治療しました
スマホからの投稿です
ブクマ有難うございます
18/7/19改稿
主人公の名前を少し変更
少女の側に寄り、ギンジはホッと胸を撫で下ろした。
意識は無い様だが、額からは玉の様な汗が流れ落ち、荒々しく息を吐き苦悶の表情を浮かべていた。
「生きてたか、間に合って良かった」
小さくそう呟き、しゃがみこんで少女に”浄化”をかける。
服に染み込んでいた血の赤が、みるみる消えていき傷口がどこにあるのかがはっきりと見えた。
「切創と擦過傷、合わせて20はある。どんな目に遭ったらここまで傷が出来るんだ…」
先ずは一番大きな切創に”回復薬”をかける。
飲み易く調整をしている為、外傷には効果が少ないのだが、それでも”薬液”の殺菌・消毒効果は僅かに残っている。
破傷風や化膿を防ぐ為にも、綺麗に傷口を洗う必要が有る。
別に”浄化”でも構わないのだが、全ての傷口に”浄化”を使っていては、さすがにギンジの魔力が保たない。
ちなみに、原液の”薬液”を傷口にかけた場合、激痛が奔り心不全を起こす可能性が有るので注意だ。
洗い終えたら”軟膏”を指で掬い、傷口に埋め込む様にして塗っていく。
その後”解熱”に使える葉を当て、包帯を巻いて剥がれない様に固定する。
”テープ”が有ればそれで代用しても良いのだが、ギンジは包帯を常に持ち歩いて居るので何も問題は無い。
同じ様な処置を全ての傷に施す、因みに服は着せたままだったので、服の上から包帯を巻かれている少女。
男が相手ならば何も気にせず脱がせて処置したのだが、見た目が幼いとは言え女性なのだ、この方が後々の事を考えて最良だと判断した。
一応、服の繊維などが傷口に癒着しない様に細心の注意を払ったので、問題は無いはずだ。
…多分。
全ての処置が終わる頃には、苦しそうだった表情も穏やかなものになり、呼吸も随分と落ち着いて来た。
「さて、と」
一段落して、この後の事を考える。
ここから一番近いのは王都であり、この子も恐らく王都に住んでいるのだろう。
担いで連れて帰っても良いのだが、歩いて1時間はかかる道程を、少女に負担を掛けずに進める自信は無い。
それで傷口が開く様な事になれば、それこそ本末転倒だ。
”時計”を確認すると、門限までは後2時間半。
「乗りかかった船だ。放置していくわけにも行かないし、このまま意識が戻るのを待つか」
日も暮れ始めて、少し肌寒く感じる。
”収納”から予備のローブを取りだし、横になっている少女へと被せる。
少し離れた所で、先程のような簡易的なかまどを組み、暖をとるギンジであった。
ーーーーー
パチっと言う、木の爆ぜる音が静かな森の中で鳴り響く。
「………む?」
「ああ…起きたか」
あれから暫く時間が経ち、もう辺りはすっかりと暗くなってしまった。
「…取り敢えず、これでも飲め」
そう言って”回復薬”を差し出す、それを無言で受け取りジッとギンジを見つめる少女。
殆ど白と言っても良いくらいに色の抜けた髪に、透き通る様な蒼い瞳。
着ている服も白色だからか、あまり目立たないが肌の色もやや白い。
大きくなれば”美人”になるのが確約されている顔つき。
が、今はまだ色々と未成熟でどちらかと言うと”可愛らしい”と言うのが相応しい。
暫く沈黙のまま見つめ合い、最初に声を出したのは少女の方だった。
「これは貴様がやったのか?」
「…え?あ、ああ。そうだ」
見た目に相応しい声色で、見た目に相応しくない口調で話しだした少女。
自らの身体に目を落とし、巻かれた包帯を指差す。
「ふむ。傷口を圧迫しない程度に、きつく巻かれた包帯。見えはせんが…この感じだともう傷口は塞がっておるか、薬の質も良いの。オランを手抜きせず、丁寧に練り上げてる証拠じゃ。そのかまどは出血して体温が下がっているのを見越して、緩やかに暖がとれる様に距離を調整しておるな。それに、傷口が修復された際奪われた体力を補填する為の回復薬は…」
そこまで矢継ぎ早に喋ると”回復薬”の瓶を開け、それを一気に呷る。
「うむ、美味い。ちゃんとヒルルカの薬効も抽出できておるし、魔水との割合も絶妙じゃ。これ以上少なければ効果は期待出来んし、多すぎれば飲み辛い」
うむうむと頷きながら”回復薬”を飲む少女、ギンジはその一連の様子に絶句した。
口調に…と言うのももちろんだが、それ以上に少女の知識量にだ。
少女が挙げた事の全て、幼い頃に母から教わって特に注意を払っていたものだった。
「君は一体…」
「おお、そう言えば礼がまだじゃった。危ない所、助けてくれてありがとの。我はリリィ…じゃ、気安く呼んでくれて構わんぞ」
見た目に相応しく無い口調でそう言い、見た目に相応しい笑顔を浮かべて右手を差し出してきた。
「あ、ああ。オレはギンジ・イチノセだ、別に大した事はしてない。気にしなくていいぞ、リリィ…で良いのか?」
そう言ってギンジも右手を差し出し、リリィの手を握る。
うむ。と頷くリリィと握手を終え、ギンジはリリィに何故こんな所で倒れて居たのかを尋ねた。
薬草の名前は適当です、今後出てくる予定も今のところ有りません。
名前を考えるのが苦手なので、基本その辺りはアバウトです。
なので”薬液”が”ヒルルカ濃縮液”とかに変わる事も有りません。
でも”浄化”が浄化になったり”着火”が着火になったりは有るかもしれません。
何かそっちの方がシックリくれば、ですけども。