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22:仲直りって何だっけ?

 木曜の夜。

 クルマとサイズと共に狩りをしていると、1人の温和そうな少年が話しかけて来た。

「フジさんですね? 初めまして。ギルド『白雪姫と7人の小人』のミラーです。シラユキヒメと仲直りして貰えませんか?」

 初めて見る顔だ。

「仲直り……ですか? お断りします。許して貰いたいと思いませんし、彼女も私を許す気は無いでしょう」

「シラユキヒメは優しいですから、誠意を持って謝罪したら許してくれますよ」

「フジが謝罪したら、そちらもフジに謝罪するんだろうな?」

 サイズが口を挟むと、ミラーは首を傾げた。

「謝罪する必要があるとは思えませんが? シラユキヒメに恥をかかせたフジさんが悪いんですし」

「……仮に仲直りしたら、その後どうするんですか?」

 私が尋ねると、ミラーは至極当然のように答えた。

「『白雪姫と7人の小人』に移籍して貰います」

「……こちらのギルド『ウィステリア』は3人しかいないので、私が抜けたら解散になるんですけど」

「他のお2人は別のギルドに入れば良いだけですよ」

 ミラーは、少しも悪いと思っていない様子だ。

「勝手な事を……!」

 サイズが睨み付けるが、ミラーはその理由が理解出来ないのか首を傾げた。

「何故仲直りするとフジがそちらに移籍する事になるのか、理解出来ないんだが?」

 クルマが疑問を口にする。

「仲直りするんですから、当然でしょう?」

「何故? 仲違いする前にそちらに所属していた訳でもないのに」

「今後仲良くする為ですよ」

「その為にこちらに解散しろだなんて、自分達さえ良ければそれで良いのか?」

「そちらが3人しかいないのですから、仕方の無い事なのですよ」

 ミラーは言い聞かせるように答えた。

「私は移籍する気はありません」

 私の言葉に、ミラーは眉を顰めた。

「フジさん。我儘を言わないでください」

 言ってるの、そっちだから!

「社会に出れば、嫌いな人とも仲良くしなければならないんですよ?」

 一応、出ていますけどね。何で、大学生だと思われているんだろう?

「……そうですか。で、仮に私がそちらに入るなら、クルマとサイズも入れてくれるんですか?」

「いいえ。お2人は関係ありませんし、フジさんに2度と関わらないで貰いたいそうです」

 舌の根の乾かぬうちに。嫌いな人とも仲良くしろよ。

「お前達は社会に出ないのか?」

「他人の交友関係に口出しするな。こちらに従う理由は無い」

 サイズの皮肉とクルマの正論に、ミラーは顔を強張らせた。

「……貴方達は、フジさんの為になりません。貴方方が甘やかしては、フジさんは人間的に成長しませんから」

 大きなお世話だ。

「私達がフジを甘やかしたのを見た事があるのか?」

 彼等の前で3人揃ったのは前回が初めて――プリンスの時はギルド未結成だったので除く――だし、ミラーとは初対面だ。

「……私達とフジさんの問題なのに、口を挟んでいるじゃありませんか」

「こちらのギルドを解散させようとしたり・フジと我々の交友を断とうとしているのに、お前達とフジだけの問題な訳無いだろう!」

「文句も言わずに言いなりになれと言うのか!? 我々はお前達を甘やかす気は無い!」

「そんな……そう言う事ではなくて……」

 ミラーは怒鳴られたからか、或いは、思い通りに行かないからか、泣きそうな表情を浮かべた。

「フジさんにシラユキヒメと仲良くして貰いたいだけです! 邪魔しないでください! シラユキヒメに何の恨みがあると言うんですか!」


<警告! ミラーの規約違反を確認しました。ギルドへの強引な勧誘を止めなかった場合、1ヶ月ゲームから追放、及び、ギルド『白雪姫と7人の小人』を抹消します>


 ギルド抹消は、余りにもギルドメンバーの問題行為が多いからだろう。

「強引な勧誘なんてしていないのに……」

 ミラーは不満そうに空を見上げた。

「今日の所は引き下がりますが、シラユキヒメは別アカウントで戻って来ます。その時には謝罪して・こちらに移籍して貰いますから」


<ミラーのギルドへの強引な勧誘続行を確認。1ヶ月ゲームから追放、及び、ギルド『白雪姫と7人の小人』を抹消します>


 容赦無いな。『ゲート』の管理AIは。…流石【初心者向け】と言うべきか?

「これで、暫くは平和ですかね?」

 露店のブラックリストにミラーを入れながら、私はそう呟いた。

「シラユキヒメが、何時別アカで戻って来るかによるな」

「そ、そうですね」


-------------------------------------------------


「××国で国産VRMMOに因る死者が出たってさ」

 金曜の夜。【サン】の【市場】に『露店』を出したら、シノブがそう話しかけて来た。

「痛みをリアルにしたんですか?」

「そうらしい。何考えてんだか」

「β版ですか?」

「いや。正式サービス版。β版で、『痛みが軽過ぎる』と言う意見が多かったから強くしたらしいけど」

 シノブは、信じていないようだ。

「で、国内の反VRゲーム団体は気勢を上げましたか?」

「当然。『このままでは我が国は衰退する』ってさ」

「……若者が死ぬから?」

「それもあるけど、『人を殺す事に抵抗が無くなり、その結果、殺人が増えたり・戦争になったりする』だと」

「……殺人に抵抗が無くなった人が総理になって?」

「いや、『兵士育成ゲームだ』って」

 今時、剣や槍を使った戦争になるなんて、何処と戦うと思っているんだ? あ、でも……。

「VRのシューティングゲームってありましたっけ?」

 シューティングゲームなら近代兵器もあるよね。

「開発中」

「……もしかして、それを中止させる為に禁止運動をしているグループも?」

「ああ。怪しい著名人が何人かいるな」

 外国の工作員?

「実際、効果はあるんですかね?」

「俺はミリオタじゃないから解らないが、リアルに再現出来たら確実じゃないか?」

 確かに、再現出来たら確実かもね。


-------------------------------------------------


「××国と言えば」

 夜。クルマに昼間の話をしたら、彼は何かを思い出したのかそう言った。

「去年、VRのエロゲのやり過ぎで死者が出た事があったな」

「……それは、寝食を忘れて?」

「ああ。廃プレイが原因の腹上死だそうだ」

 相手がいなくても、腹上死なの?

「それはそうと、ゲームの影響にも国民性があるのか、我が国では凶悪犯罪が減り・××や××では増えたらしい」

「そうなんですか? でも、長期的にどうなるかは分かりませんよね」

「まあ、そうだな」

 そこへ、サイズがログインして来た。

「公式HPを見たか? タイアップの課金アイテムが追加されるそうだ」

「タイアップ?」

「ああ。ファッションブランドが実際に販売している服と同デザインのアイテムが買えるようになるんだが、それを買うとリアルでも服が届くんだと」

「え? つまり……服を買うおまけとして同デザインのアバター用の服が貰えると言う事ですか?」

「そう言う事だな」

「と言う事は、異性アバターでプレイしている人は困りますね」

「買わなければ良い」

 そりゃそうだ。

「服以外にも随時追加されるそうだ」

「しかし、服や靴のサイズはどうするんだ?」

 クルマが疑問を口にする。

「ユーザー登録で登録出来るようにするそうだ」

「登録しなかったら?」

「購入した際に登録を促すメールが送られてくる。それでも登録しなかったら、一番売れないサイズの服を送るそうだ」

 それって、法的に良いの?

「売れるんですかね?」

「さあな」

 どちらにしろ、課金アイテムは死んでいる私には買えない。……生前も課金した事は無いけど。

名前:ミラー(『白雪姫』に出て来る魔法の鏡から)

性別:男

髪色:緑

目の色:緑

年代:大人

身長:低い(160cmぐらい)

特徴:いかにも神官な装備

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