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12:コボルトの洞窟

 洞窟に辿り着いたのは、20分後だった。

 他はどうだか知らないが、『ゲート』ではペットに乗っていてもエネミーは襲って来るらしい。しかし、この辺りのモンスターはヴェルより大分Lvが低いので、襲うどころか逃げて行った。

 ところで、私は【騎乗】を使っていたから気にならなかったが、もしかして、クルマは乗り心地悪かっただろうか?

 因みに、【騎乗】はLv2になった。


 ダンジョンに入る前に、クルマをリーダーにPTを組む。

「スキルのレベル上げをして良いですか?」

「ああ。構わない。……ああ、そうだ。私は剣と槍を使うが、フジは?」

「私は剣と弓ですね。ただ、スキルは覚えていませんが」

「では、何のスキルを上げるんだ?」

 クルマは不思議そうだ。

「盗賊系スキルの【見破る】・【解錠】・【忍び足】・【細工】・【危険察知】です」

「なるほど」


 『ゲート』のダンジョンはグループ毎に専用ダンジョンが生成されるので、中には私達以外のプレイヤーはいない。

「じゃあ、【見破る】で罠を探しつつ【危険察知】で敵を見付け【忍び足】で敵に近付きますね」

「ああ」

 音を立てても敵に気付かれない所までクルマと一緒に移動し、【忍び足】で近付き背後から斬る。

「あれ?」

 1撃でコボルトは死んだ。

「Lv23だと1撃なんですね」

「【筋力】に因るだろう」

「ああ。そう言えば、品質『最高』だから……」

 それに、【運の良さ】が高いので、クリティカル・ヒットだったのだろう。

 尚、ドロップしたアイテムは、クルマ・私の順で振り分けられる設定だ。

「流石の【運の良さ】だな」

「クルマは、店売りのLv15装備ですか?」

「そうだ」

「じゃあ、Lv23の品質『最高』装備が余っているので、良かったら……」

「余っているのか……」

 鎧・籠手・兜・足鎧・剣を、先程ドロップした素材と交換する。


「あ、宝箱!」

 暫く進むと、金色の宝箱が目に入った。

「なっ!? 金……だと?!」

「え?」

 クルマの説明によると、宝箱は木・鉄・銅・銀・金の5種類在り、銅がレア・銀がスーパーレア・金はウルトラレアと呼ばれているらしい。

「……まあ、装備の『最高』だってスーパーレアでしょうし、それが普通にドロップするんですから、金の宝箱だって出ますよ」

「……全く、羨ましい限りだな」

「はは……」

 【細工】は罠を解除する事も出来たので宝箱を囲むようにある罠を解除し、宝箱に【解錠】を使う。

「金の宝箱は、【上級解錠】でも難しいらしいぞ。だから」

「え?」

 私は蓋を開けながら、振り向いた。

「……上級なのか?」

「いいえ。全く。……運が良かったんでしょう」

 【上級解錠】を持っていない人は、課金アイテムである『金の鍵(1000円)』を使うらしい。

 宝箱の中身は、『経験値3倍の巻物(1時間)』だった。

 因みに、課金では2倍までしか売って無い。

「これ、どうします?」

「フジの物で良いだろう」


-------------------------------------------------


「しかし……まあ……凄いな……」

 私が【冒険者鞄】から出したサーモン丼を食べながら、クルマが言った。サーモン丼の事では無い。

「金の宝箱ばかりとは……」

 そう。ここまで見付けた宝箱は、全て金だったのだ。

「自分でもビックリです。しかも、全部解錠出来ましたからね」

 お陰で【解錠】は、『経験値3倍の巻物』を使ってLv10まで上がっている。他の4つはLv5だ。

 因みに、クルマにも分けてある。

「まさか、1回も失敗しないなんて不思議ですね」

『見て』

 餌を食べていたヴェルが、顔を上げてそう言った。

「え? 何を?」

『ペット図鑑』

 ペット図鑑を開いてジャイアント・キャットのページを読むと、こう書かれていた。

 『【運の良さ】+10』。

 私の【運の良さ】は92なので、合わせて上限の100になっていると言う事か。

 【解錠】の成功率に【運の良さ】が影響するなんて、【器用さ】の立ち場が無い。

「……クルマ。ジャイアント・キャットをペットにすると、【運の良さ】+10だそうです」

「!? 急いでLvを40まで上げて猫島へ行こう!」

 クルマは勢い良く立ち上がった。

「では、さっさとオークを倒しましょう。私が止めを差せば、ドロップするでしょう」

 これまでの戦闘で、PTでは、止めを刺したキャラの【運の良さ】がアイテムドロップに関係していると言う事が判っていたからだ。


 直ぐ近くのオークとゴブリン8頭がいる部屋を覗き、オークに向かって毒矢を射る。

「では、ゴブリンは宜しくお願いします」

「オークは?」

「矢に毒を塗ってありますから、これで終わりです」

 こちらに向かって来たゴブリンを、クルマはスキルを使いあっさりと倒した。

「……やっと、ドロップしたな。ありがとう」

「どう致しまして。では、戻りましょうか」


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 私達はダンジョンの外に出ると、またヴェルに乗って【イッチ】に戻った。

「これから、どうするんですか?」

 クエストの報酬を受け取り、私はクルマに尋ねた。

「【サン】に行き、土曜日のDランク昇格試験まで周辺でLvを上げるつもりだ」

「そうですか。私は、【騎乗】のレベル上げの為にヴェルに乗って【サン】へ向かいます。……良かったら、乗って行きます?」

「そうだな。お願いしよう」

『クルマ、猫好きかも。ずっと撫でてたよ』

 ヴェルがそう教えてくれた。



 【サン】に着くと、【騎乗】はLv3になっていた。

 途中、狩りをしていた低Lvプレイヤー達が、馬サイズで緑色のヴェルを見て目を丸くしていた。

「よう。フジ! PT組んだのか? どういう風の吹き回しだ?」

 その声に顔を向けると白馬のオジサマ……白馬に騎乗したヒグマがいた。

「【運の良さ】が1桁でクエストアイテムがドロップしないからと、頼まれまして」

「それは、作り直すべきじゃないのか?」

「3連続1桁で、諦めたんだ」

 クルマの言葉に、やはりヒグマもバグを疑っていた。


 クルマを冒険者ギルドで降ろし、私は【運転】のスキルレベルを上げようと乗り物屋へ向かった。

「いらっしゃいませ」

「『空飛ぶ絨毯』をお願いします」

「ありがとうございます。こちらからお選びください」

 私は、1番手触りが良かった物を選んだ。700万ルマだった。


『乗れるかな?』

 1m50cmぐらいの高さに浮かんでいる絨毯に手をかけて、ヴェルが乗りたそうにしている。

「え~? ど、どうだろう…?」

 流石に無理じゃないだろうか?

 しかし、ヴェルは飛び乗った。その所為で、乗っていた私は大きく沈んだ絨毯から転がり落ちる。

「……大丈夫か、フジ?」

「……は、はい。……ありがとうございます」

 運良くこちらに向かって来ていたらしいクルマに受け止められたので、地面に頭を打つ破目にはならずに済んだ。

 まあ、打った所で、リアルじゃないのだから、少し痛くてHPが減るだけで済むだろうけれど。

 周囲から黄色い悲鳴が聞こえた気がするが、気の所為だと思っておこう。

『フジ様。ごめんね?』

「クルマのお陰で怪我しなかったから良いけど……今度から気を付けてね?」

『うん』

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