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姫恋華~ひめれんげ~  作者: 藤原ゆう
第二章 暗躍するものたち
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(1)暗部に生きる ③

 小料理屋を出た新之助は、少しふらつく足取りで家路を歩いていた。


 盃にたった一杯飲んだだけで、これだ。


「もう当分、酒はいい……」


 早く帰って頭を整理し直そう。


 佐伯の屋敷では、用心棒を採用するに当たって面接を行うらしい。


 それに受からなければ意味がない。


(師範代に手合せの回数を増やしてもらおうか)


 いや。それは無理だ。

 道場の人たちに事情は話せない。


 もし用心棒として佐伯の屋敷に詰めることになれば、道場も辞めなくてはならないだろう。


 世話になった人たちを騙すように姿を消さなくてはならないのだ。


 新之助の胸は痛んだ。


「だが、仕方ない」


 あの晩秋の夜に、自分は世の中の暗部で生きて行くことを選んだのだ。


 この下町で過ごした二カ月は夢のようなもの。


 またうつつに戻って来ただけだ。


 新之助は顔を上げた。


 長雨はようやく止み、夜空には満天の星。


 その輝きに一人の少女の面影が重なった。


「さよならだ」


 己に言い聞かせるように呟くと、新之助はまた歩き出した。


 この世の中に満ちる光の、その一筋も届かない闇に向かって。







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