ファンタジーとは
小説家になろう(以下なろう)では、当然のごとくファンタジー小説で溢れています。ファンタジーは昔から存在し、人気のある要素でありますから、ファンタジーが求められたり、もてはやされたりすることを異常というつもりは毛頭ありません。
しかし、中には「これはファンタジーなのか?」と首を傾げたくなる作品もあります。
例えば、舞台は中世ヨーロッパのような場所、主人公も日本人ではない、カタカナの名前で容姿は金髪に碧眼、王様や貴族、騎士やお姫様が出てくる描写がある、というだけのもの。
あくまでも、その世界のとりとめのない日常を描いていて、魔女や妖精、ゴブリンやペガサスなど、この世に存在しない生き物や、魔法などの不思議な存在は出てこないこともあります。
別に、その手のわかりやすい異世界感あふれる生き物を絶対に登場させろというわけではありませんが、「なぜその作品にファンタジーというタグをつける必要があったのか?」と思えるものもあるのは事実です。
「中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしたことを除けば、現実世界で起こっても不思議ではない話」と言っても通じてしまうような、もっと言えば、日本の田舎という設定でも十分書けるのでは、という内容であってもファンタジー扱いなのです。
場所や名前が外国っぽいだけで、ここではない別の世界という雰囲気や描写が特にない作品なのに、ファンタジーとして受け入れられているのです。
なろうに、「中世ヨーロッパ風の場所や設定を書いたらファンタジーというタグをつけてもいい」というような暗黙の了解がある気がしてなりません。
しかし、中には「ファンタジータグを付けないと読んですらもらえない!」というお悩みを抱えている作者さんもいることは確かです。
なろうでは、異世界転生・転移が主に人気のジャンルであり、それと同じくらいのレベルでファンタジーも求められる要素であります。
「異世界=ファンタジー」くらいの認識です。
さらにこの異世界というのも、中世のヨーロッパ、さらに言えば「ゲームっぽい世界」で限定されています。ゲームをやらなくても、ゲームのCMなら見たことがあると言う方もいらっしゃるでしょう。
ゲームのCMはたいてい、なぜか中世のヨーロッパ風の世界です。
これは単純に「剣や騎士がカッコいいから」とか、「魔法使いを登場させたい、魔法使いと言えば西洋だ」とか、そういう理由があげられると思います。また、日本人からみれば、外国、特に西洋と呼ばれる国の言葉の響きは日本語にはないカッコよさや異世界感があるからだとも思います。
和製ファンタジーもあるにはあるのでしょうが、ヨーロッパ風に比べてあまり見ない気がします。日本人にとって和風は身近過ぎて異世界感に欠けるのかもしれません。
それでも、「ファンタジー」のタグを付けるのなら、その世界の特徴をファンタジーっぽくしてみればいいと思います。それなら、「こういうシーンを書きたかったから異世界という舞台が必要だったんです、ファンタジータグを付けたんです」という説得力が増します。
しかし、そうは言ってもどうやってファンタジーの要素を出せばいいのかと、お悩みの人もいらっしゃることでしょう。このお悩みはわりと簡単に解決できます。
簡単に言ってしまえば、「普通の世界」に「特別な何か」を一つでも入れたらいいのです。
ちなみに、「普通の世界」とは、私たちの日常となんら変わらないものです。
例えば、学校に行くとか、レストランがあって食事ができるとか、その世界の人も朝に仕事をし、夜に眠るというようなものです。要は自然に「ああ、これは私も現実世界でやっているな」と思えるようなことです。
なので、中世ヨーロッパ風の世界で人が市場で買い物をしているという、この世界にもある日常の、普通の生活と呼べるシーンを書き、それと同じく、「これは現実では起こらないだろうな」という要素を一つ、なんでもいいので盛り込んでみると、それだけでファンタジー要素が強まります。
例えば、その世界では妖精をペットのように飼うことが出来て、主人公が妖精を欲しがるとか、魔法使いがアイドルのように人気で、魔法使いが通っただけ若い女性が歓喜の声を上げるとか、その世界では毒の雨が降り、それにあたると皮膚病を患ってしまうから、その国の人は全員常に傘を持ち歩いている、などです。
さらに、その世界の不思議と主人公を自然に絡ませられたら完璧だと思います。上の例にあげた、妖精が欲しい主人公が妖精を手に入れるために、高給だからという理由でこれまでに経験したことのない職業に就いたり、妖精の卵を見つけて、それをふ化させようと奮闘したりする、などです。
これら以外でも、「これは現実世界では起こらないだろうな」という事件が起こったり、現実にはいない生き物を登場させたりしてもいいかと思います。
ほんのちょっとのプラスで、ファンタジー要素が出てきますので、今書いている小説にファンタジー要素が不足しているように感じる人は、なにか不思議なものや、現実では起こりえないことを盛り込んでみましょう。