表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

26:リゾートアイランド

「ところで、報酬は何だったんだ?」

 集会所に入ると、サイズがそう尋ねて来た。

「30万ルマと『リゾートアイランド利用券(永久)』3枚です」

「リゾートアイランドか。一旦、港街【シー】まで行かなければならないな」

 尚、『リゾートアイランド利用券(永久)』は40万ルマだそうだ。



 港町【シー】に行くには、Lv50以上推奨エリアを抜けなければならない。まあ、『空飛ぶ絨毯』に乗れば大丈夫だろう。

 と言う訳で、翌日火曜日の夜、私達は『空飛ぶ絨毯』に乗って港街【シー】を目指した。

 私は追って来るオーク共が怖いので振り向かない。

「捕まえてごらんなさーい」

 サイズが棒読みで呟いた。……浜辺で追いかけっこだからですね。

「しかし、トレインは良くないと思うが……」

「では、爆弾を」

 私はアイテムボックスから爆弾を取り出して、着火してオーク共に投げた。……爆発音が轟く。私はグロ耐性が無いので振り向かない。まあ、【初心者向け】の『ゲート』だから、大してグロくは無いかもしれないけれど。



 港町【シー】に入ると、海の匂いがした。

「ねぇ! リゾートアイランド、行こうよぉ!」

「えー? あそこ、モンスターいないのに、何しに行くんだよー」

「……この、バトル馬鹿!」

 そんな会話をしているカップル風の2人を横目に、波止場へ向かう。

「此処でしか売って無い食材、ありますかね?」

「あるんじゃないか?」

「鯨肉があるぞ」

 クルマが教えてくれた。

「あー……この間、釣りました」

「釣れるのか……鯨が……」

「鯨と言えば……リアルではもう何年も食べて無いな」

 サイズが鯨肉を見ながら呟く。

「私もです。どんな味だか忘れてしまいました」

「私も、給食で食べたのは覚えているが…」

「後で【調理】しますね」



 リゾートアイランドへは船で15分で着くらしい。

 因みに、北の大陸へは30分だそうだ。

「フジ、大丈夫か?」

「なんで……ふなよい……?」

 私はソファにぐったりと横たわっている。

「そんな状態異常は無い筈だが……?」

 そう! 無い筈なのに!

「リアルで船酔いするからじゃないか?」

「します……」

 実際に揺れていると思っちゃった訳か……。

「もう直ぐ到着だぞ」

「やっとか……きたのたいりくにはいかない……」

「特殊転送石を貰ったんだろう? 1度だけの辛抱だぞ」

 もう1回でも嫌です。



 リゾートアイランドに着いたが、船酔いが治らない私はベンチに横たわっていた。

「ふたりは……さきにおよいでいていいですよ……」

「別に、そこまで泳ぎたい訳じゃないし」

「利用券があるから来ただけだからな」

 うちのギルドは、全員テンション低いなー。


 結局、良くなった頃には2人のログアウト時刻になってしまったのだった。


-------------------------------------------------


 翌朝。ギルドエリアからリゾートアイランドに移動した私は、スキル【行商】で露店を開き、水着・浮き輪・ビーチサンダル等を並べて放置した。

 リゾートアイランドにはモンスターはいないが、採取ポイントはあった。

 島の地図の看板が在ったので見ると、海水浴以外にもダイビングや釣り(勿論、スキルを使わずに釣る場所)やサーフィン等のマリンスポーツ・ゴルフ・温泉・スキー等も楽しめるようだった。

 尚、ここを転移ポイントに設定出来るのは、特殊転送石と『リゾートアイランド利用券(永久)』の両方を持っている者のみらしい。

「遊園地とかも在るんだ……」

 取り敢えず、この辺りは暑いのでアイスキャンディーを買って食べる事にした。

「ヴェルも食べる?」

『うん!』

 暑いので、ギルドエリアに戻って食べた。



 夜になったので露店に向かうと、水色の髪の女性キャラが私を待っていた。

「あのぉ。この露店の人ですよねえ?」

「はい」

「私ぃ、今度同じギルドの人と『結婚』するんですぅ」

 甘ったるい喋り方だなぁ。

「それでぇ、ウエディングドレスが欲しいんですけどぉ」

「あ、はい。どのような物を」

「このデザインでぇ、よろしくぅ」

 彼女は数枚の紙を押し付けて来た。

「今度の日曜なんでぇ、宜しくねぇ!」

 彼女は楽しそうに走り去りながらそう言った。

「……日曜の何時取りに来るんだろう?」



「そう言えば、『結婚』システムなんてものもあったな」

 私は、暫くしてログインしたクルマに先程の事を話した。

「強くなるんですか?」

「いや。特別なイベントやアイテムはあるらしいが」

「強力な武器・防具が手に入るんですか?」

「そうでもないらしいが」

「じゃあ、『結婚』する人は少なそうですね」

 あの人は、何故『結婚』するんだろう?

「そうだろうな。ただ、『ゲート』はVRMMOで唯一、同性キャラとも『結婚』出来るゲームなんだ」

「へー」

 強くなる訳でも強力なアイテムが手に入る訳でもないのに?

「それはそうと、それ作れるのか?」

 女性に押し付けられた紙を見て、クルマが尋ねる。

「まあ、多少違うくなるかもしれませんが、【アレンジ】を使えばなんとか……」

「材料は大丈夫か?」

「はい。問題ありません。それより、今日は何をしますか? 海水浴以外も出来るみたいですよ」

「では、温泉に行こう」

「温泉……」

 つまり、裸になる……。

「恥ずかしいので嫌です!」

「見えないんだぞ?」

 湯気で隠れるらしい。

「でも、恥ずかしいです!」

「そうか? では、水着着用の浴場は?」

「あ! ありましたね。そう言えば」


 サイズのログインを待ち、スパへ行く。

「好きな水着を選んでください」

 二人共、競泳用水着を選んだ。……何処行く気?


「何やら、視線を感じる様な……? 何か変ですか?」

 プールサイドを歩きながら、私はクルマに尋ねた。

「イケメンだからじゃないか?」

「浮き輪が巨大なドーナツにしか見えないからじゃないか?」

 サイズが呆れたように言う。

「あー、これ……面白武器、好きなんですよね」

「武器だったのか……」

「武器は要らないだろう」

 この島にモンスターがいたとしても、街中にいる筈が無いからね。

「だから、浮き輪として使おうと思ったんですが……目立つようなので止めます」

 私は、浮き輪型鈍器を【冒険者鞄】に仕舞った。

 しかし、それでも視線を感じる。

「まだ見られている様な……?」

「だから、イケメンだからだろう」

「フジの事だから、変な奴に見られていたりして」

「サイズ、縁起でもない事を言わないでください」



 彼等は知らない。その想像が当たっている事を。

「フジくんの裸体~……ハアハア」

「スパで盛るのは止めろ!」

 とか。

「フジって受けよね!」

「えー?! 攻めでしょう?」

「二人共! こんな所で止めて!」

 とか。



「久しぶりに泳いで疲れました……」

 着替えた私は伸びをする。

「そうか? 疲れるほど泳いでいないと思うが?」

「遊んだだけだしな」

「……多分、運動嫌いだからですね」

 クルマとサイズは、運動好きそうだ。

「運動嫌いが、よくVRに手を出したな」

「のんびりソロプレイで、ある程度Lvを上げたら、生産だけしようかと思って」

 私は、サイズの疑問にそう答える。

「……それは、申し訳無い……」

 クルマが申し訳なさそうに言った。

「気にしないでください。2人とPTを組むと私が手を出す隙が無くて、結果的に運動せずに済んで助かってます。戦わない事で、文句を言われる事も無いですし」

 止めは刺すけど。レアドロップの為に。

「まあ、邪魔になられるよりは何もしないでくれる方が有難いし。フジの【運の良さ】のお陰で、レアドロップが大量だしな」

「お互いメリットがあるか……」

「そう言う事ですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ