2:ゲートの非戦闘系スキル
いもむし・けむし。
『ゲート』のスキルは、SPを消費して覚える。そのSPは、基本的にLvUPで5SP入る。期間限定イベントなどで貰える事もあるらしい。
戦闘系スキルはLv5から覚えられるが、私はLv20で解放される非戦闘系スキルのみ覚えようと決めていたので、Lv20までの100SPが手付かずで有る。
先ずは、素材入手系スキル。
筋力等は必要無く、疲労感も感じない。なので、リアルではないと不評。
採掘(5SP)……採掘ポイントで採掘用つるはしを使うと、岩石・鉱石・粘土等が手に入る。
伐採(5SP)……伐採ポイントで伐採用斧を使うと、丸太等が手に入る。
採取(5SP)……採取ポイントで採取用草刈り鎌を使うと、薬草等が手に入る。
釣り(5SP)……釣りポイントで釣竿を使うと、魚等が手に入る。
農業(5SP)……種蒔きポイントで農業用鍬を使い種を植えると、あっと言う間に野菜等が収穫出来る。
解体(5SP)……魔物を倒すと、肉・骨・皮等が手に入る。
残り70SP。
次は、加工系スキル。
加工セット購入後、必要な素材を用意しボタンを押すと、MPを消費し完成する。それだけなので、リアルではないと不評。
木工(5SP)……木工セットを使うと、武器・防具等を製作出来る。
金工(5SP)……金工セットを使うと、武器・防具等を製作出来る。
調理(5SP)……調理セットを使うと、料理が出来る。
調合(5SP)……調合セットを使うと、薬等を製作出来る。
裁縫(5SP)……裁縫セットを使うと、衣服等を製作出来る。
装飾(5SP)……装飾セットを使うと、【木工】・【金工】で製作した物に模様等を彫ったり描いたり出来る。
残り40SP。
次は、芸術系スキル。
リアルの実力は全く反映されないし、身体が勝手に動かされるので不評。使い道はクエストのみらしい。そう言う意味でも不評。
音楽(5SP)……歌・楽器演奏が出来る。クラッシック。
舞踊(5SP)……踊れる。社交ダンス。
残り30SP。
その他。
騎乗(5SP)……乗れる大きさの動物等を乗りこなす為のスキル。
運転(5SP)……生き物以外の移動用アイテムを動かす為のスキル。
通訳(5SP)……人の言葉を使わない種族の言葉を理解する為のスキル。
魔物使い(5SP)……戦闘用ペット屋で売っている魔物を使役する為のスキル。このスキルが無いと、通常攻撃しかしてくれない。尚、ペットには満腹度があり、空腹になると所有者を襲う。
アレンジ(5SP)……【レアクエスト報酬】。加工レシピをアレンジ出来るようになる。
行商(5SP)……【レアクエスト報酬】。【市場】以外でも、露店を出せるようになる。
残りOSP。
これで、今現在覚える事の出来る非戦闘系スキルは全て覚えた。
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さて、クエストの中には、青い紙に書かれたものがある。それが、レアクエスト。
人によっては、1年間毎日ログインしても1度も見た事が無いとか。
私はそれを、僅か2ヶ月で2つも受けた。…まさか、その所為で運を使い果たして死んだとかじゃないよね?
1つ目は、15日間(1日2時間)の工房でのアルバイト報酬だった。
必要な物を倉庫から運んで来るという仕事だったが、何故かそれが倉庫に殆ど無く、作業員達は『アレの代わりにコレを使おう』とか『コレしか無いなら、ココをこうしよう』とか、素人の私には、大丈夫なのか・不味いのか判らない事をやっていた。
その報酬が、3万ルマとスキル【アレンジ】だ。
2つ目は、15日間(1日3時間)の行商の護衛&アルバイト報酬だった。
護衛と手伝いをしていた息子が怪我をしたからと言う事で、依頼人と共に【イッチ】の南にある【ニー】村まで行き(徒歩1時間)、取引終了後【イッチ】に戻る。
その報酬が、4万5千ルマとスキル【行商】だった。
因みに、【ニー】村周辺のエリアボスの討伐クエスト報酬が、3千ルマ。エリアボス討伐報酬が安いのか、レアクエストの日給が高いのか…。
安いと言えば、Lv1モンスター『ワーム』から得られるルマは5だったっけ。
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「ムシが…ムシが…」
「大丈夫ですか?」
初めて受けたクエストは、『至急!』と書かれていたモンスター退治クエストだった。
【イッチ】の町の北のフィールドにある依頼人の家を訪ねると、長さ30cm・太さ10cmぐらいの芋虫が庭を這い回っていた。
「むし……むし……」
「……倒して来ます」
依頼人である女性はかなり虫が苦手らしく、まともに話が出来ない状態だった。
庭に出た私は、【初心者セット】のショートソードを芋虫に振り降ろした。
ワームの攻撃は避け易かったので特に苦戦する事も無く、一匹につき10EXP・5ルマずつ手に入れ、10匹倒した所でLv2になった。
更に10匹で庭の芋虫は全て消え、私は依頼人の元へ戻った。
「ありがとうございます! 夫が仕事の日にこんな事になって、どうなる事かと……」
虫が苦手なのに、何故、街の外(このエリアは虫系モンスターだらけ)に住んでいるのだろうか? 旦那さんの仕事の都合?
「お役に立てて何よりです」
報酬200EXP・100ルマを受け取り、Lv3になる。……依頼人から経験値が貰える不思議。まあ、それを言ったら、魔物からお金や武器・防具が手に入るのも不思議なんだけどね。
町に戻って【冒険者鞄】を確認すると、靴19足ドロップしていた。
『ゲート』では、キャラに【運の良さ】という数値が有る。クリティカルヒットが出る確率・アイテムドロップの確率に関係するらしい。多分、どう考えても、レアクエストにも関係あるだろう。
私……『フジ』の【運の良さ】は、92。0~100までの間で92だからだ。
ドロップした靴は全て同じ物だが、品質には違いが有った。
『劣悪』1・『標準』(店売りと同じ)5・『優良』9・『最高』4。『優良』と『最高』は未鑑定状態。鑑定には、鑑定用アイテム(『優良』用1万ルマ・『最高』用3万ルマ)が必要だ。
『最高』を1足だけ残し、後は未鑑定のまま売る事にした。
【イッチ】の【市場】エリアに移動し、露店を展開する。
露店は売れる毎に経験値が入り、露店Lvが上がると置ける数が増える。Lv1では4つしか置けないので、『優良』と『最高』をそれぞれ2足ずつ置いて【市場】を出た。
『劣悪』と『標準』は、NPCの防具屋に売る。
そして、冒険者ギルドで依頼書に目を通した私は、再び虫退治に向かったのだった。
「ケムシ……ケムシが~!」
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あの人、今日もまた虫に怯えているのだろうか?
露店と言えば、嫌な事を思い出した。
あの翌日、露店を確認に行ったら、突然、男性キャラに怒鳴られたのだ。
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「お前、ふざけんなよ!」
金髪を逆立てた男性が、腕を組んで露店前に立ち塞がっていた。
「……え?」
「チートかbotだろ!?」
「何がですか?」
「惚けんじゃねーよ! これだよ、これ! 俺が気付いて買うのを阻止してたから良いものの、詐欺だぞ! 詐欺!」
折角の土・日に、徹夜してずっと見張っていたのだろうか? 凄い正義感だ。
遠巻きにしている人々が、こちらを眉を顰めて見ている。
<警告! エイユウの規約違反を確認。迷惑行為を止めなかった場合、2ヶ月間ゲームから追放します>
「何だと?! 俺が規約違反ってどういう事だ! こいつはどうなんだよ!」
目の前の男が、天を仰いで怒鳴る。彼が『エイユウ』か。
「『不正行為を発見した場合、速やかに運営に通報する事。誤解による名誉棄損を防ぐ為、それ以外の対応を禁じる』の部分だな。それと、昨日も言ったが、【運の良さ】の数値が高い奴は、品質『最高』を普通にドロップするんだぞ」
歴戦の剣士っぽい見た目の男性が、エイユウにそう言った。
<不正行為の通報は、まだですか?>
「まだ通報してなかったの~?」
女性キャラの誰かが、嘲るように呟く。
「ウルセェ!」
<通報を確認。該当プレイヤーの調査終了。不正行為を確認出来ず>
早いな。
「あ……有り得ねぇ! ちゃんと調べてねーんだろ!?」
「認めろよ。そんで、そいつに謝罪しろ」
先程の剣士のその言葉にエイユウは反発して、運営が手抜きしたとか喚いた。
「あれでエイユウとか。名前負けだよね~」
また誰かが嘲笑った。
「今言ったの誰だ!? つーか、お前が俺に謝れよ!」
エイユウは、平手で私の左肩を突いて怒鳴った。
<エイユウの迷惑行為続行を確認。追放します>
私はエイユウが倒れるのを避けた。
暫くしてやって来たギルド職員が、エイユウを【市場】から移動させた。
「災難だったな」
剣士が私に話しかけて来た。
「ええ。でも、貴方は信じてくれましたし」
「俺だけじゃないぜ。傍から見たらただの営業妨害だし。殆ど皆、あいつの言う事なんか信じてなかったよ」
私の露店は、あっと言う間に売り切れた。
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あれ以来、露店名を『【運の良さ】80以上のウィステリア』に変えたからか、同じようなトラブルは起きなかった。
エイユウとも、2度と遭遇したくない。
さてと。気分を変えて、採取に行くか。
名前:エイユウ(本名から)
性別:男
髪色:金
目の色:青
年代:大人
身長:高い(180cmぐらい)
特徴:髪は逆立っている(スーパー○イヤ人のように)