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放送する天会

「他人との触れ合いやぶつかり合いがあってこそ、人は成長していくのよっ!!」


天長がいつものように大きな胸を張って何かの本の受け売りを偉そうに語っていた。


受け売りっぽいが、確かに天長らしい言葉な気もする。


「だから準は、やりたいことを素直に言いなさい?」


「や、やりたいこと?」


「そう!! た、例えば……その……えっと……私を……その……。 ……ん?この場合、私と、の方が……?  いやいやでもそんな……」


天長が両手で顔を覆って頭をブンブン振っているが、手で隠れていない部分を見るとすごく顔が紅潮していることがわかる。何を考えてるんだこの人。


「……話を元に戻すわ!!」


「最初からズレてないですけどねー」


アリルの不機嫌ツッコミがすかさず入る。また黒飴をコロコロ舐めている。


「要するに私はラジオをやりたいのよ!!」


天長が机をバンバンと叩く。意見を強く主張したい時の天長の癖だが、そこまで音が大きいわけでもないので不快ではない。


「なるほど♪ それでノリさんがいるんですね♪」


今のはアリフだ。





「だからその呼び方やめろォォォォ!!」





今叫んだのが高上尊典たかがみみこのり。自称16歳だが本当は23歳。


短髪な黒髪に煤のついた顔。工場の人のような作業着をいつも着ているが、いい意味で似合っている。


機械関係のスペシャリストで、いつもオリジナルな物を発明している。


お好み焼き・たこ焼き・焼きそばが大好物で、よく歯に青ノリがついていることから、あだ名はノリさんだ。今日ももちろんついてる。……半分わざとじゃないか?これ。





「ノリさん。準備できた?」


あまりに年齢が上に見えるノリさんだから、天長ですらつい敬称をつけてしまう。


「おうよ!! バッチリ電波ジャックできるぜ!!」


「……そんなことしていいんですか?」


疑問が俺の口を出る。


「大丈夫よ。悪用するわけじゃないし」


「実は政府にも許可を取っていますからね」


「うぉっ!! メアいたのかよ!?」


「私は気づいてたけどね」


天長が腕を組み何故かドヤ顔で言う。


「はい、最初からいました。あといつもお願いしてますが、私のことはメアではなく龍馬と呼んでください。念のためです」


何に対しての念のためなんだ……。そして今日はポ◯モンサ◯シのお面か。


「いたんですね……」


「やっぱり何度見てもこの人怖いです……前回の会議のこともあって、もうお化けな気しかしません……」


と言っているのはアリフとアリルだ。


といういつもの流れはさておき。


「ちょうど午後3時ね!! それじゃ、始めるわよ!!」


『おー!!(おー!!)』


「お、おう……」


戸惑ってる俺と、相変わらず椅子の上に正座してクルクル回っているメアだけ乗り遅れる。





ON AIR





アリス「ウラヌスグループの!! 全惑星に告げる!!」


準「放送範囲でけぇ!!」





♪ オープニングBGM ♪





アリス「さあ、始まりました。ウラヌスグループの全宇宙に告げる」


メア「もう番組名変わってるのはいいんですかねぇ」


アリス「この番組は、ウラヌスグループ、海◯コーポレーション、イン◯ストリアルイリュージ◯ン社、落雷文庫、いっ◯く堂の提供でお送りします」


準「一つ個人単位が入ってないかっ!? それ会社じゃないぞ!? 任◯堂みたいなノリで言ってるけど個人だぞ!?」


アリス「まぁホントはどこからも貰ってないけどね」


アリフ「あ、やっぱりそうですよね? よかったー……会計担当の私にミスがあったのかと思って、今それぞれの会社に電話しちゃうところでした……」


アリル「……」


アリス「こーらアリル!! もっとテンション上げなくちゃダメじゃないの!! リスナーは、もっと、こう、女の子の元気な会話を望んでいるんだから!!」


アリル「は、はぁ……」


ノリ「もしかして柄にもなく緊張かァ? 結構かわいいところあんだなー」


アリル「はぁっ!?違いますし!! 勘違いするならいっそ死んでください。三回回ってワンと鳴いて死んでください」


準「こらこらこら。これもう放送中だから、そういう汚い言葉は控えて控えて……」


アリス「お便りのコーナー!!」


準「スルー!? ラジオなのに、空気の流れ完全スルー!?」


メア「それがこの人」


準「なんか今日のメアは割とマトモな発言だな」


メア「私のことはメアではなく龍馬と」


アリス「さて、一通目のお便り」


準「進行重視かっ!! 会話の流れ無視ですかっ!!」


アリス「『天会の皆さん、こんにちワンダフルー!!』はい、こんにちワンダフルー!!」


準「え、なにその恥ずかしい挨拶! 恒例なの!?」


女性陣『こんにちワンダフルー!!』


準「俺以外の共通認識!?」


ノリ「台本に女性のみって書いてあるぜェ」


準「あぁそっか。それならよかった……って台本!? 俺だけ貰ってないぞ!? 誰か貸すか見せろ!!」


メア「前日に貰ったので皆さん覚えて家に置いてきていると思うんですがねぇ……」


準「ああああああああ!!」


アリフ「あ、あの、私ので良ければ……。覚えられなかったから持ってきてますし……一緒に見ませんか?」


準「おおっ!!それは助かるぜ、さすが主!! どれどれ……ふむふむ……ほうほう……ふむ、ほとんど空欄じゃねえかっ!! この程度の本を暗記できない主に失望したよ!!」


アリフ「そ、そんな……。ひどいです……」


準「……ごめん。別にそんなつもりじゃなかったんだ。つい口が滑ったっていうか、その、なんていうか、好きな子をついイジメちゃうっていうアレに似たような、その……」


アリフ「準さん……!!」


アリス「はいはい、主と使用人の恋愛物は別の番組でやってねー」


準「台本に書いてありましたよっ!? 『従者と主でちょっとイチャイチャ』って!! 誰だよこの台本書いたやつ!!」


アリフ「わ、私です……」


準「台本書いたやつが一番内容覚えてなくてどうするんだああああ!!」


アリル「お姉さま。早くメールの続き読んでください」


アリス「そうね。『ところで、皆さんに質問なのですが、皆さんは、どんな告白をされたら嬉しいでしょう? 僕は今、恋をしているのですが、どう告白しようか迷ってます。アリス姉、ぜひアドバイスお願いします』」


ノリ「なかなか難しい問題だなァ」


アリス「そうねぇ……普通に告白すればいいと思う」


準「テキトー!!」


アリス「アリルはどう思う?」


アリル「普通に告白すればいいと思います」


準「だめだこの姉妹!! アリフならマトモな返事くれるはず!!」


アリフ「ふぇっ? 普通に告白すればいいんじゃないですか?」


準「まさかのおおおお!! メアは!!メアはこういうの得意そうだよな!!なんか悔しいけど!!」


メア「貴女の魅力という名の魔法に囚われてしまいました。解いて、いただけませんか……? ここで手を取り甲にキス」


ノリ「こいつの場合ふざけてるんだかガチなんだか分からねェな……」


準「そういうノリさんはどうなんだ」


ノリ「んあ? うーん……一緒にたこ焼き食えば、そいつらはもうデキてんじゃね?知らんけど」


準「……」


ノリ「おめェはどうするんだよ主人公様よォ!!」


準「なんだよ主人公様って。 俺はー……んー……」


アリス「次のお便り。『妹は預かった。返してほしくば―――』ちょっと所定の場所に行ってくるわね」


準「あかああああん!! それなら俺が代わりに行く!! 大事な人を危険に晒せるかっ!!」


アリス「それが準の告白?」


準「……え。 あー……たしかにそうとも取れるか……。そういうわけでは……」


アリス「くすん」


アリル「あーっ!!お姉さまを泣かした!! 108回死ね!!むしろ私が殺す!!歯を食いちぎれ!!」


準「そこ食いしばれなっ!? 普段食いちぎる側の物をどう食いちぎれってんだよ!?」


メア「人質の少女は無事救助しました」


準「仕事の早さああああ!! さすがメア!!人がやれないことを平然とやってのける!!そこに痺れる憧れるぅ!!」


メア「ジェバンニが一分でやってくれました」


準「誰だよ!!」


アリス「じゃあ、ここで恒例のコーナー。『たか×たか』」


準「なんだよそれ!! って台本にBLコーナーって書いてあるうううう!! ハッ、まさか!!」


アリス「察しがいいわね準。 そう、これは高橋準と高上尊典の薔薇脚本なのよ」


ノリ「おえェ……」


準「俺のほうが吐きたいわっ!!」


アリフ「一応女性リスナーさんも確保しようとですね……」


準「そういえば全ての黒幕は我が主だったああああ!! しかもこの部分だけ妙に念入りに台本書かれてる!!」


アリル「さっさとやっちゃってください。私は黒飴で耳栓してますから」


アリス「じゃ、いってみよー」




♪ 耽美なBGM ♪




『お前……。意外に華奢なんだな……』


『てめェはいい肌の色してるんだな……』


『やめろよ……照れる』


『ふっ。そんなてめェもかわいいぜ』





準「もうやだああああああああ!! やりたくない!!これ以上やりたくない!!」


ノリ「俺さすがに本気でこの会社辞めたいと思った」


アリス「う、うん……これはなんかやりすぎだわ……」


アリフ「すいません。ついやってしまいました。反省はしていません」


アリス「次!! 『アリフルへのファンレター』!!」


準「コーナーの格差!!」


アリス「あれ? 昨日は『アリスフルへの~~』って台本に書いてあったと思ったけど?」


アリル「このコーナーは、天王院アリフと天王院アリルへのファンレター『のみ』を読み上げるコーナーですよーっと。お姉さま、あ、アリスお姉さまのことですが、お姉さまに当てられたファンレターは、さっき全部私が燃やしたのであしからずなのですよー。だからアリスフルじゃなくてアリフルなのですー」


準「ひどいっ!! えげつない!!」


アリフ「私もやっぱり、お姉ちゃんへのファンレターを読むのは、イヤだなぁ。 だってお姉ちゃんは私のですし♪」


アリル「私のですけどねー。まぁ読みましょうか。んーと……? ……名希望さんからのお便り」


準「それ読み方『とく』な」


アリル「だーらっしゃ!!そんなの知ってましたし!! トク名希望さんからのお便り『天王院アリル様。貴女の可愛らしさを見る度に、僕の心はいつもドキドキとときめいて―――』」


準「ただのラブレター!!」


アリル「うん、気持ちは嬉しいのですが、私は身も心も全てをお姉さまに捧げるって神様と仏様と私様とちよ様に誓っているのです。ごめんなさいなのですよー(ビリビリ)」


準「破ってる!! せめてマイクが拾わないところでやってあげて!!男の子泣いちゃう!!」


アリル「知ったことじゃないです」


準「だからえげつないって!!」


アリフ「次は私ですね。えーと、なぁなぁ、今何色のパンツ履いてんの?さんからのお便りです」


準「危ない予感!!」


アリフ「『やあ。僕は君のことが好きすぎて好きすぎて死にそうなストーカーさんだよ。スト君って呼んでね☆ 君がバスケの試合で蒸れた服のまま帰っている時の匂いが大好物―――』(ビリビリ)」


準「これは正しいビリビリ!!」


アリフ「私好きな人二人いますから。ごめんなさい」


準「二人!? 一人は天長としてもう一人は誰だ!!」


アリル「死んでください」


準「!? 今の俺に言ったのかアリル!?」


アリル「……」


準「ラジオで無言はやめよう!!」


アリス「最後は、『メアの雨占い』でお別れです」


準「あれ? 天長は自分のコーナーやらなくていいんですか?」


アリス「うん、ちょっともうキーボード打つの疲れた」


準「何のことかサッパリわかりませんが……」


アリス「世の中にはね、知ってはいけない闇ってやつがたくさんあるのよ。準もいずれ分かるわ」


準「俺のほうが年上なんだけど……」


アリス「それじゃあメア。 お願い」


メア「私のことはメアではなく龍馬と」





♪ 神秘的なBGM ♪





メア「では失礼して。皆さん、目の前にトランプを1セット用意してください。それをよくシャッフルしてください。その裏の状態のまま、好きなところから1枚引いて表にしてください。それがハートなら今年のクリスマスは恋人と過ごせます。ダイヤならお年玉がいっぱいもらえます。クローバーならなんかいいことあるでしょう、たぶん。スペードなら年内中に死にます。ではごきげんよう」





準「雨全然関係ねええええええええ!!」





ウラヌスグループ天会。


ここでは、今日も混沌な会話が繰り広げられている。

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