過去への旅1
翌日はミカエラが学校に通うのに必要な書類を提出するために、ミカエラの家の調査は延ばす事になった。
銀の権限で何かできる事もあるはずなので、僕はひとまず、気になってる部分を調べることにした。
僕より以前に誰か調べてるかもしれない。
バイクに乗って、一応ギンとタシームを呼んだけど返事がない。
使い魔は自然エネルギーの集合体なので、元々集められた生息域に入ると、一番近いか似てる自然に同化してしまう。
同化してる間に修復も行われるので、返事が無いなら、修復中だろう。
それだけ消耗してたのかもしれない、なら、そっとしておいてやるのが主ってものだろう。
一番近くの役所に行って、銀の調査報告書の書庫で調べてみる。
書庫の管理をしている人に
「調べたい事があるのですが。」
声をかけると、
「今、紙の媒体と、デジタル化が同時に行われてて、かなり大変な仕事になると思いますよ。」
「デジタル化で、データとして見られれば、すごく楽になりますね。」
「一部に関しては、データとして見られるし、それ以外は手作業で調べるしかない。」
まず、手っ取り早いデータの方を見ることにした。
時限魔法で検索する。
物や人に対し、一定の時間の経過後、術を発動させる事ができる魔術。
リグワーノ島の伝説として語られているが、実在は確認されていない。
リグワーノ島はイタリア近海にあり、一番最初に魔術師たちが移り住んだ島だ。
伝説レベルって、先行きが不安になる。
ミカエラはタロット占いしてたから
リグワーノ島と、占いでクロス検索してみる。
リグワーノ島の歴史の中に
聖なる魔女によって、骨や石などを使い占いが行われていた。
聖なる魔女って、なんだろう。
聖なる魔女とは、成人に満たない、特別な能力を有する少女。
リグワーノ島で、代々島主により保護されていた。
って事は、今も誰かが聖なる魔女として存在してるのか?
リグワーノ島の公式ガイドで調べてみる。
聖なる魔女の祭りがあった。
女の子の祭典として、白い衣装に飾りをつけた小さな女の子たちの笑顔の写真が出てきた。
秋の観光の目玉として紹介されている。
電話番号が書かれていたので、担当の人に電話をかけてみた。
「あ、すいません。秋に行われるリグワーノ島の聖なる魔女の祭りについて伺いたいのですが。」
『毎年10月の第二土曜日と日曜日に行われる予定です。』
「聖なる魔女は、どんな基準で選ばれるのですか?」
『18歳未満の女の子なら、誰でも参加できますよ。
開催日の1カ月前までに、ホームページから参加申し込みしてください。
お手紙を送らせていただきます。』
誰でも、参加って・・・本当にただの祭りだ。
聞き方を変えよう。
「聖なる魔女の伝説について調べたいのですが、そういう歴史に詳しい方は、ご存じないでしょうか?」
『うーん、郷土の歴史に詳しい方なら、パトモット博士かな、かなりご高齢の方ですが。
後は、お祭りの衣装などについて監修をされている、メリア・ノートスさんも詳しいです。』
「連絡先、教えていただけますか?」
メリア・ノートスさんは教えてもらえたけど、パトモット博士は出版されている書籍を紹介された。
書庫の管理の人が、
「どうですか?情報は得られましたか?」
画面を覗き込んだ。
「なんだか楽しそうな祭りの紹介になってしまいました。」
最初の検索の窓を見て
「この四角のマークあるでしょ。ここと、こっちにも。」
時限魔法と、聖なる魔女の説明の前にマークがあった。
「これは銀の誰かが調査してる印なんですよ。」
やはり誰かが調査してたんだ。
「誰が調べてるか、わかりますか?」
「うーん、そこはすぐにはわからないですね。
単に表面的な事例として調べたのなら、終わってる場合もあります。
何かの事件の延長で調べてるとしたら、経過報告が上がってるかもしれない。
もしくは。」
「もしくは?」
「全部解決できてるとは限らないし、調査してる担当が、現役かどうか、既に亡くなられてる場合もあります。」
「望みをかける一番の近道は」
「リグワーノ島についての調査なら、そこに行けば紙の媒体として何か残ってるかもしれません。」
調査費用って誰か出してくれるのかな。
リグワーノ島に立つ前に、申請出さなきゃならない。
島に渡って調査するなら時間がかかるのを想定しなくてはならない。
受理されるかどうかわからないが、先に申請書を出して屋敷に戻る事にした。
本当に欲しい何かって簡単に手に入らないものなんだ。