度肝を抜きました。
時間のあるときに更新するスタイル。
訳:本日2話目の投稿です、前話も見てね。
翌日、開門の時間と同時に王都へと入るギンジ。
先ず向かうは、宿屋だ。
昨日既に宿泊料金を払ってしまっていたのだが、結局利用していないとの事で返金出来ないか確認する為だ。
結果は、ムリとの事。
使用したかどうかというよりも、部屋を抑えて他の客が利用出来なかったからという理由。
もしそこの部屋が空いていれば他の客が利用出来た、でもそうじゃなくてギンジの為に空けといたのだからその分の料金は発生すると。
まぁ、言われてみれば納得だ。
ギンジもそりゃそうか、と新たに今日の宿泊費を払って今晩の宿を押さえておく。
…実際はこんな安宿に客が殺到する訳もなく、常に半分くらいは空室だと言うことはこの際関係無いのだ。
ーーー
次に向かうのは組合、開門して数時間経った今なら組合員の数も少なくなって来ているからだ。
一番混む時間帯は、大門の開門前と閉門後すぐ。
採取や討伐など外へと出る場合、開門ごすぐに出て閉門ギリギリに帰ってくるのが組合員達のルーティーン。
王都内の雑用依頼を受ける人達だけが、この時間に組合員へとやってくるのだ。
「あ、ギンジさん!おはようございます!」
組合の扉を開け、中へ入るとすぐにアンナから声が掛かる。
ギンジは軽く手を上げる感じに挨拶をし、アンナの元へと向かった。
「おはよう」
「おはようございます!今日もまずは納品からですか?」
ああ、と小さく頷き”収納”から回復薬を取り出していくギンジ。
昨日同様に100本を取り出し、アンナへと手渡した。
ちなみに明記してはいなかったのだが…回復薬の瓶は試験管ほどの大きさである為、100本纏めて出した所でカウンターが塞がることはない。
フラスコタイプで無くて、本当によかった。
「はい、それでは回復薬100本の納品で80,000ウェンの報酬ですね」
ちなみに薬草の方は、もう納品しないでおく。
報酬が段違いという事もあるが、そもそも組合お抱えの薬師の腕が悪すぎる。
知識も無いし、ただ調合の技能を持ってる”だけ”だったのだ。
アンナが見たことないと言ってた、ギンジの回復薬。
実は、世間一般に取り扱われているとの事。
これはギンジがアンナに説明しているとき、アンナの隣に居た受付嬢が教えてくれた。
ただ、薬師会の専売であり少々高価で中々気軽には購入出来ないらしい。
その為、組合員に安く販売する目的で…はぐれ薬師(薬師会に入れなかった調合持ち)を、組合で雇っていたのだとか。
その為、調合レシピは自己流。
技能のおかげで回復効果はあったが、ギンジの物と比べると段違いの物であった。
昨日レシピは公開しておいたが、果たしてこれからどれくらい腕が上がることやら…といった事情である。
「所でギンジさん、少々お願いが…」
報酬を受け取り、収納にしまっているとアンナから気まずそうに声が掛かる。
「どうした?」
「実は、昨日納品して頂いた回復薬が既に売り切れてしまって…」
確か、販売価格が1,000ウェンだったか。
1人10本買っても10,000ウェン、その値段なら確かにすぐにでも完売するだろう。
「それで無理を言いますけど…納品数を増やして貰えませんか?」
「なるほど、わかった」
昨日レシピを公開したとはいえ、お抱えの薬師が成長するまでまだまだ時間がかかるだろう。
逆に言えば、成長してしまえば価値が下がるとも言える。
今のうちに多数を納品しておいた方が、ギンジ的にも得だろう。
「で、いくつほしい?」
「出来れば500…いや、300でも有ればギリギリ…」
それでもギリギリなのか、とギンジは苦笑いする。
「ほんと無理を言いますけど…」
昨日の時点で200本持ってると言ったから、おそらく1日200本が限界だと思っているのだろう。
アンナの表情は、心苦しくおもっているのがありありと見える。
しかし…
「いや、別に無理でも何でも無い」
そう言って、ギンジは収納から1つの樽を取り出した。
「…え?」
「1000本分ある。」
1本25mLの1000本分で25L。
酒などを貯蔵している大樽に比べると遥かに小さいが、それでもそれなりに大きさのある樽。
床の上に置いた時にした、ドスン!と言う音が組合内に響き渡る。
それなりに閑散としていた組合内だが、それでもそこそこ居た組合員や職員達がギンジへと視線を向けた。
「…何だあれ?」
「カウンターの上見て!回復薬よ!」
「はぁ?何本分だよ!?」
「まさか、今まで造り置きしてたとか。だったら効果も半減だが…」
「彼、数日前に成人の儀を行ったばかりよ?」
「なんと?!ならばこの数日で調合を発現させて、この僅かな時間で造り上げたというのか?!」
組合員や職員が、ヒソヒソと話しているのが聞こえる。
レシピは公開したはずなんだが、纏めて造る方法もそれなら簡単なんだけどな?
と、ギンジは首を傾げてしまう。
まぁ、まだ全員にまで知れ渡って無いのだろう…と納得し、アンナへと問いかける。
「毎日これくらいは納品出来るけど、どうする?」
「へ?あ、ひゃい!これだけ有れば問題ありますん!」
ありますん?どっちだ?
等と、アンナが噛んだだけなのに真面目に悩むギンジ。
コクコクと頷いてるアンナを見れば、まぁ大丈夫だろうと納得しておく。
これで納品は全て終わり、次は依頼の確認だ。
「アンナ、悪いけど次は討伐依頼を受けたい。何か見繕ってくれないか?」
「は、はい!分かりました!…あれ?ギンジさん、何か戦闘技能を覚えたんですか?」
勢いで返事したあと、冷静に問い返すアンナ。
「ああ、これだ。悪いが声に出さずに見てくれ」
そうやって【称号】の所だけ隠して、アンナへ”身分証明”をみせる。
「……………」
「アンナ…?」
身分証明を見て固まるアンナ、まぁ無理も無いかと軽く声を掛けたギンジ。
「……………ふぇぇぇ」
「何だその気の抜けた声は」
声を出したらいけないと思ったのか、必死に抑えた結果。
小さく気の抜けた声で驚くという、器用な真似をするアンナだった。
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