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僕は旅をする  作者: 沖ノ灯
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短い夏休み4

ゲストルームを、人が生活できるくらいにした後、水しか出ないシャワーを浴びた。

異常に水の勢いが良かったり、途中で破裂したみたいな音を出して止まる。

思ったより冷たくて、唇が紫色になったけど、いつもの冷静な僕に戻れた。


ベッドのマットレスが使い物にならなくて、近所の店で注文しても、しばらくしないと届かない。

仕方なく、ホールに行って母に挨拶してから、そこにあるカウチに膝を折りたたんで横になって、窓の外を見ていた。


どこかに行っていたシルフィアが戻ってきた。

「バイク買ったの?外に置いてあるやつ。」

「うん。」

母がため息をつく。

シルフィアが母の代りみたいに

「わざわざ中央ゲートから1000キロ以上もバイクで走ってくるなんて、ジンもタシームも連れずに事故でもしたら、どうするのよ!」

「事故はしない。」

「誰も事故したくて、事故起こさないわよ。」

返す言葉もない。

「ミカエラちゃん一人にしてるんだから、さっさと帰ればいいのに。」

何時の間に、ちゃん付けの仲に?


母が

「シルフィアに聞いたわ、命の恩人なんですってね、ちゃんとお礼は言ったの?」

言ってないって言うと、さらに叱られるので黙ってる。

「仕事なんだから、どこに行くにしても、母さんはかまわないけど、自分や仲間は大事にするのよ。」

聞き流してると優しそうな母なんだけど、本当に母にかまわないと、どういう仕打ちをされるか、よーくわかってる。


確かに夏休みなんてスケジュールを、すっかり忘れて学校に戻れって言った僕にも責任はある。


シルフィアが

「休暇と言われて、そのまんま受け止めてるだろうけど、アミグ総括の本意は違うって、わかってるわよね?」

語尾を強調しながら、ゆっくり喋る時は、大抵僕が理解してない時で、今回もそれは当たってる。

うまい話だと思ったんだけど、やっぱり違うのかー。

楽しい僕の夏休みの計画は、はかなくも消える。

「だいたい銀の者をタダで遊ばせておくわけがないじゃない、高い給料払ってるんだから。」

そりゃそうだよなー、こんなに無駄に元気なんだし。

「んで、ワタクシメは何をすればいいのでしょうか。」

寝ころんだまま言うと、

「ミカエラの調査に決まってるんじゃないの。」

シルフィアが呆れてる。

新しいバイクで移動できるのが、せめてもの救いかもしれない。

「ハイ、わかりました。」

しおらしく返事して、僕は目を閉じた。

風がカーテンを強く吹いて、心地良い眠りに落ちていく。




肩をゆすられて目が覚めた。

「ギンゴ、起きて、夕食ですよって。」

すっかり日が落ちて、廊下の光でミカエラの姿が浮かび上がる。

「マットレス届いて、ロマートさんと二人でベッドメイキングしておいたから。」

「そか、ありがとう。」

カウチに座ると端にずれて、ミカエラに

「座って、少し話したい事があるんだ。」

「何?」

「僕は、この休暇中にミカエラの両親について調査するように言われてる。

ミカエラは、どうしたい?」

うん、と頷いて考えてる。

「ここに来てね、ギンゴのお母様やシルフィア見てると、いないのにギンゴの話してるのね。

親って、離れてても、子供の事考えるものだよね。

わたしの本当の両親は、どうして探そうとしないんだろうって。」

「何か理由があるのかもしれないよ。」

「何かの理由があるか、もしかしたら、もう生きていないのかもって。」

僕は黙っていた。

ミカエラ本人には言えないけど、生きていない確率のほうが高いような気はしていた。


「占いで人助けするのは、楽しかったけど、一人になると、すごく不安だった。」

ミカエラは穏やかにほほ笑んだ。

「ギンゴに会って、学校に戻れって言われて、立ち止まったままだったから、あんなに不安で一杯になってたって、わかったの。」

「誰かを、助ける事で、自分も癒す作業をしてたんだと思うんだけど、それはミカエラがミカエラとして、生きてる意味にはならない。」

「ギンゴって、本当に同い年なの?」

「家訓なんだよ、まず目の前にいる人間から救えってのが。」


急激にお腹が減ってきた。


「どちらの、ご両親についても、真実に近づくには簡単じゃないし、謎のままかもしれない。

だから、自己中でいいんだよ。」

「それなら、まずは、わたしの家に行かなきゃならないのかな。」

「何か発見がある事を祈ろう。

行く先が決まったから、食事に行こう。」

ダイニングから、美味しそうな香りが漂ってきた。


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