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僕は旅をする  作者: 沖ノ灯
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過去への旅5

僕が見ているのは、おそらくベビーベットに寝かされたミカエラ自身の記憶だ。

二人の人影は、両方とも女性のようだった。

片方の人は、髪が茶色で肩までの長さはある。

もう一人は、何か白い布なのか、結婚式のベールのようなもので頭から、覆っている。

ちょうど額の部分に宝石を付けているのか、時おりキラッと光っている。

どうやらミカエラは、光ってる何かが気になってるようだ。

二人は何か話していて、とても穏やかだ。

「・・うね、ほんと・・そんな・・・・しあわ・・」

「・・っと上手く・・から、もう少し・・・・よ。」

かろうじて聞き取れる言葉も、何について話しているのか、全くわからない。

一人が顔を近寄せて覗き込んでいる。

多分ベールの女性のほうだ。


「この子だけは、絶対に幸せにしてあげましょうね。」

口元が微笑むのが見えた。



そして、見えていた映像は、どんどん小さくなって、暗闇が僕を覆っていく。

真っ暗になって、上も下もわからなくなって、僕はもがいた。

落ちてるのか、上にあがっているのか、とにかく息が苦しい。



パアンと大きな音がして、僕は目を開いた。

真剣な顔で母が何度も僕の名前を呼んでいる。

「気がついたみたいね、大丈夫?聞こえる?」

このやりとりで、さっきの景色を忘れそうで、見た事と聞いた事を一気に話した。

時々、舌がもつれる。

「わかったわ、さっ起き上がれる?

そろそろ3時間になるわ、シルフィアが心配してるから、部屋を出ないと。」

ミカエラが、ボロボロ泣いて、しゃくり上げていた。

「ごめんミカエラ、肩かして。」

二人に抱えられるようにして、僕たちは結界部屋を出た。



廊下に出るとロマートとシルフィアが待ち構えていて、いつの間に用意したのか、担架に乗せられた。

ロマートの術で2階に運ばれていくと、小さい時にお世話になったホームドクターが立っていた。

「うーんと今はギンゴって呼べばいいのかな、まずは脈から計ろう。」

母とミカエラも同じように担架で運ばれてくる。

聴診器を当てられたり、目を調べられる。

「気持ち悪いとか、頭が痛いとか無いかな?」

特にどこが痛いとかは無かったけど、暑い時に何キロも走ったような疲労感があった。

「すごくダルい。」

「寒くはないんだね。」

「どちらかと言うと暑い。」

近くに立っていた看護師さんに何か指示すると

「消耗してるから点滴をするよ。少しはスッキリすると思う。

起きてられるかな?」

ハイと返事すると看護婦さんが点滴のチューブを刺し、点滴のパックを確認し終わると、古いタイプの杖で、魔力回復の魔法をかけてくれる。

魔力回復なんて初めてしてもらうけど、細かいミストをかけられてるみたいで、すごく気持ちがいい。


僕は少し頭を動かして、母とミカエラを探した。

母はロマートやホームドクターと何か喋ってた。

疲れた顔をしてるけど、あれだけ喋るなら大丈夫だろう。

ミカエラが僕が見てるのに気づいて、ほんの少し口の端をあげて微笑んだ。

僕も少し微笑むと、あの程度の過去見が一体、何の役に立つんだろうと思った。


そもそも僕で良かったんだろうか。

眠らないようにしながら、さっき見た過去見の事を思い返していた。


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