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僕は旅をする  作者: 沖ノ灯
3/40

短い夏休み3

それからは、何かに背中を押されるように、バイクを飛ばした。

カーブもタンクをニーグリップしながら回せて、バイクと一体になれたみたいで楽しかった。

食事と短時間の休憩以外、ぐぃぐぃ走って、道沿いのドライブインに泊まった。

安い宿泊費なのに、ベッドが清潔で安眠できて夜明けとともに、走り出した。

お昼前には、着いてしまった。



ここでは、ほとんどの住宅が隣家と距離をとって建てられている。

魔法の暴発で壁に穴を開けたなんて事が、昔はよくあったからだ。

僕の住んでいる屋敷も同じく、広い敷地の周りを結界を隠すための林で囲まれている。

屋敷なんて言うと、立派とか思われるかもしれないけど、それは過去の栄光でしかなくて、かなりオンボロだ。

いろんな配管がしょっちゅう破れて水浸しになるし、しばらく使ってない部屋は年単位で掃除してない。

古いカーテンを何気なく触ったら、一気に崩壊してホコリで息ができなくなった事もある。

今年の始めまでいたメイドのリリィノも結婚する事になって辞めた。

新しい人を雇いたくても、そんな余裕すらない。

年をとって、他に行く所もないからと執事のロマートが、家にたった一人でいる僕の母と暮らしているのが実情だ。

兄さんも、父さんも忙しくて、ほとんど帰っていないと思う。




屋敷の前の車寄せにバイクを留めて、ヘロヘロの足取りで玄関に向かう。

だだっ広いから、当然人の気配はなくて、結界が張ってあるから、玄関も鍵すらかけてない。

昼間でも暗いし、オバケ屋敷って言うほうが似合ってる。

「ただいまー」

ため息みたいな声で家に入ると、バッグやヘルメットを抱えて自分の部屋に向かった。


2階の階段の近くに僕の部屋はある。

東側のホールに母はいつもいるんだけど、挨拶は後でいいや。

まずはシャワーを浴びたい。

時々帰るから、自分の部屋にホテルみたいなバスとトイレを自費で作った。

泡だらけになった途端に湯が止まるとかが無い。


つま先をひっかけて、すっ転びそうになりながら長い階段を上がる。

まずカーテンを開けて、窓を開けないといけないなって考えていた。

天井まである重いドアを開けると明るくて、涼しい風が吹き抜ける。

あれ?誰か窓開けておいてくれたのか?

僕のベットに誰か座って、洗濯物を畳んでいる。


新しいメイドなのか?と思って、開けたドアを閉じて、ふと考える。

いや、ここは僕の部屋なんだし、遠慮する必要はないでしょ?


「あのー、ここ僕の部屋なんだけど。」

ベッドに座ってるのは、ミカエラだった。

「わっ、ギンゴ、おっおっおっかえりー。」

何かヒラヒラした下着らしきものを、僕のお気に入りのタオルケットの中に押し込んでいる。

「何してんの?」

いや、なんでいるのと聞くべきか?

「夏休みだから。」

うんうん、それはわかる。

でも休みの日には自分の家にいるもんだろ?


「えっと、あの後、学校に行って、簡単な試験と手続きして、

シルフィアに夏休み中どこにいくの?って聞かれて、家に戻らなきゃねって話したら。」

声を詰まらせる。

「あの後、家には帰ったの?って聞かれて、一度も帰ってないって言ったら、ここに連れてきてくれたの。」


ミカエラの話を聞きながら、最後にこの部屋を出た時に、人に見られてマズイものが出したままにしてなかったか、思い出していた。


「ごめん、わかったんだけど、できればあんまり部屋の本棚とか見ないでくれる?」

「うん、それはわかってる。」

「やっぱり、このベッドで寝てるんだよね?」

「10日くらい?かな。」


ミカエラが僕のベッドで寝てるって聞いて想像して、僕は全身の血管が膨張したみたいに感じた。

ついでに毛穴が開いて、なんか出た。

「ご、ごめんなさい。ロマートさんが、ヒロム様は勝手に使って怒るような方じゃないって言われて・・・」


僕はフワッとして本棚にしがみついた。

ミカエラが僕のベッドで寝てる。


「いや、大丈夫っていうか、いいんだ。使って、好きなだけ。」

ミカエラの顔を見れない。

僕は急いで、ドアに向かい、廊下に出ると一番遠いゲストルーム目指して小刻みに早足で歩いた。

よこしまな妄想をかき消すように、ホコリの積った部屋を取りつかれたように掃除しはじめた。


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