べセド村に着きました。
夜勤明けの勢い、パート2!
訳:2話目の投稿、前話も読んでね
スマホからの投稿
”バス”に乗ること約2時間、最寄りの街から徒歩で1時間。
アンナの情報通りの所に、べセド村はあった。
寂れた…とまではいかないが、王都とは比べるもなく最寄りの街と比べてもかなり小さな村だった。
村を囲う柵は腰くらいまでの高さで、随分と年季が入っているように思える。
しかし杭の1本1本が人間の足程の太さがあり、まだまだ現役だと言うことが伺い知れた。
「…これなら、角兎の襲撃にも耐えられると思うが」
村に着いて早々、柵の様子を確認するギンジ。
撫でたり、ペシペシと軽く叩いたりしてみる。
どうやら、気になった物は手で触って確認するのが癖のようだ。
「…あんた、この村になんのようだ?」
そんなギンジの様子を、訝しげに眺めていた衛兵。
いつまで経っても自分の居る入り口に近づいて来ないので、遂に痺れを切らし衛兵の方から声を掛けてきた。
「…ああ、すまない。組合からの依頼を受けて来た、ギンジ・イチノセと言う」
そう言って、依頼書と組合証を衛兵に見せる。
すると衛兵の顔に、安堵の表情が浮かぶのがわかった。
「おお!角兎の討伐に来てくれたのか、いや助かるよ!」
「…?」
昨日の夜に依頼を出して、今日の昼にギンジが着いた。
確かに【至急】の条件は果たしたので、衛兵が喜びようも理解は出来る。
しかし、どうにも喜びのニュアンスが違うようにギンジは感じた。
まるで”本当に来てもらえるとは、思って無かった”とでも言いたげだ。
何やら雲行きが怪しくなってきたか?と、気を引き締めるギンジ。
その後軽く歓迎され、衛兵に案内されて依頼主である村長の家へと向かう事にした。
ーーー
道すがら、衛兵から軽く情報収集しておく。
聞けばこの衛兵、どうやら村長の息子らしい。
このような小さな村では衛兵を雇う余裕も無く、村の若衆が持ち回りで衛兵を行っているらしい。
それでギンジは納得した。
装備が随分とくたびれていたのが疑問だったのだ、村の共有物なのだろう。
着回し使い回しで使っていれば、そのボロさにも説明がつくと言うものだ。
角兎の発生状況、被害が起きた時間帯。
規模、対策、現状。
短い時間ではあったが、得られるだけの情報を得てから村長の家へと到着した。
「おお…!まさか、本当に来て頂けるとは!」
開口一番に、そんな事を言う村長。
まるで”思ってそう”どころか、口に出して言われるとそれはもう確定事項だ。
そんな腹芸の苦手そうな村長に、ギンジも思わず苦笑いだ。
しかし…そう思ってしまう理由は、先程村長の息子に聞いて既に理解している。
王都からべセド村まで来て、角兎を討伐するには費用対効果がうんちゃらかんちゃら。
要するに、報酬が安すぎて誰も来ないと思ってた…だ。
事実、ギンジも角の採取と並行で受けられなければ断っていたかもしれないのだ。
村長の予想は、あながち間違えてないだろう。
ならば報酬を増額すれば、というわけにもいかない。
その理由は…
「早速で申し訳ないが、畑へ案内してよろしいかの?」
組合員が来てくれた事によって、気が逸っているのだろう。
挨拶もそこそこに、村長は家を出てギンジを畑へと連れて行くことにした。
ーーー
「どうですかの?何とかなりますか?」
「…話しには聞いていたが、これは酷い」
村長に連れられてやってきたそこは、大惨事という以外の表現が思いつかない。
既に柵が壊され、食い荒らされてしまった畑が1枚。
他の畑は無事では有るが、その四方八方から角兎が体当たりで壊しに掛かっている。
柵の中に人が入り、鍬や鋤などを振り回し追い払って居るが…焼け石に水だ。
周囲ぐるりと囲まれていて、畑1枚に対して40〜50羽くらいだろうか?
…そう、1枚に対してだ。
全部で10枚近く有る畑、全てにそれくらいずつの角兎がいる。
先程の、報酬の増額が不可能な理由。
それが、この圧倒的な数だった。
目算で多く見積もって500羽、かける500ウェンで250,000ウェン。
これがこの村に出せる、限界ギリギリの金額だったのだ。
これ以上になると財政が破綻する、とまでは言わないが。
これからの時期、収穫に人を雇ったりで金を使う。
収穫が終われば、閑農期に入るため少しでも多くの金を残して置かなければならない。
王都では無いのだ、30,000ウェンも有れば1家族1月暮らしてゆける。
つまり250,000ウェンと言うのは、この村にとって大金であった。
「無理は言いませんが…出来るだけ、数を減らして頂けると助かります」
とはいえ、それは全滅させた時の金額。
村としては、6割〜7割でも減らして貰えると万々歳。
残りは若衆でも対応出来るし、報酬もそこまで払う必要も無い。
そもそも、たった1人で来たギンジにそこまで期待もしていない。
村にとって、1番理想的な形で終わりそうだと。
村長は内心、ほくそ笑んでいただろう。
「…あー」
しかし、そんな村長の考えを裏切るようにギンジは声を掛けた。
「…別に、全て倒してしまって構わないんでしょう?」
収納から戦槌を取り出し、そのまま角兎に向かって駆け出した。
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