恋愛潜入作戦 ~特別編~
①アリフのモデルとなってる友人の文化祭に行ってきたので小説風に
②天王院アリス主観(どちらかというと本編仕様の性格)
③魔法描写有り
④この話に限り三姉妹はそれぞれ別の高校設定
時刻は9月15日土曜日夜3時。
私は今、アリフの高校にいる。
「お姉さまーっ!! 魔力噴出栓見つけましたですーっ!!」
屋上の扉が開き、妹アリルが走りながら近づいてくる。
今日のアリルは黒を基調に白いフリルがついた可愛らしいメイド服だ。まぁ私が作ったんだけど。
「案内して」
魔力噴出栓の周りに私が魔法陣を書いてる間、アリルが言う。
「ここって、アリフの学校ですよねー?」
「そうよ。明日ここで文化祭が行われるの。一般向けに」
「なるほどー。それで教室内が飾られている割りには、ゴチャゴチャしてて汚いんですねー」
「よしオッケー! これでこの学校でも魔法が使えるわ」
15日10時頃。
「じゃあ俺そろそろアリフのとこ行きますんで」
準が私に言う。
ちなみにアリフは最終準備とかで朝早々に学校へ向かった。
「うん。私は仕事溜まってて行けないから……アリフのこと、頼んだわね」
「お姉さまのことは私に任せてさっさと行くですー。 というか早くお姉さまと二人きりにさせろですー!」
準が玄関から出ていく。
準がアリフの文化祭へ行く理由はもちろん、主であるアリフを守るため。……と信じたい。
(ま、まぁ別に? 私は準の彼女でも何でもないし? 準がアリフと仲良くっても、何とも思わないけど? で、でも、準が私の妹に手を出すかもしれないし? それを防ぐためにわざわざ陣まで書いて「こっそり」覗こうと思ってるだけで? け、けけけ決して嫉妬とかじゃ)
「……はぁ。イヤな性格してるわ私……」
「お姉さま?」
私の小さな呟きを聞き取れなかったらしいアリルが、心配そうに顔を覗きこんでくる。
「大丈夫よ。ちょっと睡眠足りてないのかもね」
「むぅ……」
「よし、私達も行くわよ。 タクス。そういう訳だからお仕事お願いね」
「にゃあ」
タクスが私に礼をして見送ってくれる。
「……」
「アリフ、校門にいますね……」
私とアリルは、校門がギリギリ見える位置の曲がり角から、首だけ出して様子を伺っている。
その校門の外にアリルはいた。頬に水性マジックで猫ヒゲのペイントがされている。そういえばクラスの出し物はフェイスペイントって言ってたかも。
「なんかアリフ、ソワソワしてて落ち着かないですね」
「……準」
「ふぇ?」
「なんでもないわ。 それよりマズイわね……。陣は敷地内にしか書いてないから、ここでは魔法は……」
「柵乗り越えちゃいますー?」
「……それしかないわね」
まずアリルを肩車して柵を越えさせた後、私も助走つけてジャンプで越える。
そして一番近い、学校の裏庭に書いておいた魔法陣に入って唱える。
「マデリゼ」
私とアリルの姿が、服ごと透明になる。
「これで一安心ね。さぁ、アリフの所へ行くわよ」
「……はーい」
(ちょっと不満そうな気がしたんだけど、気のせいかしら?)
ちなみにマデリゼの効果で、声も周りの人には聞こえなくなる。
校門へ行くと、小さな騒ぎが起きていた。
「アリフー!!この人誰ー!! 紹介しなさいよー!!」
「こ、この人は、親戚……みたいなもので!」
「親戚ー?嘘だー! ホントは彼氏なんでしょー!吐いちゃえよこのこのー!」
「お、俺とりあえず飲み物買ってくるからっ」
準が逃げるように学校の奥へ行った。その時に私達とすれ違ったけど、透明になってるのだから気づくはずもない。
(なんでよ! そこはちゃんと否定しなさいよ!)
なんだか心がモヤモヤする。
アリルの方を見ると、ずっと私の顔を見て不満気にふてくされている。
「……はい。黒飴」
「にゃふー♪♪」
「準を追うわよ」
「……はーい」
(なんか今日のアリルはかなり機嫌悪いわね……)
準の行った方向を探していると、ちょうど自動販売機でスポーツドリンクを買っているところだった。
「まいったなー。俺なんかを彼氏だと勘違いされたらアリフも迷惑だろうし、なるべく一人で回ったほうがいいか……? いや何のために来てんだ俺……」
そんなことをブツブツ呟いている。
(飲み物って……自分の分だけ!? てっきりアリフの為なのかと思ってた! ちょっとはこの暑い中外で待ってた女の子の気持ちを考えなさいよ! まったくこれだから準は…… あ、でも……今買って渡しに行くと、余計周りに彼氏に見られちゃうかも、って、そういうことなの準!? いやでも準がそんな頭の良い計算ができるわけ…… あーもっ!!なんでこんなに準のことが気になるのよー!!)
その後結局準は、あまりアリフには近づかない方針に決めたようだ。
しかし、周りがそうさせてくれなかった。
準が2階を歩いていると、女子が話しかけてきた。
「あ!アリフの招待さんですよね! 入って入って!お金はとるけど!」
「あ、とるんだ……」
苦笑気味の準が100円払って教室内に入っていく。チュロスのお店らしい。
中は机が4つずつ集まって班みたいになっているのが4つほどあり、黒板側は机を横一列に並べてそこでチュロスを配っていた。
一班4つイスがあるのに一人でチュロスをモフモフと食べる準がなんだか哀れだったので、私は準の真正面の椅子に座った。どうせ準には私のこと見えてないけど。
アリルも隣に座る。
しばらくして準を招いた女の子が廊下に向かって叫ぶ。
「アリフ! ここ!ここにいるよ!」
「……そんなことだろうと思いましたよ……」
どうやらその女の子、アリフのことをメールで呼んだらしく、釣られたアリフはまた準とバッタリ出くわしたということらしい。
「じゃ、後は二人でごゆっくり~~」
女の子はニヤニヤしながら去っていく。
当の本人である準は、校門で貰ったパンフレットを真剣に読んでいて、アリフが来ていることにまだ気づいていない。
「ご、ごめんなさいね。お金まで払わせちゃったみたいで」
アリフが準に声かける。
「……うぉっ! いつの間に俺の背後に!」
「気づかなかったんですか!?」
「わりぃわりぃ。 ……それにしても暑いな……、かき氷食いたい」
「あ、かき氷隣の教室なので、奢ってあげますよ♪」
「おー!ありがと!」
(……まるでデートじゃないの……。 いやいや、主が使用人の面倒を見るのは当然のこと、普通のこと! よってこれに恋愛感情は一切なし! ノー!)
かき氷を食べ終わった準は、ブラバンの演奏を見に体育館へ。アリフは本来まだシフトらしく、準を体育館入り口まで見送った後は、別行動になった。
これも準なりに、アリフに迷惑をかけない為の策なのかもしれない。
ブラバンが終わると次は軽音部の演奏が始まった。
その途中でアリフが準の隣に座る。
「仕事終わった?」
「はい♪ ……あっ」
軽音部の演奏を盛り上げていた最前線の女子何人かが、後ろを振り返って準とアリフを見て、盛り上がっている。口の形がヒューヒューって言っている。よく見ると、アリフと同じクラスTシャツを着ている。
それに気づいた準はパンフレットで顔を隠し、アリフは前向いてください!という感じで手を前にシッシッと振っている。
「……あー、俺こういうの慣れてないから、なんかテンパっちゃうわ。ごめん」
「いえいえ! こちらこそ……ごめんなさい、なんか……本当に……」
(二人とも顔真っ赤……)
「お姉さま。そろそろ陣が消える時間です」
「あ……うん」
私が今回書いた魔法陣は、12時間という有効時間制限付きの簡易なものだ。
「演奏終わったらどうしようかなー。ちょうど文化祭終了時刻だし」
準がイスの背もたれに寄りかかりながら言う。
「あの、私後夜祭出ませんから、一緒に帰りませんか? その前に片づけがあるから、ちょっと遅くなるけども……」
「後夜祭出なくていいのか? 今年からの新企画なんだろ?」
しばらくアリフは考えた後、
「……それでも、準さんと一緒に帰りたいです。 ここ来るとき歩道橋がありましたよね?あそこで待っていてください」
(…………)
「……帰るわよアリル。これ以上は野暮というものだわ」
「はいです」
その日、準とアリフは朝帰り――――
ということはなく、ちゃんと夕飯までに帰ってきた。
事実:創作=1:4 ってところですかね←
もう記憶が曖昧なので、細かいところは端折ってしまいました(;´▽`A``←