ギーター合戦
結婚式あと2日。その夜はギーター合戦。
新郎と新婦に分かれて、即興で歌詞を考え、
歌と踊りで相手を言い負かすという行事。
妙な行事だとは思うけれど、アローラの伝統だと
お婆様がゆずらないのでやるしかなかった。
新郎側、新婦側が向かい合って座る。
メンバーが揃ったところで、まずロビンたち新郎側が歌いだした。
あー女はセンチメンタルでクレイジー
蚊に刺されたことまでセルフィ
他にやること、知らないんです
おぉ神様、我らをお助けを
あー女はセンチメンタルでクレイジー
あんまりな内容に呆れながら、
私たちは、こう返した。
男の脳味噌、豆粒くらい
神様、鏡を見せてあげて
奴らこそトラブルの種
他人のこと言うほどクレイジー
彼らはこう切り返した。
マスカラだってリップだって
男が振り向かなきゃ意味がない
私たちも負けていない
Audi、BMW、ジャガーも無意味
女が乗らなきゃ高い甲斐ない
するとロビンたちは、こんなこと言い出した。
この世はバス停、女はバス。
待ってりゃ、別の娘が来る
私たちは軽く切り返した。
それが終バス、見逃さないで
さもなきゃ、人生、歩き通し。
ロビンたちはだんだん苦しくなってきた。
昔から女は、男の資産
私たちはこう返した。
不良債権の男よりマシ
さらに畳み掛けた
顔を洗って出直しな
男なんて女のサンダル
奴らはトラブルの種
ロビンはイーシャ一人を自分たちのほうに連れ出した。
そして彼女の一人をイジメはじめた。
そうさ、俺達女のサンダル。
お前の重さでペラッペラ。
花婿、普通で花嫁がデブ。
これじゃまるで詐欺。
俺の人生、行き詰まり。
私は言い返そうとした。でもイーシャに止められた。
それを見たロビンは、さらにバカにしはじめた。
何も言うなと言っておいただろ。
仲良くするなんてまっぴらごめん。
お前なんかを好きなはずない。
お前と一緒じゃ人生台無し
どっか行け、どっか行け
泣き出しそうなイーシャを私は抱きしめた。
どっか行け、どっか行け
私たちの周りを回りながらロビンたちは囃し立てた。
調子に乗って止まりそうもなかった。
それが急に止まった。父さんだった。
なんでお前は、そんなことを言う?
映画スターか大物スパイか。
体重気にして、どうするつもり。
結婚自体を取りやめるのか?
ジェイが援軍に加わり、二人で歌いだす。
みんなの前で女性をバカにする
お前の誕生、不幸な事実
口の聞き方、要注意
バカも知恵を授かりますように。
お前が生まれた家に同情するよ。
これでロビンから泣きが入った。
問題あったの男のほう。女は何も間違ってない。
神が作りし究極の創造物。
女こそが神と男をつないでくれる
問題あったの男のほう。女は何も間違ってない。
新婦側の大勝利。
私たちは抱き合って大喜び。
私とジェイが抱き合ったのを見て怒った父さんが
ジェイを追い回すのを見て、みんな大笑いした。
ただ新郎側はもちろんだけど、お婆様まで渋い顔をしていた。
ジェイは用事があるからと早々にいなくなり、
イーシャも打ち合わがあるからと姿を消した。
お父様まで見つからなかった。
明日が結婚式の最終日なのに、一人は寂しかった。