3:スキルを使ってみよう
きせいちゅう。
家から出ると、隣に倉庫らしき建物が出現していた。
と言う事は、今の私は、プレイヤーがアイテムを預ける【倉庫】を使用出来ないのだろう。
因みに、【倉庫】の解放もLv20からだ。
【冒険者鞄】の中から幾つか【倉庫】に置き、ポータルから、王都【サン】の宿屋の1室に出る。
王都【サン】は、【ニー】村から南へ2時間歩いた場所にある。中央に王城。北に一般市民・東に貴族が住む。宿は西側にあり、店は南にあるらしい。
道具屋は直ぐに見付かった。
「いらっしゃい」
「えっと、初級の鍬と草刈り鎌と斧とツルハシと釣竿をください」
「はいよ。1万4千ルマね」
買った物を【冒険者鞄】に入れ、ついでに加工セットも買う事にする。
「それから、初級の木工セットと金工セットと裁縫セットと装飾セットと調合セットと調理セットをください」
「はいはい。120万ルマね」
初級なのに高いな。まあ、ルマは1千万以上あるから良いんだけど。
「まいどあり」
-------------------------------------------------
【ニー】村まで戻り、早速素材を集める。
先ず、川に架けられた橋から釣りポイントに釣竿を使う。
リアルの釣りの技量なんて関係無いので、次から次へと釣れる。釣る毎にスキル経験値が入り、釣竿の耐久値は下がる。壊れる前に鍛冶屋に修理して貰い、【釣り】がLv2になった所で止めた。
【冒険者鞄】を確認すると、食用魚の他に金魚が2匹入っていた。説明を読むと、『食べられない。飼いたければ飼っても良い。但し、餌も水槽も売っていない』とあった。
次に、採取ポイントが在ったので草刈り鎌を振るう。
やはり刈る毎にスキル経験値が入り、草刈り鎌の耐久値は下がる。また鍛冶屋で修理して貰い、【採取】がLv2になった所で止めた。
【冒険者鞄】を確認すると、薬草や毒草以外に不味草という草が3本入っていた。説明を読むと、『不味いだけの草。嫌がらせには使えるかも』とあった。
そう言えば、お腹が減った。
調理セットを展開し、調理Lv1で作れる料理を確認するが、その中に焼き魚は無かった。しかし、刺身なら作れるようだった。ワサビと醤油も必要なようだったが、スキル【アレンジ】があるので無くても作れるようだ。
そう言う訳で、調理台に2匹の鮭を置き、ボタンを押してみた。鮭が光(魔法?)に包まれ、刺身が2皿出現した。
『鮭の刺身。5分間知力上昇小』と『鮭の刺身(寄生虫入り)』。寄生虫って……こんな所をリアルにするな!
残りの96匹も刺身にし、寄生虫入りは捨てた。
作る度に(失敗しても)、調理経験値が入り・刺身の熟練度も上がった。調理セットには、耐久値が設定されていないようだった。
刺身を食べていると、声をかけられた。
「やあ。美味そうだね」
振り返ると、初日に会ったメタボなオジサンだった。
「1つ売ってくれないか?」
「良いですよ」
村には【市場】が無い。しかし、アイテムの交換は何処でも出来るので、刺身とルマを交換すれば良い。
でも、私は、スキル【行商】があるので露店を出した。
「え?! 何で、露店が?!」
私は、【行商】について説明しながら、村に居る他のプレイヤーも買ってくれるかもしれないと思って、置けるだけ置く。武器や防具の装備品は1つずつしか置けないが、料理や薬などは、何故か99個まで1ヶ所に置ける。見た目は1つで在庫数が表示されるのだ。魚の種類毎に刺身を並べると、オジサンは1種類ずつ買ってくれた。
「取り敢えず、自己紹介しようか? 俺は『ヒグマ』。剣士だ」
剣士とは言っても、『ゲート』にはそういう【職業】は無いので、剣を武器にし、剣のスキルを覚えていると言う事だ。
因みに、ゲートは、自動成長+ステータスを振る系のゲームで、
筋力……物理攻撃力。重い武器・防具を装備するのに必要。
防御……物理防御力。
知力……魔法攻撃力。治癒なら回復量。
精神……魔法防御力。
命中……弓矢の命中率。
器用さ……盗賊系スキルの成功率。
すばやさ……回避。素早い動きをしたいならこれ。
以上、7つに、LvUP毎に5貰えるステータスポイントを自分好みに振って行く。
剣を武器とするなら、筋力と防御だけに振っているのが普通らしい。私は平均的に振っているけれど。
尚、ステータスを振り直したいなら、課金アイテム(1500円)を買えば良い。
「私は『フジ』です。戦闘スキルは今の所1つも持っていません」
「へー。【スマッシュ】ぐらい覚えれば良いのに」
【スマッシュ】は初級スキルで、2SPで覚えられる。ほぼ全ての武器で使用可能だ。弓やナイフでは使えない。
こうして話している間にも、刺身は売れて行く。
「そうですね。次レベルアップしたら覚えようかな」
「あ、【市場】以外だと、NPCも買えるんだな」
ヒグマの言葉に露店に目をやると、村人が買って帰って行った。
【市場】には、基本的にプレイヤーしか入れない。
「そうそう。シラユキヒメには会ったか?」
「いいえ。幸いにも」
そう答えると、ヒグマはシラユキヒメの事を教えてくれた。
-------------------------------------------------
『白雪姫と7人の小人』と言うギルドがある。
冒険者ギルドの隣に変なポーズで打ち捨てられていたシラユキヒメに同情したプレイヤー達が設立したギルドだ。
彼等はシラユキヒメをギルドに入れ、姫を守る騎士のように、常に誰かが彼女と一緒に行動している。
シラユキヒメが装備しているアイテムは、全て彼等からギルド倉庫を経由してプレゼントされた物だ。
又聞きだが、『優良』又は『最高』の武器・防具を、NPCの鍛冶屋で最大の☆10まで強化した物らしい。
強化は知っているか?
鍛冶屋に、強化したいアイテムと強化素材とルマを渡して強化して貰う訳だが、☆が増えるほど成功率は下がり、失敗するとアイテムは消滅してしまう。それを防ぐには……つまり、成功率を100%にする為には課金アイテム(1500円)が必要だ。18回で2万7千円だな。☆1つ上げるのに、2回強化しなければならないからな。
それ以外にも強化素材がレアアイテムだから、課金で買った方が早い訳だ。
凄いよな~。俺は、幾ら相手が良い子でも・それが使わなくなった物でも、他人に3万以上かけた物をタダではやれんわ。
あ、そうそう。追放された件は、お前さんが悪者にされていたそうだぞ。『酷い事を言われてつい言い返しただけなのに、一部分だけ見た運営に追放された』ってな。
それと、多分、シラユキヒメがやったんだろうが、お前さんのSSが曝しサイトに悪質プレイヤーとして曝されていた。チートだとか書いてあったが。
-------------------------------------------------
「ああ。それは多分、エイユウでしょうね」
私は、エイユウにチートだと思われて責められた事を説明した。
それにしても、曝しか。まさか、曝しサイトに住所が曝されて殺されたとかだったり?
「2日続けてとは、災難だったな」
「ええ。ところで、シラユキヒメが割って入る前の私、困っているように見えました?」
「いや、別に。驚いているようには見えたがね」
ヒグマは狩りに戻り、私は露店の売れ具合を確認して、ブラックリスト機能が有る事に気付いた。シラユキヒメとエイユウをリストに入れる。
さて、次は、スキル【農業】を使おう。
名前:ヒグマ(体型から連想される強そうな動物)
性別:男
髪色:黒
目の色:茶
年代:大人
身長:普通
特徴:メタボ(リアルの体型に似せた)
2014/03/11 一部値段変更。
2014/03/12 フジの所持金を多く変更。