お礼を貰いました
スマホからの投稿です
ブクマ有難うございます
18/7/19改稿
主人公の名前を少し変更
「それはの…」
事情を説明しようとして、途中で言葉を切るリリィ。
自らのお腹から”くぅ”と、可愛らしい音が聞こえて来たからだ。
表情を変える事は無かったが、色白の肌が薄っすらと赤く染まっていく。
「………っ!」
「ああ、忘れてたな」
傷の回復には体力だけじゃなく、熱量も消費する。
つまりどういう事かと言うと、もの凄くお腹が空くのだ。
ギンジもそれは理解していて、お腹が鳴るのは当たり前の事だと別に気にもしない。
だがそれを聞かれて恥ずかしいと思ってしまうのは、幼いながらリリィも女性だからということか。
「ちょっと待ってくれ、後少しで出来上がるから」
そう言って、かまどに向き直るギンジ。
その上には鍋が置かれており、何かしらを作っているのが目にとれる。
また”薬液”を作っているのかと思いきや、そこに白っぽい粉と白い液体を順次投入していく。
暫くかき混ぜ、たまに掬って口に入れては白と黒の粉を入れていく。
「…こんなもんか」
そう呟いて”収納”から深みの有る皿を取りだし、鍋から掬った液体を注いでいく。
リリィの正面に”箱”を出し、その上に皿を置いた。
「良かったら食ってくれ、味もそこそこイケるはずだ」
その皿の隣に”収納”から取り出した木匙とパンを2つ置く、どうやらギンジは”シチュー”を作っていたようだ。
「う、うむ。すまない、遠慮なく頂こう」
そう言ってパンを齧り、木匙でシチューを掬って口へと運ぶ。
「ーーーっ!!」
”シチュー”を口に入れた途端、目を見開くリリィ。
「美味い!こんな美味いシチューは初めてじゃ!」
その言葉に薄く笑みを浮かべるギンジ、どうやら気に入って貰えた様だと次に自分の分も注いでいく。
同じ様に”箱”を出して皿を置く、シチューの入った鍋は”収納”へと仕舞いこんだ。
ーーーーー
食事終えた二人は、食後の”コーヒー”を飲んでいる。
「うむ、これも美味い」
「そうか、それは良かった」
先程作った”シチュー”も、今飲んでいる”コーヒー”も母から教わった物。
『調合も料理も似たようなものよ、素材(食材)を加工(調理)して成分(旨味)を抽出する。そして使用する(食べる)人の為にあれこれ工夫して、少しでも効果を良く(美味しく)するの』
母は良くそう言っていた、そして確かに美味かったと記憶している。
「このコーヒー、単一の豆では無いな?」
「…ああ、自分で”ブレンド”した奴だ」
うむうむと頷きながらコーヒーを呷るリリィ、先程の”回復薬”と同じ感じだ。
「ギン坊は、中々に優秀な薬師の様じゃな」
「ギン…坊?あ、いや。オレは薬師じゃ無い」
自分よりも年下のリリィに、坊と呼ばれるのは違和感が半端じゃない。
しかしそれを言うよりも先に、リリィの勘違いを解いて置かなければと判断した。
リリィはジッとギンジを見つめ、首を傾げて言う。
「どう見ても薬師じゃろ?所持スキル…じゃ無くて、これだけの調合の腕があるんじゃし」
「全て母から教わった物で、別に本職という訳じゃ無い」
「ふむ、そうなのか?勿体無いの、ギン坊の薬なら飛ぶように売れそうじゃが」
かなり持ち上げてくるリリィの言葉に軽く苦笑いを浮かべ、無言で首を振るギンジ。
「所で、さっきの続きだが。一体何があったんだ?」
「おお、そうじゃった!…いやなに、ちょっとしたヘマをうっての。這う這うの体で逃げて来たんじゃが、豚頭と遭遇して…」
どうやら、傷自体は豚頭に襲われる前の物だったようだ。
そう言えば擦過傷はともかく、鈍器しか持ってない豚頭に襲われて切創が出来る筈もない。
「豚頭如き、我の敵では無い。焼豚にでもしてやろうと思ったんじゃが、狙いを外してしまっての。そのまま逃してしまった所で、意識が飛んでしもうた」
「ってことは、あの豚頭はリリィが…」
そこまで言って、ふと気づく。
”焼豚にしてやろうと”と言ってた様に、豚頭の半身は何かに焼かれた様に爛れていた。
それをリリィが行ったのだとしたら、一体どうやって?
こんな小柄な少女でも豚頭を焼く方法、それは”魔術”だろう。
つまり、見た目は幼くとも”最低”ギンジと同じ15歳の成人なのだ。
「おお、あの豚頭はギン坊の方へと逃げたのか。それは迷惑をかけたの…ん?ギン坊は戦闘も出来るのか?」
「いや、半死半生だったから大した手間じゃなかった。だがどちらかと言うと、戦闘の方が得意だ」
”祝福”で得たのは【採取】であったが、元々は魔獣の討伐等をこなすつもりでそれなりに鍛えていた。
幼い頃に父から基本を教わり、今に至るまで繰り返し修練を積んでいる。
「ふむ、ギン坊は多才じゃの。どちらかと言うと、採取や調合寄りだとは思うが」
「…まあ、そうかもしれないな。それよりも、オレとしてはリリィが成人していた事の方が驚きなんだが」
それを聞いてリリィは、ニヤリと笑う。
「こう見えて、ギン坊よりかなり年上じゃぞ?まぁ、詳しい年齢は乙女の秘密じゃが」
「…かなり年上なんだったら、乙女じゃ無いだろう」
ギンの言葉に、ムッとした表情を浮かべる。
「女はいくつになっても乙女じゃよ、それにまだ我は未通女じゃしの」
「いや、そんな暴露はしなくていいから」
「…言葉の綾じゃ、忘れてくれ」
「いや、オレの方こそ失礼な事を言ってすまなかった」
余計な事を口走ってしまったリリィは、少し頬を染めてそっぽを向く。
ギンジとしても深く追及するつもりもないので、失礼を詫びてから話を切った。
「で、じゃ。助けてくれてた礼は、何がいいかの?」
「ん?礼なら受け取ったが?」
「言葉だけじゃあ、命の対価にしちゃ軽すぎるわい。何か欲しい物はあるか?」
それを聞いて、何やら思案気な表情を浮かべるギンジ。
何か見返りを求めてた訳でも無く、ただ無意識に助けただけなのだ。
それこそ、有難うの一言だけでも充分に思える。
「そうじゃ、残念ながら金銭は無理じゃ。手持ちが無いんでの、後日になっても良いなら構わんが」
「いや、別にお金はいらない。人の命と等価になるのに金銭はあり得ないからな、元から考えてない」
「ほう、若いのに中々…」
これも母からの教えだ、人命救助のお礼にお金を受け取ると言う事は『命に値段をつける』事と同義だと。
そうすると、必然的に『貧乏人には価値が低く、金持ちの価値は高い』と思うようになる。
命に貴賎など無いのだ、と母は言う。
ギンジもこれを全面的に肯定するつもりは無いが、とにかく人命救助では金銭を受け取らないとだけは決意していた。
その後暫く逡巡していると、更にリリィが口を開く。
「何もないなら、我の純潔を捧げようか?」
「…ご遠慮します」
「なんじゃ、つまらんのう…」
少し時間を置いて、キッパリと断るギンジ。
一拍開けたのは別に悩んだとかではなく、即答するのも失礼かという配慮。
リリィもそれを理解したのか、からかう材料を失いつまらなさそうに不貞腐れる。
「あー…じゃあ、魔術を教えて欲しい。とか」
「なんじゃ、そんな簡単なもので良いのか?じゃあ、それと我の純潔を…」
「結構です」
「…むぅ」
2度目は、食い気味に拒否しておく。
言葉を遮られ、頬をふくらませるリリィ。
苦笑いを浮かべるギンジ、ただの冗談だと分かっているからこその掛け合いである。
「まぁ、よい。その話は追々、の?…それじゃあ、右手を出すのじゃ」
「追々も無く、終わりだ。右手…こうか?」
差し出されたリリィの右手に、重ねる様に差し出すギンジ。
「今のままじゃあ、一生掛かっても使えんからの。ちょっと細工するのじゃ、集中しておけの」
「細工?って………っ?!」
少し首を傾げたギンジ。
するとその直後、右手を通じてリリィからギンジの体内に何かが送りこまれる。
急激に入りこんだそれは、ギンジの身体中を駆け回る。
ぐるぐると体内で蠢く感触に、吐き気を覚えた。
「っっっっっっっ!!!」
「ほう、まだ耐えれるか。思ってたよりも才能があるの、ならば遠慮なく」
リリィがそう言うと、体内の蠢きは更に加速する。
「…あ!…あ!…あ!」
「ほれ、もうちょっとじゃ。男なら根性を見せるんじゃ」
ギンジが堪えきれずに奇声を発し始めると、リリィは逆に嬉々として送りこむ量を増やしていく。
恍惚とした表情に、舌をペロリと出すその姿はまさにドS。
「ーーーーーー!!」
そして限界を迎えたギンジは、そのまま意識を手放していった。
その間際で「ふむ、やりすぎてしまったの」とか言う声と同時に、何かの声が頭に響いた気がした。
『スキル【魔力操作】を取得しました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅡになりました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅢになりました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅣになりました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅤになりました、派生スキル【気力操作】を取得します』
『スキル【魔力操作】がレベルⅥになりました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅦになりました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅧになりました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅨになりました』
『スキル【魔力操作】がレベルⅩになりました、上位派生スキル【魔術】を取得します』
『汎用スキルがカウントストップいたしました、制限を解除いたします』
『スキル【魔力操作】の制限解除、スキルの【能動使用】が可能になりました』
上位派生について
この世界のスキルは上から
特殊スキル
↑
[越えられない壁]
↑
複合スキル
↑
[果てしない壁]
↑
職業スキル
↑
技術スキル
↑
汎用スキル
と、なっています。
祝福で得た技術スキルがカンストし、職業スキルへと派生する事は常識で。
複合スキルは職業スキルを2つⅤにしなければいけないので、あまり知られていない。
そして、汎用スキルはカンストした例が無いので全くの情報が無い。
制限解除は汎用スキルがカンストした時だけ、一番低いランク故のサービスみたいな感じです。