終わるのが遅くて……」
早々に食べ終わり、周りを観察していた事を見てアンナは食べる速度を早めたようだ。
ギンジは苦しそうに胸をぽよんぽよんと叩くアンナを見て、気を使わせてしまった事に気が付いた。
「いや、気を使わせて済まない。ここ数年は一人で食事していたから、早く食べる癖がついてしまった様だ。次からは、もっとゆっくり食べて貰って構わない」
母と一緒に暮らしていた頃に、マナーの1つとして『食べる速度は周りと合わせる』なんて事も教わっていた。
それを数年の一人暮らしのせいで、すっかりと忘れてしまっていたギンジ。
次からは気をつけようと、深く反省し謝罪した。
「次って……はい、分かりました!」
ギンジの謝罪を受けて、少し返事に詰まるアンナ。
しかし、次の瞬間には満面の笑みで了承の返事をする。
どうやら謝罪を受け入れて貰えたとホッとするギンジ、だがアンナの頬に僅かな赤みが差している事には気が付かなかった。
「ところでギンジさん、ここ”数年は一人”って言ってましたけど」
食事も終わり、ギンジらは食後の”珈琲”を飲んでいた。
アンナは苦いのが苦手だとかで、紅茶にミルクを入れた物を頼んでいたが。
そんな食後の一時、先程のギンジの言葉が気になったのかアンナがなんの気無しに訊ねてみた。
「……ああ、そうだな。数年前から、一人で暮らしている」
普段からあまり感情を表に出さないギンジではあるが、この時ばかりは少し暗い表情を浮かべた。
そこから読み取れるものは、深い悲しみ……そして怒り。
これ以上は聞かないでくれ、そんな風に言われてる気がしてアンナは追及するのをやめた。
「そ、そうですか! だからギンジさんは何でも出来るんですねー、狩りも解体も採取も!」
それに回復薬の調合も、と言われたあたりで僅かな視線を感じたギンジ。
そちらを目で確認するが、すぐさま気配が霧散してしまいその主を見つけることは出来なかった。
「? どうしました?」
「いや……何でもない。だが、そうだな。確かに一人になっても生きていけるようにと、父と母に色々と仕込まれていたからな。その後の数年間、実践し続ければ流石に”ある程度”の事は出来る様になる」
ギンジはある程度と言うが、アンナにしてみれば全てが熟達しているようにしか思えない。
それでも謙遜するという事は、おそらく”父と母”がそれ以上の腕を持っていると言う事なのだろう。
「ギンジさんである程度と言うことは、お父様とお母様はそれ以上と言う事なんですね……」
「ああ、そうだな」
自慢の両親だったよ、と言うギンジの表情は何処か誇らしげだった。
「父はたまに訳の分からない事を言う人だったが、とても知識が豊富で剣の腕も村で一番だった」
父自らが鍛えた”カタナ”という変わった片刃の剣を用い、魔獣が出る度に無傷で討伐していたのを思い出す。
「母は何処かの教会に居たそうで、癒術や薬術に関して右に出るものは居なかった」
ギンジが小さい頃は父との訓練でかすり傷一つ負う度に、泣きそうな顔で癒術を使ってくれた。
成長するにつれてそこまで慌てる事は無くなったが、母が調合したと言う”軟膏”を塗ればたちどころに傷は治っていった。
「回復薬を教えてくれたのも、その母だ。母に比べると、まだまだオレの回復薬など子供だましだ」
珍しく自分語りをするギンジに、アンナは静かに耳を傾けている。
あの品質で子供だましだなんて、などと僅かに苦笑いを浮かべる程度だ。
そうとう両親に敬意を払っている事が、アンナから見てもよく分かる。
「なるほど、ギンジさんは……」
「……っ?!」
アンナがそのまま伝えようと言いかけたその瞬間、ギンジの”索敵”に反応があった。
思わず身構えて、そちらを振り返るギンジ。
「失礼、少々お話を伺っても宜しいでしょうか」
ギンジが振り返った先には、組合の制服によく似た”カッチリ”とした服装の男性がいた。
先程ギンジが店内を見渡した時に、このような服装の男性はいなかった。
とすれば、つい今しがた入店してきたのだろう。
「……どちら様で?」
アンナに対しては改善されてきたとはいえ、まだまだ人馴れのしていないギンジ。
初対面の男性に対し、人見知りもすれば警戒もする。
そんな警戒心がありありと見えるギンジに対し、男は特に気にした様子も無く自己紹介を始めた。
「これはこれは……申し遅れました、私は”薬師会”で販売部長をしておりますギルバート・アリストンと申します」
以後お見知り置きを、等と恭しく礼をするギルバート。
その姿を見て、ギンジは更に警戒度合いを強くした。
ギンジの中では、薬師会との摩擦については特に気付いてなどいない。
ただこの男、常に笑顔を浮かべていると言うのに先程から尋常ではない気配がだだ漏れている。
敵意――そう、顔を合わせる前から今に至るまでずっと”索敵”がギンジの脳内に警報を鳴らし続けていた。
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