13:ギルド結成
【市場】に行き露店を確認すると、水槽は売り切れていた。
『ありがとう! これで、メダカが飼える!』・『餌は無いの?』等とコメントが残されていた。
メダカも釣れるのか……【運の良さ】100で釣れるだろうか? 後で、ヴェルを【ペットBOX】に入れて釣ってみよう。
尚、ペットに出来るのは6頭までで、それ以上は、どれかを手放すか・課金アイテム(500円)で【ペットBOX】を拡張する事になる。
露店を回収し【市場】を出ると、私は冒険者ギルドへ向かった。
【サン】の北エリア関連のクエストを受ける。……ストーンゴーレムか。攻撃系スキルを持っていないと厳しそうだ。まあ、ヴェルがいるから大丈夫だろうけれど。
「フジ……それは何なんだ?」
北門へ向かうクルマとばったり会うと、私が手にしている物について尋ねられた。
「ハンマーと楔です。ストーンゴーレムをこれで倒そうかと」
「……そうか。攻撃系スキルを覚えていないんだったな。しかし、『最高』品質の剣なんだから、普通に戦っても大丈夫だろうに」
「あ! 確かに……」
普通より攻撃力が高いと言う事をうっかり忘れていた。
でも、まあ、折角なので、1度位は試してみよう。
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クルマを『空飛ぶ絨毯』に乗せてやり、フィールドに出て【ニー】へ行く道との分かれ道に向かっていると、女性の声が聞こえた。
「好い加減にしてくれ! 邪魔だと言うのが解らないのか!?」
クルマと顔を見合わせて、『空飛ぶ絨毯』を降りると声が聞こえた林の中へ走る。
「強がる必要は無いよ。俺が守ってやるから」
「だから……!」
「どうかしたのか?」
クルマが女性に声をかけた。
私は相手の男を確認して、思わずクルマの陰に隠れた。男が、ギルド『白雪姫と7人の小人』の1人だったからだ。
「この人が、私の狩りを邪魔するんだ!」
「邪魔をしている訳じゃない! 女の子独りじゃ危険だから、守ってるんだ」
<警告! プリンスの迷惑行為を確認しました。迷惑行為を止めなかった場合、1ヶ月間ゲームから追放します>
「彼女は、迷惑だなんて思ってない!」
やっぱり、この男が『プリンス』なのか。
「彼女は邪魔されていると言っていたが」
「遠慮しているだけさ」
「遠慮なんてしてない! 大体、このゲームに男女での力の差は無いんだぞ!」
怒った顔で女性が怒鳴る。
「それは解っているけど、女の子には戦闘はきついだろうし」
女性キャラだからと言って、中の人も女だとは限らないとは思わないのだろうか?
「大きなお世話だ!」
「そこまでしつこいと、彼女を見下して優越感に浸っているように見えるが」
「何だと!?」
クルマの言葉に、男は怒りの声を上げた。
「俺は彼女の為に親切で言っているんだ! ……ん? お前の後ろに隠れている奴は何なんだ!?」
しまった! 気付かれた!
「あ! お前……! お前がこいつに自分の代わりに言うよう命じたんだな! この卑怯者! 男として恥ずかしくないのか!?」
回り込んだ男の言葉に、私はうっかり言い返す。
「シラユキヒメやカグヤヒメじゃあるまいし、命じたりなんかしない」
「2人はそんな事しない! 彼女に嘘を吹き込むのを止めろ!」
「その2人は、何度か警告を受けているプレイヤーだな。お前、そいつ等の仲間なのか?」
女性がその顔に、益々嫌悪感を滲ませた。
「2人が警告を受けたのは、全部そいつの所為なんだ!」
「そんな嘘、誰が信じるか!」
「……お前、もしかして、ギンガと同じギルドか?」
クルマの質問を、男は肯定した。
「クルマ。ギンガって人に何かされたんですか?」
「ああ。私の【運の良さ】が1桁と知って、散々馬鹿にしてくれた」
『白雪姫と7人の小人』は、そんなんばっかりか!
「なあ? そいつは……フジは、本当に酷い奴なんだぜ? 顔が良いからって、そんな奴を信じたら後悔するぞ」
「彼の顔は関係無い。お前が気に入らない」
「意固地になるのは良くないぞ! さあ、素直になって、俺の胸に飛び込んでおいで!」
<プリンスの迷惑行為続行を確認。追放します>
プリンスは仰向けに倒れた。
「やっと解放された……」
女性は安堵の息を吐く。
「2人共、済まなかったな。ありがとう」
「いや。大して役に立てず、申し訳無い」
「私は、殆ど隠れてましたし……」
「気持ちは解る。1ヶ月後戻って来るだろうし、遠くからでも何処に居るか分かれば避けられるんだが……」
女性はそう言って溜息を吐いた。
本当に、そんな便利なスキルがあればなぁ。
私は忘れない内にと露店を展開し、ギンガとプリンスをブラックリストに入れた。
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分かれ道を東へ進み橋を渡ると、大きな岩が沢山転がる荒野が見えた。
「それでは、私は採取しつつのんびり狩りますので」
「ああ」
クルマがストーンゴーレムと化した岩と戦うのを尻目に、私は【危険察知】を使いながら【採掘】をする。
暫くして、つるはしの耐久値が1になったので止め、ストーンゴーレムを狩る事にした。
【忍び足】で岩に近付き、【見破る】で見付けた亀裂に楔を打ち込む。
「っせいっ!」
楔をハンマーで更に打ち込むと、ストーンゴーレムは砕けた。
そう言えば、ゴーレムの体には文字があってその内の1文字を消せば壊せるとか何かで見た事があるが、ゲームのゴーレムにそんな物は……。
「在った……」
壊したゴーレムの額に文字が在った。でも、どの文字を消せば良いんだろう? ……良し。試してみよう!
「随分、簡単に倒しているな」
暫くして、気付いたクルマが話しかけて来たので説明した。
「なるほど。そんな弱点が有ったのか」
私はクエスト分倒したので、魔物が近付いたら引っかかるよう【細工】で罠を設置し、川で【釣り】をする。
日が暮れたので、クルマに声をかけた。
「クエストアイテムがドロップしないなら、PT組みましょうか?」
「……ああ。済まない」
LvUPしたら、【暗視】を覚えよう。暗い中狩りをして、私はそう誓った。
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「今日は本当に助かった」
『空飛ぶ絨毯』で【サン】に帰る途中、クルマからお礼を言われた。
「私のペースで狩りをして良いなら、今後も組みますか?」
「それは助かる! 何なら、フジと同じギルドに入っても良いが……」
「あ、私、まだギルドに入っていないんですよ」
「そうなのか」
そこで、先程の女性が林から出て来た。
「あ。貴方達も戻る所か?」
「はい。歩いて帰るんでしたら、良かったら、乗りませんか?」
「そうだな。折角だし、お言葉に甘えよう」
お互い名前を教え合い、彼女の名前はサイズだと知った。
「サイズのギルドは、どんなギルドですか?」
「ギルドか……。つい先日、解散になってな……」
「え?」
「サブマスターが問題を起こして」
つい先日に問題を起こしたプレイヤーと言えば……。
「もしかして、モモタロウ?」
「そうだ。全く、馬鹿な奴だ。Lv100まで上げておきながら……」
「動画を見たが……凄かったな、アレは」
モモタロウがジャイアント・キャットの集団に報復されたのを、誰か動画に録っていたらしい。
「あいつは、やるゲームを間違えたな。『ダスク』なら、アカウントもアバターも削除されないだろうに」
『ダスク』での事だったら……モモタロウは、ジャイアント・キャットに生きたまま食べられたかもしれないな。
「ギルドどうしますか? 私が知っているのは、『森のくまさん』か『猫好き友の会』ですが」
「フジが作っても良いんじゃないか?」
「確か3人必要じゃなかったですか?」
「なら、私が入ろうか?」
サイズがそう言ってくれた。
「じゃあ、サイズがギルドマスターお願いします。私はリーダーに向いて無いから」
「私も向いているとは思えないが」
「私よりは向いていると思います」
「別に向いていなくても良いから」
二人で譲り合っているとクルマがそう言って、私がギルドマスターをする事に決まってしまった。
「……ギルド名は?」
「マスターが決めてくれ」
「え~……じゃあ、露店と同じ『ウィステリア』で」
こうして、ずっとソロでやりたかった筈の私は、ギルドマスターになってしまったのだった。
名前:サイズ(鎌をメイン武器にしたかったから)
性別:女
髪色:金
目の色:茶
年代:大人
身長:高い(170cmぐらい)
特徴:男言葉
名前:プリンス(女性達の王子様になりたいから)
性別:男
髪色:金
目の色:青
年代:大人
身長:高い
特徴:ペットは白馬