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過去編「ある命の終わり」

「ルイーゼ=ラストワン」

いつも通り安っぽいアパートから出て買い物に行こうとしていた所に、使者は現れてメモを渡してきた。

「あー、まだ朝7時ですよ?この仕事はもしや24時間営業でしたっけ?」

「…大至急向かえ」

「じょ、冗談にぐらい応答してくれても良いじゃない!はいやり直し」

「…」使者のため息が聞こえた「昨日も23時に依頼を渡したのだが?報酬受け取りは1時だったな。別に報酬が要らないのなら、私は日中時間帯の仕事のみ斡旋してやろう。まずはレジ袋たたみからだな…時給20円からでどうだ?」

「…案外ユニークな方だったんだね?」

ビシッ!

「あだっ」

使者から頭にチョップを受けた。

「場所はいつも通り示してある。相手の能力は『解体』。それと『精神攻撃』」

「…そいつは厄介だね…」

「…これは大きな陰謀が絡んでいる可能性がある。もし最悪の事態が起きたなら、躊躇せずやるべき事をやれ」

「は?」

「以上だ。…気を付けろよ」

使者の気配が消えた。

「…はぁ?」何て言ったアイツ?

まぁいいやとりあえず仕事に行こう…。

超能力者たちはそれぞれが派閥を作って勢力争いをしている。

俺が手伝いをしている【スタンロッド】はかなり小さな組織なんだそうだ。

使者からの話、スタンロッドは俺のお陰か最近は勢力をかなり拡大し、抗争になれば敵が逃げていくほどだという噂だ。

【スタンロッド】は謎が多い組織だが、俺にアパートの一室を貸してくれたり、週に一度は組織のようすや近況を報告してくれたりする親切な組織だ。

色々な組織を転々としてきたが、待遇だけでは一番良いところだと思う。

そうこうしているうちに目標地点に到着してしまった。工事中の骨組みだけになっているビルだった…。

…正直帰ろうかと思った。

相手は【解体】能力の使い手。そして骨組みだけになったビル…。殺害対象は恐らくビルの上にいるに違いないとするなら…

「最悪だね…見え見えの、しかもそれでも踏まざるを得ない罠とは…」

瞬間、耳の中から黒板を引っ掻くような強烈な音が響いた。頭蓋骨をも振動させるような、死霊の叫びのような…

「くっ…そお…っ」

…行くしかないのか。

俺は頭を片手で押さえながら、骨組みの階段を登り始めた。途中の窓を突き破り、ビル内へ侵入していく。

むき出しになった化学物質の塊から流れてくる強烈な臭いも重なって、これはなるほど確かに肉体的には平気でも、精神的にダメージを受けてしまう。

もう既に敵の精神攻撃の術中にかかってしまっているのだろうか…?

「まだか…この…クソ野郎…」

俺は悪態をつきながら階段を登っていく。と、突然片足が宙に浮いた。

慌てて下を見ると、さっき踏んだ階段の踏み板がはるか下に落ちていく…。

解体騒ぎはもう始まっているらしい。

「こんな欠陥住宅、誰が済むんだろ…」

正解は誰も住まない。

確かこのビル、オーナーが破産して取り壊しになっていたビルだった筈だ。

…あぁ、ということはこの上の敵はこのビル取り壊しの関係者だな。

今の時間から無人にすることが可能な誰か…建築関係のリーダーとかか。

「まぁ、分かった所でこっちには何のメリットもないけどねー」

今日俺はかなりおしゃべりだ。

ひっきりなしに精神攻撃を受けているせいでそうせざるを得ない。

何かで気を紛らわせないと気が触れて頭が可笑しくなってしまいそうだった。

「着いた…!」

数多の欠陥住宅トラップを抜け、俺はようやく屋上にたどり着いた。

「…地上30階を徒歩で踏破するとは…お疲れ様でした。」

「エレベーターぐらい付けて頂きたいものだけど…で、踏破したんだから景色でものんびり楽しみたい所なんだけど?」

そこにいたのはスーツ姿のメガネをかけた怪しい男…歳は30後半あたりか。

「残念ながら、それは出来ない相談ですね。…覚悟!」男はそう言うと俺との距離を詰めようとする。

「…っ!」俺は慌てて右に避ける。瞬間、足元の床が抜けた。

粒子を収束して板を作り、安全そうな位置に避難する。

「ふむ」男の手が光った。

板が分解される。

慌てて自分に戻そうとするが戻らない。

…粒子ごと解体するとか言うのかっ…?

「もう少しお手柔らかにお願い出来…」

「無理ですね」

男は慣れた動きで瞬間的に足場を選び、俺よりも遥かに効率よく迫ってくる。

こちらは足場が崩れるたびに粒子を収束させて足場を作らなければならない。

それを上手く回収出来なければ奴に解体されてしまうのだ。

ブラックアーティファクトは決して無尽蔵にB粒子を使えるわけじゃない。

通常戦闘でも僅かながら回収不可能な粒子が存在し、それを補うために意識を喪失した敵の肉体をB粒子に変え、【捕食】していると言うのに…。

こんな戦いを続ければ、こちらは何も出来ないただの人になってしまう…!

しかも距離を詰めた後、執拗に頭を狙ってくる。奴の能力のひとつが精神攻撃である以上、絶対ろくな事じゃないっ!

「よしっ」俺は呟いた。これは自分から戦闘の流れを変えなければとても勝てる相手ではない。「バインド…アップ!」

「なにっ…!」

相手の足元に鎖が現れる。これには不意を突かれたようで男は驚きの声をあげた。

鎖は男の足を拘束すると、空に放り投げる。それもかなり上空に。

同じく俺も足裏にバネを作り飛び上がると、男に小さなピストルを向けた。

「やりますね…ですが無駄です!」

ピストルが分解される。

舌打ちをしながら俺は手を上げた。

瞬間、乾いた音が響く。

パァン。

「ぐあっ…?」男は足を抑え、慌てて足にある物を消した。

足にピストルがくっついていたのだ。

男を鎖で放り投げた時に足にくっつけたピストルを悟られないように、わざと上空に上げてダミーのピストルで狙った。

「あなたは見たところ肉体強化や回復型の能力じゃない…。たとえたった片足だけ封じるだけでも、戦いに致命的なハンデを負うはず…だよね!」

「くっ…不覚でしたね…」

「後は解体能力は手で発動しているってことは、両手を封じればただの人、かな」

「ふふ…そう簡単には行きませんよ」

足元が揺れた。

…やっぱりこういう展開になるか。

男は建物全体を…解体した。

自由落下の法則に従って俺は落ちる。

一面落ちる瓦礫の世界に覆われ、すぐに男の姿を見失った。拡散能力を使って男の場所を探らなければ…

しかしすぐに思い止まった。

拡散能力はかなりの粒子を放出することになる…それこそが男の狙い…?

だが、男にもし背後にでも回られたら、それこそどうにもならない…!

地上へ落ちきる前に決着をつけなければ、クッションさえ呼び出せず共倒れだ。

男にとっては勝利だろうが、まだ俺はこんな所で死ぬわけにはいかない!

「ウインドバースト!」

俺は手に圧力の塊を作る。これを悟られる前に奴にぶつけ、この崩落ビルの敷地から外に出してしまえば…!

粒子を拡散させる。残りはクッションの分だ。…一か八か…

もし失敗すれば今度こそ…終わりだ。

「…後ろっ!?」

「これで終わりですっ!」

「させるかあああああ!」

圧力の塊を奴にぶつける。

圧力が解放され、中に詰まった空気の塊が爆発した。俺は髪を掴まれ、手繰り寄せられる。…駄目か…

建物の外に出したはいいが、これは相手にとっては想定外でも、王手を取れる隙を見せてしまった事には変わりない。

例え同時に詰んだとしても。

「ふんっ!」もう片方の手に力を込めて男は俺の頭を両手で掴んだ。

「やめろおぉぉ!」

俺は最後の力を振り絞り、鋭利な槍を男の身体を貫くようにそのまま登場させた。

「…がふぁっ…だが…まだまだああ!」

「心臓を貫かれたんだぞ…大人しく即死しろよ馬鹿やろおお!!…あ」

男は最後の力を解放する。

自分の心がバラバラにされるような、とてつもないショックが襲った。

「あああ…きゃああああ!」

耳をつんざくような高い何かの鳴き声が響いて頭が溶ける!

いや…これは自分が発した声なのか…

色々と終わった。

防衛用に張っていたカモフラージュは消え、そこには白いワンピースを着た赤い長髪と瞳の、肌の白い女の子が倒れていた。

指一本と動かせない。

少し目を動かすと、さっきの男が血溜まりの中に横たわっているのが見えた。

…調子に乗りすぎたかな…

うつぶせで倒れたまま私は思った。

騒ぎを聞きつけ誰かが来るだろうが、今の状態では対処出来ない。

「バルコ…御苦労。お前の死は無駄ではなかったぞ…」突然髪を掴まれて自分は持ち上げられる。

目の前に銃口が見えた。

「…随分ダサい名前…」

「ふん」「ぐはっ…」

仰向けにされ、胸元にショットガンを押し付けられる。そこに私の全ての動きを制御するコアがある。

鈍く紫色に光るそれは、どんなコンピューターよりも高度で、どんな金属よりも壊れやすい…。まるで私の心のような…

ズドン!

私は目を閉じた。

死ぬのは誰だって怖い。強がって自分は死なんて怖くないと思っていた。

死とは何か。それは無であり、今までの努力や苦労、幸せまでもをリセットする。

そこに残る自分は全て消去され、誰かの意味となり生き続けるのだ。

いや…私の場合、そんな人は居なくて、きっと存在そのものさえも奈落へ落ちていくのだろう…

「…おい!大丈夫か!」

「…え?」

上半身を起こされ、私は目を開けた。

見慣れない白いスーツを着た無精髭のおっさんがこちらを見ていた。

しかしその声には聞き覚えがあった。

「使者…さん」

「お前はよくやったよ…だが…」使者はそのまま私を持ち上げる。「もうこれ以上の戦闘は無理そうだな」

「残念だけど…そうだね…」

出発前に戻すには、とてもこの死体だけでは足りない。

「俺を食うか?」

「面白い事言うねー」

「…」使者の目は真剣だった。

「使者さん…食べないよ、それに…今の私の状態じゃ捕食も出来ない…」

「そうなのか?」

「悪いけど、もうしばらくスタンロッドには戻れないだろうね」回復してきたので、自分から私は地面に立った。

「…どういうことだ」

「昔の状態に戻すまで少なくとも半年…でも食べ続ける事は厳しいから一年は確実にかかると思う。その間は敵味方関係なく食べなきゃいけない…お別れだね」

「おい、ルイーゼ、待て!」

「それじゃ」私は自分を粒子に変え、その場から姿を消した。

「格好つけなきゃ…よかった…ッ」バレないように近くの道路を走っていたトラックの荷台に入り込み、そのまま横になる。

胸の鈍い光があまり光らなくなっていた。これ以上力を使えば命に関わる。

しかし、使者は良い人そうだった。

あのままでは迷惑をかけてしまう。

丁度転機になって良かったと思う。

とりあえずしばらくは安全な場所に身を隠そう。体力が回復してから、次の事は考えれば良い。

ズキズキと痛む胸を押さえながら、私はぎゅっと目を閉じた。

【続く】


どうも、ケイオスです。

新しい小説を書いてます。

この話は最近見たアニメにかなり影響されているのですが…きっとわかる人は分かるかもしれません。

まだノルターストーリーやグロウザデビルズの方も書き進めています。

一話分書けましたらどんどん更新していきますので、どうか白い目で見守ってやってください!


ちなみにエキゾチック・マインドの意味について少し語りましょうか。

エキゾチック物質という言葉を知っていますか?エキゾチック物質とは、宇宙に存在する質量がマイナスの風変わりな物質のことです。

エキゾチックという単語自体には風変わりな、異国の、という意味があるようで、エキゾチック・マインドとは主人公ルイーゼの心の事なんです。

所々みられる彼女の可笑しな行動が何を意味しているのか。それに気をつけて読み進めていくと、別の物が見えてくるのかもしれません。

では、私は次の話を書かなければ…

また会いましょう!

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