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6:Dランク昇格試験

 土曜日。

 昇格試験に臨む10人は、試験官に連れられ【試験用ダンジョン】を訪れた。

「皆さんにはこれから、このダンジョンに1人ずつ挑んで貰います。5ヶ所のチェックポイント全てを通過するのが理想ですが、4ヶ所通過で合格となります。途中、HPが0になったら失格です。制限時間は1時間ですので、残り時間に気を付けてください」

 試験官による説明が終わり、私は、こちらをじっと睨んでいる少女キャラに気付いた。

「あんたなんか落ちれば良いのよ!」

 彼女はそう吐き捨ててダンジョンに入って行った。

 誰の関係者だろう?



 ポータルからダンジョンに入った私は、『ゲート』で挑戦する初のダンジョンに、恐々と辺りを見渡した。

 ダンジョンのモンスターは強く、罠もある筈。慎重に行かなければならない。

 ふと、右の壁の下部に、何か文章が刻まれたプレートが在る事に気付いた。


『梯子の上、チェックポイント』


 しゃがんで読むと、そう書かれていた。

 視線を移すと、暗がりに金属製の固定された梯子を見付けた。



 梯子を登ると屋上に出る。

「おお! 珍しい!」

 ダンジョンの上で胡坐をかいていた試験官が、そう声を上げた。

「そうなんですか?」

「入って直ぐだからか、殆ど気付かないんだ」

「なるほど」

 確かに、私が気付いたのも偶然だ。隅から隅まで調べる気でいる人でもなければ、気付かないのかもしれない。

 私は判子を押して貰い、中に戻った。



 通路の奥からこちらに来る3体のコボルトに気付き、私は、武器を剣から弓に持ち替えた。

 【調合】で作った毒薬を塗っておいた矢を、胴体に向けて射る。即効性の猛毒は、コボルトにも問題無く作用した。

 『ゲート』は【初心者向け】と言われるだけあって、矢は矢筒から自分で出す必要が無かった。

 時間を確認すると、まだ5分ぐらいしか経っていない。

 でも、ダンジョンの広さが分からないのだから、のんびりしてはいられない。

 通路を進むと、先の部屋にコボルトが6体見えた。

 こちらに気付いていないようなので、右に居る3体を先ず毒矢で射る。それで気付いた左の3体も射る。


 その先のモンスターが居ない通路を抜けると、部屋の奥に『チェックポイント』の貼り紙付きの台が在った。……私が試験官だったら、この部屋に罠を設置する。

 しかし、罠を見破るスキルなんて覚えていないので、直線上を避けて近付いた。念の為に、【木工】で作っておいた木の棒(武器)で床を叩いてみながら。体重で作動する罠等には意味が無いだろうが、回避出来る物ぐらいは回避しなくては。リアルよりは軽減された痛みとは言え、わざわざ食らいたくは無い。

 罠が作動する事も無く、判子が載せられた台に辿り着いた。……考え過ぎだったかな?


-------------------------------------------------


「うーん。フジは、流石、【運の良さ】92ですね。罠が無い所を選んで歩きましたよ」

 ダンジョンの外で試験の様子を水晶玉に映して見ている試験官の1人が、隣で別の受験者の様子を見ている仲間に話しかけた。

「【運の良さ】は関係無いと思いますよ。以前試験を受けた【運の良さ】89のシラユキヒメは、3連続で罠にかかっていましたからね。『爆発』→『落とし穴』→『タライ落下』と」

 『シラユキヒメ』のプレイヤーがアバターを作り直さなかったのは、【運の良さ】の数値が高かったからであった。

「いや、関係ある筈ですよ。【運の良さ】が高いからと言って、絶対回避出来る訳じゃありませんからね」

 別の試験官が言う。

「なるほど」


-------------------------------------------------


 通路がT字路になっていたので、取り敢えず左に進んだ。

 その先の部屋には、大きなサイコロ型の木箱が沢山在り、床には所々それがスッポリ填まりそうな形に穴が開いていた。

 右手の壁に扉が在る。念の為に開けようとしてみたが開かない。恐らく、木箱を床の穴に填めると扉が開くのだろう。

 動く木箱を見付け、押したり引いたりして穴に入れて行く。

 そうしている内に、1ヶ所だけピラミッド状に高く積まれている木箱が気になった。登ってみると、1番上の木箱に『チェックポイント』と書かれた貼り紙と判子が在った。



 扉を開き、コボルトを倒しながら通路を進む。

 通路は右手に直角に曲がり、暫く進むとまたT字路が在った。

「この先、ボスモンスター。ボスを倒したら、判子を押そう」

 曲がった先の扉の前にいた試験官が、そう言った。

「ボスの部屋に、外へ出るポータルか何かはありますか?」

「無いよ。徒歩で戻ってくれ」

 それならば、先にボスを倒した方が手間にならないだろうと思って、【冒険者鞄】から【命中】・【すばやさ】・【筋力】・【防御】を上げる料理を取り出して食べる。同じ効果のポーションもあるのだが、苦いので飲まない。


 中には、1体のオークと8体のゴブリンが居た。

 真っ先にオークに毒矢を射り、ゴブリン達も次々と射る。3体撃った所で近くまで来られたので、走って距離を取るとまた撃つ。オークにも毒耐性が無かったらしく、消滅していた。

「ふぅ……」

 全てのゴブリンを撃ち殺した頃には流石に疲れたので、私は深呼吸をした。

 オークがいた場所の奥に、宝箱が在る事に気付く。

 鍵がかかって開かないが持ち上げる事が出来たので、【冒険者鞄】に入れた。

 時間を確認すると、残り25分だった。


「早いな。ほら、判子」

 部屋を出ると、試験官が判子を押してくれた。

「これで合格だが、時間内に外に出ないと失格になるからな」

「はい」



 T字路に戻ると、来た方向とは反対へ向かう。

 魔物を倒しながら右に直角に曲がる通路を進むと、大きな部屋があった。

 床が無く、かなり深い底から足場となる石柱が何本か建っている。飛び移って向こうへ行けと言う事か。部屋の真ん中の他の柱より太い柱に、『チェックポイント』と書かれた立て札が見えた。

 因みに、底には大きな針が上向きに立ち並んでいる。

 私は、【冒険者鞄】から木材を出して足場に掛けて移動した。


-------------------------------------------------


「合格おめでとう」

 外に出ると、試験官から鍵を渡された。

「ボス部屋に宝箱が在っただろう? その鍵だ」

「ありがとうございます」

 開けると、転送石が入っていた。

 つまり、ボスを倒さずに合格した人や宝箱を持って来なかった人は、転送石を手に入れられないと言う事だろうか?

「ああ。その場合は、下級転送石を渡すよ」

 聞いてみると、そんな答えが返って来た。

「普通の転送石は、ダンジョンやフィールドからも街に移動出来るんだが、下級は出来ないんだ」

「そうなんですか」



「それでは、本日のDランク昇格試験を終わります」

 暫くして、7人の合格者に向けて、試験官がそう言った。

 この場に居ない3人は、死亡したらしい。前回ログアウトした宿の前に戻っているだろう。開始前に、私に「落ちれば良い」と言った少女もその1人だ。

 尚、『ゲート』の死亡ペナルティは、装備の耐久値が1まで減るだけである。


-------------------------------------------------


 冒険者ギルドに戻ると、あの少女が居た。

「私が落ちたのに、何であんたが合格してんのよ!」

「お前の実力と彼の実力が無関係だからだが、そんな事も解らないなんて本当に大人か?」

 試験官の1人が、呆れたように言った。

「あ、当たり前でしょう! 貴方には関係無いんだから、引っ込んでて!」

「じゃあ、外でやれ」

 少女は放り出された。

「何すんのよ! しかも、何で私ばっかり!」

「他の冒険者に迷惑だからだ」

 少女は入口の扉を開けようとしたが、開かない。試験官が鍵をかけた訳ではない。

「また絡まれてるな」

 その声に振り向くと、ヒグマがクエスト掲示板の前に居た。

「はは……虐められっ子オーラでも出ているんですかね?」

「優しそうなキャラデザだとは思うがね。……あの子は『白雪姫と7人の小人』のメンバーだと思うよ。良く一緒に居るのを見るからね」

 やっぱりか。


 少女が扉の前で粘っているので、他の冒険者は出る事も入る事も遠慮していた。


<警告! カグヤヒメの迷惑行為を確認。迷惑行為を止めなかった場合、王都【サン】の冒険者ギルドの利用を無期限禁じます>


「えーー!!」

 少女が不満の声を上げた。彼女が『カグヤヒメ』なのか。姫なのに小人なのか。

「チッ!」

 カグヤヒメは、舌打ちして立ち去った。

名前:カグヤヒメ(かぐや姫は大勢の金持ちに求婚されるから)

性別:女

髪色:黒

目の色:黒

年代:子供

身長:高め(140cmぐらい)

特徴:課金アイテムのミニスカ浴衣を着ている

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