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目に見えない所でも話は進んでました。

スマホからの投稿

「一体何が起こっているんだ!!」



ダン!

と、机を激しく叩く音が部屋中に響き渡る。


高級品である魔樹製の机を前にして、怒りの表情を隠す事もしない男。

拳を叩きつける際に勢いよく立ち上がったせいか、これまた高級品である魔獣皮製の椅子が後方へと倒れてしまった。


そんな男の正面には、深く頭を下げる青年。

もしかしてこの青年が、男の逆鱗に触れる様な事をしたのであろうか?


答えは否である。



「何故ここ数日、中級回復薬ミドル・ポーションの売上が落ちているのだ!!」

「申し訳ありません。只今原因を究明中であり、まだなんとも…」



激怒している男は【薬師会】の会長であり、頭を下げている青年は販売部の責任者であった。

ここ数日の売上低下を叱咤しているのだ、これが営業努力の怠慢ならば…なるほど、青年の失態であろう。


もちろん原因は、ギンジである。


この世界の回復薬ポーションは、別に薬師会の専売という訳ではなく。

ギンジの”組合ギルド回復薬ポーションを納品する”というのは、別に違法でも何でもない。

しかし…充分な品質の回復薬ポーションを調薬しようと思えば、きちんとした調薬法レシピを知っていなければならない。

そして、それは薬師会により秘匿されてしまっている。

結果、実態として薬師会の専売となってしまっているのが現状だ。


それをいい事に、薬師会で販売している回復薬ポーションはとてつもなく値が張る。

骨折すらも治す、上級回復薬ハイ・ポーション10万ウェン。

ある程度の外傷ならば治す、中級回復薬ミドル・ポーション1万ウェン。

傷の消毒程度にしか使えない、下級回復薬ロー・ポーション1,000ウェン。


充分な効果の出る”中級回復薬ミドル・ポーション”は、一般人にはとても手が出せない。

自ずと魔獣の討伐などで怪我の頻度が高く、それなりの金額を稼いでいる組合員が主な顧客となっている。

その組合員達が必ず訪れる組合ギルドで、中級回復薬ミドル・ポーション相当のギンジ製回復薬ポーションが1,000ウェンで売られているのだ。

それはもう、薬師会製の中級回復薬ミドル・ポーションが売れないのは当然の結果であった。


ちなみに…ギンジが最初に飲まされた回復薬ポーションは、薬師会では売り物にならない”等級外”である。

薬草をすり潰して水に混ぜるだけという、調薬と言うのも烏滸がましい物であった。


コンコンコンコン!


と、ノックの音が鳴る。



「失礼します!」



入室の許可を受け、中へと入ってくる女性。

彼女は青年の部下であり、今回の件で原因の究明を行っていた人物である。



「ご報告します。今回の”中級回復薬ミドル・ポーション売上低下の件、原因が判明しました」



こちらを、と女性は手に持っていた紙束を上司である青年へと渡す。

それを受け取った青年は、女性を労い退室させた。

その報告書へとすぐさま目を通し、ペラペラと紙を捲る度に青年の表情が苦い物へと変わっていく。



「会長…どうやらこの件、我が販売部では無く”調薬部”の不手際かもしれません」

「…どういう事だ?」



青年は報告書の全てに目を通し終え、会長へと手渡す。



組合ギルドにて”中級回復薬ミドル・ポーション相当の回復薬ポーションを格安販売”しているそうです、これが事実なら…」

「…調薬法レシピの流出。なるほど、それで調薬部か」



青年の言葉を聞きながら、報告書に目を通す会長。

そして、読み終えたのか顔を上げて青年に向き直る。



「よし、ならば今から調薬部へと視察へ向かう。貴様は…このまま引き続き調査を行え」

「と、申しますと?」



自分の責任では無かったと、少し胸を撫で下ろした所に次の指示が出た。

すでに自分の管轄から離れたと思うのだが、乗りかかった船…というか、会長の命令には逆らえない。

大人しく、詳細な調査項目を尋ねる。



「まず、調薬法レシピの流出経路。及び、その流出先だ。そして、個人であればどうにかして抱き込めないか。最悪は…とにかく、これ以上の流出は必ず食い止めろ!いいな?」

「はい、分かりました」



どさくさに紛れて、調査以外の事も命令されてしまったが。

しかたない、頭に血が上っている会長に余計な口を出すと何が起きるかわからない。


青年は、これ以上管轄外の仕事を押し付けられる前に…と、そそくさと会長室から退室する事にした。



ーーー



角兎ホーンラビットの解体を終え、解体部屋から出るギンジ。

外はすっかり暗く…なんて事も無く、昼になるかといったところだった。

425羽の解体といった大仕事であったが、驚異的な速度で習熟していった【解体】技能スキルのおかげもあって3時間ちょっとで終わってしまった。



「あ、ギンジさん!」



ギンジが解体部屋から出て、受付へと戻ってくるとアンナから声が掛けられた。

早朝から昼までのシフトと言っていたから、おそらくギリギリのタイミングだったかも知れない。



「お昼休憩ですか?私ももうすぐで終業時間ですから、よかったら昼食ランチでも一緒にどうですか?」



ギンジがあまりにも早く出てきた為、作業を中断して出て来たと思われたようだ。

それにしても、女性であるアンナの方から食事に誘われるとはギンジも少し驚いた。



「ギンジさんは、王都に来てまだ浅いでしょう?この前にも言ったと思いますが、少しでも案内出来たらいいなと思ってたんですよ!」



そう言えば初めてあった時、魔動車の中でそんな事を言ってた覚えがある。

社交辞令と思っていたのだが…まぁ、そういう事ならお言葉に甘えるのも悪くない。


ただ『案内=美味しい食事を出す店で昼食ランチ』というのが、またアンナらしいというか何というか…ああ、3位だなと。



「そういう事なら、わかった。アンナが終わるまで待っているよ」



そう言ってギンジは、依頼掲示板クエストボードとは反対側に併設された待機者用の長椅子に座ってアンナを待つ。


っと、そのまえに。



「…ギンジさん、これは?」

「ん?…これは、角兎ホーンラビットの角だが」



アンナの前に、箱詰めされた角を出した。



「…ああ!先に角だけ切り落としたんですね、いや〜かなりの量ですねぇ」

「全部で425本、少し欠けているのもあるが…まぁ、問題は無いだろう?」



よんひゃ…と、少し驚くアンナ。



「何でそんなに驚いている、討伐数は朝に報告しただろう?」

「ああ、いえ。例え角だけでも、400本以上あればもっと時間が掛かるものですから」



ギンジさんは、解体の手際が良いんですねー。

などと、額から汗を垂らしながら褒めるアンナ。



「…いや。もう全羽、解体まで終わったんだが」



角だけで無く、解体バラシまで終わった事を告げるギンジ。

やっちまった、とアンナ以上の焦りを見せる。



「……………ふぇぇぇ」

「だから、なんだその気の抜けた声は…」



無理もないと分かりつつも、一応はツッコんでおくギンジであった。

ブクマ&評価ありがとうございます。

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