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巡礼編2「栽培~プラントマスター」

「…まず、私の能力について教えるね」

サクラはそう言うと、屈んで細い手で地面を撫でる。雪が手に付いたが本人は全く気にしていないようだ。

そこから小さな花が芽吹き、咲いた。

どこにでも生えている小さな花だ。

タンポポという名の。

「そして…これが二番目…」

サクラは私の胸を指差した。

「…?」何も起こらない。

「弱点を…知ることが出来る…」

あぁ、そっちか。

てっきり指差された瞬間に何かが起きるのかと思ったが…。

でもまぁ空間制御能力者は心臓じゃなくて他の場所に弱点がある場合が多いからな…そう考えると便利な能力か。

「三番目…」

サクラは空を指差した。

突然、雪原に雪ではなく雨が降りだす。

上を見るが、曇ひとつない青空だ。

「雨を降らせることが出来るんだ」

こくりとサクラは頷いた。

植物による空間制御、弱点検索、そして招雨がサクラの能力ということか。サクラが両手を上げると、雨は突然降りやんだ。

「…栽培能力に関しては貴方と似ている。色んなイメージを作ることは出来るけど…基本的に植物だから炎に弱いし、大きな物は特にだけど地面から離すと持ち運ぶことも難しい…例外は果実を刃とする場合」

サクラは硬質化したヒイラギの葉のようなナイフを見せる。よく見ると小さな茎がサクラの肌に刺さっていた。

「私や地面から離しても平気な植物はこのくらいが限度…他は思い通りの形にならなかったり、途中で枯れちゃう」

そのあと左手に赤いナイフを召喚して見せた。よく見ると果実のヘタが付いていて、彼女の左手薬指が茶色く変色していた。

「基本的に果実能力は使わない…消耗が激しくて私自身が枯れてしまうから」

「なるほど、確かに…」

「私自身も植物になった…空間制御能力者はそのものを操れる代わりに自分もそのものと化してしまうから…」

「なかなか…不便そうだね」

「そうでもないよ。私は日光と水さえあれば生きていける…でもエリィは、この環境でしか生きていけないの…」

確かエリィは氷を操るはず…ということは彼女の身体は冷気そのもの、ということになる。

「…」私は頷いた。

「じゃあ、今度は貴方の番」

そう言うなりサクラが走り出す。

反射的に大盾を用意して、サクラのナイフの投擲攻撃を避ける。

「じゃあ…遠慮なく行くかな…!」

私は小さなリボルバー銃を取り出すと、設置した大盾から飛び出し、サクラにめがけまず三発撃ち込む。

そして大盾に隠れつつ気配を探るが…

…命中した気配がした。

当たった…?いや、そんな筈はない!

さっきのは牽制射撃だ。サクラのあの動きなら当然避けられるはず。

チラリと様子を見ると、そこには花びらを散らせた巨大な花が咲いていた。

変わり身…?

まずい…サクラを見失った。

拡散能力にはあちらこちらに気配があった。一体なぜ…。

「そうか…」私は呟いた。

彼女は自身が植物である。あらゆる植物には彼女の気配が宿っているのだ。

さっき降っていた雨が地面の雪を溶かし、それにより露出したあちこちの地面から色とりどりの草や花が顔を出している。

つまりサクラを捉えるには、目視で確認する他は無い。

とりあえず一度この辺りを燃やして…

手榴弾を召喚しながら私はそう考えた。

「…分かったよ、貴方の二番目の能力」

突然左の耳元で声がした。慌てて銃を向けるがそこには誰もいない。

突然に右側からサクラが現れて柊ナイフを首筋に当てられる。私の左耳から何かの枝が抜けて地面に落ちた。

「…」私は両手を上げる「全く読めない動きだね…それで私の能力って?」

「その前に貴方のメインの能力は、見たところ粒子を拡散させて索敵に使い、集めて物質を再現して、粒子そのものを爆発させて消費しながら戦ってる?」

「よくさっきのでそこまで分かるね…」

「ずっと見てたから」サクラは私の懐からベッドに繋がれていた時に入れたと思われる桜の花を取り出して見せた。

ワンピースの胸ポケットに差されていた枝つきの小さな桜の花である。

…うわぁ、思わぬ伏兵だった…

なるほど、私の行動の全てがサクラに筒抜けだった…ずっと彼女は私の背後にいて、私の戦い方を観戦していた、と。

「…ははは…参ったなぁ…」

「人の命を武器に変えるというより、人が持っている魔力を放出する物質を集めて…時には人から奪っていた?」

「そうだよ」私はそう言ってはっと気づいた。「…ってまさか私のB粒子って…あの星が降って来た日の…あの星の…?」

「…星が降って来た日?」

「私達能力者が初めて生まれた日の事だよ。それまでは私も、学校に行ってたの」

「がっ…こう?買い物…じゃなくて…」

「あぁ、学校っていうのは私みたいな年の子供を集めて、皆で勉学に励む場所…って言ったら分かる?」

「…と言うことは大きな図書館が…」

「一応あるけれど、先生っていう人が勉強を教えてくれるんだ。ま、私は勉強嫌いだったから、たまに授業をさぼったりして一人で屋上で星を見てたかな…」

「うー…」サクラは首を傾げた。「あ…学校については後で教えてね。ええと話を戻すと…そう、貴方の能力は恐らく魔力の源であるギルドストーン…それを構成する物質を操る能力だと思う」

「だから私がギルドストーンか…」

「バビロンの時に貴方がギルドストーンを取り込んだ事によって、貴方は完全体になった…サブ能力と言うには難しいかも知れないけれど、もう人のエネルギーを略奪しなくても、時間で魔力が回復していくようになった…と推測する」

「じゃあ私、もう食べなくていいんだ」

しかし…眠る直前、私はあらゆる能力者を食べることに快楽を得ていた…。

我ながら恐ろしい。

星が降ったあの日の、狂気に満ちたルイーゼとしての感情はもう捨てなければ。

だがもう人を食べる必要が無くなった。

ひとまずは安心だな。

「それと…」サクラは地面に落ちた私の銃を拾った。「使い方についての話だけど…銃より剣にした方が燃費いいと思う」

「剣にって…私剣道なんて習ってないし…そもそも敵に距離を詰められないための銃だと思うんだけどな…」

「その都度粒子をその調子で消失させてたら、貴方の自己生産にも限度が来て、使いたい時に能力が使えなくなるよ…これはやめた方が良いと思う…爆弾でしょ?」

サクラは私の手榴弾を拾って見せた。

「あはは…もう困ったらグレネードは、私がよくやってたゲームセンターのゲームに影響されちゃってるからなぁ…」

「グレネー…ゲムサンタ?…それより、貴方がもし剣術に自身なくても、召喚して投げるぐらいは出来るはず」

サクラのナイフが首から離れた。

「剣を…投げる…」試しに剣を出してみる。黒いサバイバルナイフだ。「あ、でも私ダーツもやったこと無いよ」

「ダートは熟練の技よ。貴方には空間制御っていう反則があるでしょう?つまり…剣を浮かせて従えるの。」

「あぁ!そうかその発想は無かった!」

私は思わず叫んだ。

武器を作る結集能力とそれを制御する拡散能力を同時に使うというかなりコツがいる難しい作業だが、確かに剣を召喚して、辺りに念動力能力者のように数本の剣を従えることが出来た。

もっと早く気づいていれば…!

「なら、こう言うことも出来るわけか」

チャッ

サクラの周りに突然、大量の銃器が現れてサクラを狙うように取り囲んだ。

「あ…」サクラは辺りを見回して目を細めて両手を上げた「う…参ったわ」

「能力自体も確かに少し強化されたみたいだね」銃器群を消して私はサクラに言った。「かつてはこれほどたくさんの銃器を拡散能力を消さないで召喚するのは絶対に無理だったんだよ。解除して自身に回収出来る量も確実に上がってる…」

「でもその分防御は手薄になる…貴方はエリィのせいでコートの下にすぐ弱点を露出させた状態で置いてあるから、注意して行動しないと駄目よ…あと、私の話聞いていた…?」サクラは呆れた顔をした。

「あはは…」私は苦笑いした。「やっぱり、その人に合った戦い方をした方がいいんじゃないかな…銃の方が攻撃の幅もかなり広がるし作戦も考えやすいから…ね?」

「…無理に剣に切り替えても戦力外になるだけか…分かった」

サクラはそう言うと家の方を向いた。

見るとエリィがニコニコしながら手を振っていた。

「…戻ろうか」

サクラは手を振り返しながら言った。

「いやいやぁ、魔力が自動回復するサブ能力ですか。羨ましいですねーまぁ、ギルドストーン様々ですからねぇ」

「相変わらずテンション高いな…」

私はちょっと引きながら呟いた。

「…いつものこと。エリィ、夕食は?」

サクラは部屋に置いてある盆栽の手入れをしながらエリィに問いかける。

「はて、貴方が作るのでは?」

エリィは首を傾げた。

「…裸エプロンでやる気無くしたから」

「そんなこと言わないで、サクラち…」

「その手には乗らないっ…!」

サクラはエリィに丸い石を投げる。

「ぐぼあぁ!」

「…私、何か作ってみようか?」

何故か片腕だけ拘束された私が言う。

「…それじゃあ、貴方が自分で自分のご飯を作ることになる…」

「…?」意味が分からなかった。

「私は水と肥料でいい、エリィは冷凍庫にいれば大丈夫!」

…あぁ、なるほど…

「ちょ、サクラちゃん?私の扱い酷くないですか!?私だって常温以下の料理なら食べたいですよ!」

エリィが文句を言った。

「貴方は自分で作った氷でも食べてろ」

「ひーん!」

「あはは…分かった。じゃあ適当にやってみるかな…ええと…とりあえずちょっと手のコレ、外してくれる?」

「?」二人は首を傾げた。

「…すごいです…まさかこれもサブ能力の一つなのでは…?」

冷製に調整したミネストローネに目を輝かせながらエリィが呟くように言った。

「エリィ、それは失礼…はわわ…」

サクラの方は湯気の立つ肥料入りのミネストローネだ。

「サクラ、ちょっと野菜使っちゃったけど、有るってことは食べられるんだね?」

「…問題ない。葉っぱには抵抗あるけど、芋や果実なら食べられる…」サクラはそう言うと上目遣いに私を見た。「こんなまともな食事、初めてかもしれない…」

「初めてどころの話じゃないです!うぉぉ、アイスだけの生活から脱出しましたぁ!マジ感激ですよぉ…」

「本当に氷と水だけの生活を…?」

私は頬をポリポリ掻きながら言った。

「えぇ!必要な水はサクラの雨乞いがありますし、それを凍結させて塩でも振ればアイスの完成ですよ!」

「…よくそんな劣悪な食生活で今まで生きてこられたね君たち…」

私は目を細めながら二人に言う。

「だって氷ですもん」

「だって植物だから」

二人が同時に言った。

「…どうぞ」

私は自分の湯気の立ったミネストローネにスプーンを差しながら言った。

「わーい!いただきまーす!」

「い…頂きます」

二人はスープを一口すすった。

「…ぐおおお!ジィーザスッ!!」

エリィが謎の反応をした。

「…!」サクラも口を押さえている「これ…本当にある材料だけでやったの…?」

「うん。ただ…これを食べると恐らく、魔力がアップすると思う…」

やや遠慮がちに私は言った。

…味は再現出来たけど…

サクラは気づいたようで、私と料理を交互に睨む…そしてもう一口食べた。

「いやはや…そう言えば能力者になってからは3年間は自炊してたとか!納得の味ですねー…このトマトソースの絶妙な…あれ…トマトソース…?」

エリィも気づいたらしい。

「あはは…」私はスープを一気に飲み干すと、台所へ逃げるように去ろうとした。

「…台所にあった材料にはトマトはない…調味料も塩だけ…コショウなんて効果な物はうちにはない…」サクラは飲み終わったカップを置いて言った。「…何をした」

「…」私は観念して白状した「と…トマトソースと…コショウとかを【再現】した物を…入れました…はい」

「んごっ…はっしかし…」吹き出そうとしてエリィは踏みとどまる「だがこれはギルドストーンの欠片と考えると…接種しておく必要が大いにありますよねぇ!よよよよし…か、完食して差し上げましょう…いざ、ヒァウィーゴーへヴンッ!」

…二人の身に何が起こるかは、次話のみぞ知る…

【続く】


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