4:スキルを使ってみよう2
村の中に種蒔きポイントが在ったので(NPCの畑では無い)、鍬を使ってから種が無い事に気付いた。
買いに行こうと思ったが、空中から種が落ちた。……そういうシステムか。
耕す度にスキル経験値が入り、鍬の耐久値は下がる。鍛冶屋で修理して貰い、【農業】がLv2になった所で止めた。
【冒険者鞄】を確認すると、野菜の他に水仙の葉が1本分入っていた。説明を読むと、『食べられない。毒がある』とあった。
襲ってくる魔物を倒しながら、伐採ポイントと採掘ポイントを探す。
伐採ポイントを見つけたので、周りの魔物を倒してから斧を振るう。
斧を振るう度にスキル経験値が入り、斧の耐久値は下がる。魔物を倒しながら村に戻り、修理して貰って再び伐採。【伐採】がLv2になった所で止めた。
【冒険者鞄】を確認すると、おかしな物は入っていなかったが、素材の総数が斧を振った回数より少なかった。ログを確認すると、空振りしたとあった。
伐採ポイントの近くに採掘ポイントを見付け、周りの魔物を倒してからつるはしを振るう。
つるはしを振るう度にスキル経験値が入り、つるはしの耐久値は下がる。また魔物を倒しながら村に戻り、修理して貰って再び採掘。【採掘】がLv2になった所で止めた。
【冒険者鞄】を確認すると、鉱石等の他に小石が3個入っていた。説明を読むと、『ただの小石。投げてみる?』とあった。
魔物を倒して【解体】をLv2にしてから、村に戻る。
私は、そろそろ夕飯にしようと調理セットを展開する。サラダを作って、村の食材屋で買った塩をかけて食べた。売れ残りの刺身も食べる。当然、ゲームなので腐ったりしていない。
食後、『サラダ。5分間防御上昇小』を露店に置き、木工セットで木刀を作った。装飾セットで村の名前を彫り、刺身とサラダが売り切れた露店に並べる。
そして、私は家に戻ろうとした。
「今度こそ、チートだな! 証拠のSSも撮ったし、あいつ等も信じるだろう」
突然現れ私に指を突き付けてそう言ったのは、エイユウだった。規約違反だと学習出来なかったようだ。
ところで、あいつ等って、曝しサイトの利用者だろうか?
<警告! エイユウの規約違反を確認。迷惑行為を止めなかった場合、3ヶ月間ゲームから追放します>
1ヶ月増えたな。
「エイユウって、曝しサイトに、冤罪着せる悪質プレイヤーって動画付きで曝されてる奴?」
「相手、動画と同じ人だよ。うわぁ…粘着してるんだ~」
近くに居たプレイヤーが、そんな事を口にした。
「冤罪じゃない! 見ろ! 【市場】でもないのに露店を出しているだろうが!」
「レアクエスト報酬のスキル【行商】を持っているんでしょう。攻略サイト見てないの~?」
「…う、嘘だ! こんなクエストある訳無い!」
攻略サイトを確認したようだが、エイユウは認められないようだった。
「動画もあるんだけどぉ?」
「加工したに決まってる!」
「それは、貴方の願望に過ぎないのではないでしょうか?」
私の言葉に、エイユウは顔が真っ赤になるほど怒ったようだ。
「五月蠅い! 好い加減認めろ!」
<エイユウの迷惑行為続行を確認。追放します>
エイユウはバタンと倒れた。
「こんな所に寝られたら、困るね~」
村人が迷惑そうに言う。
「済みません…」
「あんたの所為じゃないんだろう? 気にしなさんな」
そこに、転送石を使って【イッチ】の冒険者ギルドの職員が2人現れた。
転送石は、【サン】の冒険者ギルドの試験(Lv20以上)の合格者に渡されるアイテムで、転送地点登録した場所にMPを消費して移動出来る物だ。転送地点登録は現地でする事になるが、うっかり登録し忘れる人も結構いるらしい。
ギルド職員がわざわざ【イッチ】から来たのは、村には【市場】だけではなく冒険者ギルドも無いからだ。
2人は、エイユウを村の片隅に移動させると帰って行った。
翌日。エイユウを確認すると下着1枚になっていた。他は全部盗まれたらしい。
数日後には、殺人鬼に殺されたのか消えていた。
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【採取】・【採掘】・【伐採】・【釣り】・【農業】・【解体】を全てLv5にし、冒険者ギルドの試験を受けようと王都【サン】に戻る。
「あの、試験を受けたいのですが」
受付の女性にそう話しかける。
「はい。Dランク昇格試験ですね。土曜日の午前10時から行われますが、ご都合は宜しいですか?」
「はい」
視界に時刻は表示されているが、日付と曜日は判らない。
「今日は何曜日でしたっけ?」
「水曜です。受験料1万ルマを当日頂きますので、ご用意ください」
「はい」
「集合場所は、此処ですので」
「解りました」
「お名前は?」
「フジです」
試験の申し込みを終え、私は【市場】に移動した。
盗賊風の装備の男性キャラの隣に露店を出し、『魚の串焼き(10分間知力上昇小)』と【アレンジ】を使った『おにぎり(5分間精神回復小)』を並べる。
「あれ?! ここのおにぎり、何で海苔が無いの?! 失敗作?」
金髪ツインテールの少女が、それに気づいて声を上げた。
「いいえ。レアクエスト報酬の【アレンジ】を使ったんですよ」
海苔が無かったからだ。
「……へー。良いなぁ」
彼女は攻略サイトを確認したのだろう……少ししてからそう言った。
「私も【調理】覚えてるんだけど……レベル上げるのがうんざりで」
「え?」
うんざり?
「例えば、この間野菜炒め作ったら、『胡椒入れ過ぎ』とか『調味料入れ忘れ』とかが成功作より多く出来たんだもん!」
「そうなんですか? 野菜炒めなら私も50皿作った事がありますけど、『薄味』が5皿ぐらいでした」
「スキルレベルが高いんじゃないの?」
「Lv2の時ですよ」
少女は驚いた表情を浮かべたが、ふと看板に目をやった。
『【運の良さ】80以上のウィステリア』
「あ~……」
納得した様な声を上げる。
「いや、待て! 加工の成功率に【運の良さ】は関係無いと、【運の良さ】70以上の俺が保証しよう!」
近くで話を聞いていたらしい赤毛の男性が、話に入って来た。
「え?! 関係無いの?!」
「そうだ。俺も【調理】を持っているが、サラダを作ったら半分以上が『腐ったサラダ』に……」
腐ったサラダを思い出したのか、赤毛の男性の顔色が少々悪くなった。
「じゃあ、何が関係あるんだろう?」
「考えられるのは1つだけですね」
私は少女の疑問に答えようとした。
「そう、【器用さ】だ!」
隣の盗賊風の男性が、私の台詞を盗る。
「……そうでしょうね。私の【器用さ】は14ですが」
「LvUP3回分か~。悩む~」
因みに、スキルレベルが上がっても、成功率は上がらないらしい。成功率は、それぞれのレシピの熟練度で変わるそうだ。
「いや、自動成長分も関係あるからな」
どれがどの程度自動成長するかは、【運の良さ】と同じでキャラ作成時に決まる。
「なぁ? リアルで料理出来ると、そう言うシステムとは言え失敗するってストレスじゃないか?」
赤毛の男性が同意を求める。
「いや、私は、リアルで料理下手なんで……食べられないほどではないんですけど」
「流石に、食べられない程って人はいないでしょう!」
少女が笑う。
「いるんだよ!」
近くに居た何人かが同時にそう叫んだ。
「え?」
困惑する少女に、彼等は諦めた様な目で話す。
「毎日吐いてます……」
「何度も入院しました……」
「もう。離婚しろ! DVだろ!」
「ですね」
赤毛の男性の言葉に、私は同意した。
「離婚はしたいんだけど、ヒスが怖くてね……」
毎日吐いていると言った男が、私の露店の料理を物色しながらそう言った。
「離婚は無理でも逃げたらどうです? あ、因みに、これが私のリアルの料理の腕前で……」
私は、【冒険者鞄】から手作りの野菜スープを露店に出した。
「今何て言った?」
赤毛の男性が驚いたような顔で尋ねる。
「『リアルの料理』?」
「え?」
少女が呆然とした。
「ええーー!? このゲーム、普通に料理出来るの~?!」
一瞬後、少女の絶叫が【市場】に轟いた。
2014/03/12 保存し忘れていた部分を加筆。
2014/03/13 自動成長設定を忘れていたので、加筆。