7:ファンタジーな乗り物が欲しい
さて、次は何をしようか?
Lv20で出来るようになる事は…そうだ。乗り物を買おう。
最も安いのは、三輪自転車(3万5千ルマ)だが、どうせなら、ファンタジーな乗り物にしよう。お金はあるし。
そんな事を思いながらクエストに目を通すと、レアクエストがあった。
『至急! 子猫を6匹探してください!』
受付で詳細を聞くと、報酬は乗り物らしい。
「それで、子猫の特徴は?」
「尻尾が2本です」
え? 猫又? 子猫が?!
クエストを受けギルドを出ると、数匹の猫に懐かれている青年キャラが居た。……羨ましい。
その中に、子猫はいない。
【通訳】は、普通の動物にも使えるのだろうか?
「ちょっと聞きたい事があるんだけど……尻尾が2本ある子猫を見なかった?」
「見てないね」
青年が答える。
『大きい』
「え? 大きい? 何が?」
私は、少年の膝の上に居る黒猫に尋ねた。
『尻尾2本』
「……ああ。子猫じゃないのを見たって事か」
「もしかして、猫の言葉が解るの!?」
「うん。スキル【通訳】で」
プレイヤーだと思ったが、違うのだろうか?
「え?! そんなスキルあった?!」
「……タブ切り替えて」
「あ!」
青年は顔を赤くした。
「うわ~……ずっと気付かなかった~!」
「はは……Lv幾つなんですか?」
「32です。……ギルド『猫好き友の会』の皆には内緒でお願いします」
「えっと……ごめん。後ろで笑ってる人達の事かな?」
何時から居たのか、3人の男キャラが青年の後ろで声を殺して笑っていた。
「うわ~! 何でいるんだよ~!!」
彼等4人はリアルの友人らしい。
「もし、何処のギルドにも入っていないなら、『猫好き友の会』に入りませんか?」
「う~ん……好きは好きなんだけど、飼いたいほどじゃないですから」
狩人風の青年に勧誘されたが、私はそう断った。
「そうですか」
「お前が男キャラを勧誘するなんて、珍しいな」
狩人は女好きらしい。
「女の人な気がしてさ」
「え? 何で?」
青年が尋ねる。
「男なら、こんな優男風にはしないんじゃないかって言う、偏見」
華奢じゃないのになぁ。……顔か?
「確かに、まつ毛長いしな」
「ところで、子猫見ませんでした? 尻尾2本の」
「何それ?! 見たい!」
「ちょっと、静かに!」
青年が、口に人差し指を当てる『静かに』のポーズを取ってそう言った。
「……猫の鳴き声!」
静かにすると、子猫のものらしき鳴き声が聞こえた。
「何処だ?」
「下じゃないか?」
「……まさか、この側溝の……?」
その『まさか』のようだった。
側溝の蓋を開けると、逃げたのか手の届かない所に……ピンク色の子猫が居た。
「うわ……ピンク」
「マジで!?」
「おいでー」
【通訳】を使って呼ぶと寄って来た。
『かえれる?』
「連れてってあげるから、おいで」
出て来たので抱き上げる。
『ごはん』
「子猫が食べれる物ないかな?」
私は、彼等に聞いた。
「持って無いよ」
「売っても無いよ」
「じゃあ、作るから持ってて」
私は青年にピンクの子猫を渡し、調理セットを展開した。
「誰か、レシピ知ってる?」
「うん。じゃあ、鶏肉とご飯と水と片栗粉を用意して」
青年が挙げた物を【冒険者鞄】から出す。
「あ、片栗粉無い……」
「無いならしょうがない。鶏肉を食べ易い大きさに刻む」
子猫だから小さくしよう。
ボタンを押さずに作るのを見て、残りの三人が驚いていた。
「手作り出来るんだ……」
「攻略サイトに載ってたよ」
青年が教える。
「それ知ってて、どうして、【通訳】知らないんだよ……」
「それを言うな! ……お湯を沸騰させて鶏肉を入れて、灰汁を取る」
私は、言われた通りにする。
「ご飯を入れて煮る」
出来た物を冷ましてから、ピンクの子猫に食べさせた。
『おいしー』
「美味しいか~。良かったね。じゃあ、後、5匹捜そうか」
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「あれ? ヒグマ、どうしたんですか?」
上を見上げているヒグマと多分彼とPTを組んでいる人達に気付いて、私は声をかけた。
「ああ。子猫が木の上にいるんだ。さっきまで鳴いていたんだが…」
見上げると、木の天辺近くに小さな黒い丸い物が見えた。
「ねえ、その子猫、どうしてピンクなの?」
「さぁ? 私にもさっぱり……」
金髪碧眼の女性キャラの質問に、そう答える。
「助けようにも、あんな細い枝に登ったらね……」
「宙に浮くスキルって無いんですか?」
「聞いた事無いわ」
「『空飛ぶ絨毯』は?」
『空飛ぶ絨毯』は乗り物アイテムだが、120万~700万ルマとお高い。まあ、買えるけど。
「誰か、『拡声器』持ってる?」
『空飛ぶ絨毯』を持っている人に来て貰おうと思ったのだう……女性が仲間に尋ねる。
尚、『拡声器』は課金アイテム(10個セットで300円)で、全てのエリアに声を届ける為のアイテムだ。
「持って無いよ」
私は、【冒険者鞄】に何か使える物は無いかと目を通す。そして、籠と竿と紐を出した。
「済みませんが、誰か、簡単に解けない結び方出来ますか?」
「出来るよ」
ヒグマが籠と竿を結び付けてくれた。
「届く?」
「少し登れば……」
「助けに来たんだよ~。そこまで行けないから、これに入って」
登れる所まで登って【冒険者鞄】から籠付きの竿を出した私は、クッションを入れ、子猫に向かって腕を伸ばした。
うう……高い所怖い。
『やだ……こわい』
「ずっとそこに居たら、鳥に食べられちゃうかもしれないよ」
『……うごけない』
「ほら、中に柔らかいクッションも入っているし、思い切って籠の中に落ちて」
黒い子猫は籠の中に消えた。
「よしよし。頑張った。偉いね。下に降りたら美味しいご飯あげるからね」
籠から尻尾が2本の子猫を出し、籠付きの竿を【冒険者鞄】に仕舞う。そして、【裁縫】で作った布製の袋に子猫を入れて背負った。
「ごめんね。ちょっと、我慢してね」
漸く下に降りると子猫を出し、先程作った餌の残りを食べさせる。
「良かった~」
ヒグマの仲間達が嬉しそうに言った。
「全くだ。それじゃ、俺達はダンジョンへ行くが、後4匹、頑張れよ」
「はい。預かって貰ってありがとうございました」
私はヒグマからピンクの子猫を受け取り、黒い子猫と一緒に布を張った木箱に入れた。
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「子猫を捜しているそうね」
振り向くと、シラユキヒメ達が居た。誰に聞いたんだろう?
「貴方が私に謝ってギルド『白雪姫と7人の小人』に入るなら、許してあげても良いし・この猫もあげても良いわ」
シラユキヒメは、白い子猫の首を掴んだ手を私に良く見えるように突き出して、そう要求する。
親猫が子猫を運ぶ時の様な掴み方とは違い、今にも握り潰しそうだ。
それが見えていない訳でもないだろうに、カグヤヒメ達は私をニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて見ている。
「……ところで、それ、戦闘用ペット?」
私は、彼等の周りにいる虎や狼等について尋ねた。
「そうよ。それが何?」
「……いや、別に……」
知らない筈は無いし、わざとなのだろう。6人もいて全員が忘れるなんて事も無いだろうし。
「で、どうするのかしら? 必要なんでしょう?」
<警告! シラユキヒメの規約違反を確認しました。強要を止めなかった場合、2ヶ月間ゲームから追放します>
「そんな! また?!」
「酷い! シラユキヒメは何も悪くないのに!」
<規約違反は悪いです>
「でも!」
<規約違反は悪いです>
『腹減った!』
その時、彼等のペットが彼等に襲いかかった。と言っても、食べられる訳ではない。
「キャア!」
「何?! 何なの!?」
私は、シラユキヒメの手から零れた子猫を保護する。
「良かった……生きてる」
尾が2本の白猫を箱に入れ、私はその場を立ち去ろうとした。
「助けてェ!」
「助けるのは無理だよ。そういう仕様だから」
首を咬まれ死亡した彼等は消えた。今頃、最後にログアウトした宿屋前に戻っているだろう。
ペット達は、ペット屋へ戻って行く。
鍛冶屋の前を通ったら、シラユキヒメ達がいて文句を言って来た。
「貴女達がペットに餌をやらなかった事に、私が何の関係があるのかな?」
「気付いていたなら、教えるべきじゃない! 気の利かない人ね!」
「そうだよ! 高かったのに!」
「0になる直前に餌をあげるやり方なんだと思って」
餌の満腹度の回復量によっては、そう言う使い方じゃないと損な気がすると思う人もいるだろう。
「子猫、返して!」
「うん。依頼人に返すよ」
「ペットのお金、弁償してよ!」
「そんな事言うと、また運営が」
<警告! カグヤヒメの規約違反を確認しました>
2014/03/12 フジの所持金変更に伴い冒頭を変更。