怪談する天会
「本当に怖いのは幽霊や化物じゃないの! 人間自身なのよっ!!」
天長がいつものように大きな胸を張って何かの本の受け売りを偉そうに語っていた。
「お化け怖いですお姉さま!!」
そう言ってアリルが天長に抱きつく。
「私も怖いよお姉ちゃんー!!」
後ろ側からはアリフが天長に抱きつく。
「ちょっと!! 今は夏なのよ? いくらこの部屋の冷房が18度だからって、二人にくっつかれたら暑いわよ!!」
『絶対離さないー!!(ですー!!)』
三姉妹のこんな仲良いスキンシップはいつものことなので、俺はとりあえず議題を進める。
「それは、幽霊や化物を考えたのも結局は人間だから、ってこと?」
「そういうこと!! というか、貴女達は早く離れなさいー!!」
天長が二人を引き剥がし、なんとか椅子に座らせる。
「……でもお姉さま、この前お化けは実際にいるって言ってませんでしたか?」
「いるわよ?」
「? よく分からないよお姉ちゃん」
アリフが早くも話についていけてないようだ。
「つまりね、幽霊やお化けは大昔はいなかったけど、どこかの人間がいると全世界に吹聴した結果、本当にいることになっちゃったのよ」
「……?」
あれ、俺もこの人が何言ってるのかよくわからないぞ。
「あ、分かりました!! 要は、黒飴のお化けもいるかもしれないってことですね!?」
えっ。どうしてそうなっ……。
「そういうことよ!!」
ええええええええ!? 合ってるの!? どういうこと!?
「ということはポテトのお化けも……」
アリフが目を輝かせて言う。
「当然いるわ!!」
「やったああああ♪ 会いたいいいいい!!」
え、え、なんだこれ。 話の流れが途中からわけわからなくなった。
「あのー天長……、話がよく……」
盛り上がりに水を差すようで悪いが、挙手しながら割り込む。
「はぁ、分からないの? アリフ。説明してあげて」
「準さんつまりこういうことですよ。 私達が『こんな幽霊いたらいいな~』と思った瞬間、その幽霊は存在するということです」
「……なるほど!! ということは、金髪巨乳のお化けも俺がいると思えばいるんだ!!」
「そういうことよ!! ……ん、金髪巨乳?」
天長がなぜか顔を赤らめる。
「天長?」
「な、なんでもないわよっ!!」
「なかなか興味深い話ですね」
そう言って部屋に備え付けのロッカーがガチャリと開き、中から突然出てきたのは龍馬だ。
ボサボサな黒髪に、白が半分メッシュに入ってるシマウマみたいな髪色。
顔は分からない。なぜならいつもお面をしてるからだ。ちなみに今日は某名探偵コ◯ン君のお面。
中の素顔は誰も見たことがなく、以前天長が一回だけ見せてとお願いしたことがあるらしいが、最終的にキレられたらしい。
格好はいつも上下真っ白の長袖長ズボンのパジャマだ。
「うぉっ!! メアいたのかよ!?」
「私は気づいてたけどね」
天長が腕を組み何故かドヤ顔で言う。
「はい、最初からいました。あといつもお願いしてますが、私のことはメアではなく龍馬と呼んでください。念のためです」
何に対しての念のためなんだ……。
「いたんですね……」
「やっぱり何度見てもこの人怖いです……ある意味お化けに一番近い気がします……」
と言っているのはアリフとアリルだ。
まあ気持ちは分からんでもない。場所が場所なら、こんな不審者はすぐ通報されてしまうだろう。
ていうかロッカーの中で何してたんだ。
「ちなみにnutpediaには『幽霊』は『①死んだ者が成仏できず姿をあらわしたもの ②死者の霊が現れたもの』とありますがね。 よいしょっと」
そう言ってメアは自分の席にいつも通り正座で座る。
「まあそうだよな。そういう意味では天長が言う『幽霊は人間が作った』もあながち間違いじゃない?」
「高橋君。正解です」
そう言ってメアは親指を上に立ててグッドサインを俺にしてきた。
「そんな難しい話じゃなくてね? もっとハートで感じて欲しいのよこの議題!!」
ハートで感じる、は天長の口癖だ。俺はテキトーに、ノリで行こうよって意味だと解釈している。
「ちなみに化物とは正確には怪物といいまして……」
「あー! もーっ!」
メアのうんちくを天長が遮る。
あの天長のペースを乱すことができる人物なんて、メア以外に俺は知らない。
「メアの話は置いとくとして……」
「私のことは龍馬と」
「あーはいはい。 と・に・か・く!! 私は怪談がしたいのー!!」
あ、しびれを切らした天長の本音が出た。
『ひいぃっ!!』
アリフとアリルがまた怖がる。
「お、お姉ちゃん、夏だからって、無理に怪談しなくても、いいんじゃないかなぁ!!」
「無理にじゃないわよ? ちゃーんと考えてきたんだから♪」
「お、お姉さまは、夜お一人で寝れないじゃないですかぁ。 お化けが怖いから……ですよね?」
「それは違うわよ。私は無音が怖いだけ。だからタクスと寝てるのよ」
そうだったのか。天長は俺の直接の主じゃないから、そんな就寝事情までは知らなかった。まあ当の本人であるタクスは今日はいないが。
「……仕方ないですね。では私がとっておきの怪談を体を張ってしてあげましょう」
そう言ってメアが立ち上がって、さっき出てきたロッカーに戻ろうとする。
「おい、どこ行くんだ?メア」
「私のことは龍馬と。 高橋君、私がロッカーに入ったら、外からロッカーを開けてください。お願いします」
そう言ってメアはロッカーに入り、内側からバタンと静かに閉めた。
「……」
よく分からないが、とりあえずロッカーを開けるために立ち上がって近づく。
ガチャッ。
「…………!?」
バタン。また閉める。
「……天長」
「ん?」
「アリフとアリル」
『ひぃっ!?』
振り返って三人を呼ぶと、既に次女と三女はガチビビリ状態だった。
「今からロッカーの中身を皆さんにお見せします」
「……」
「メアさんがいるんじゃ、ないんですか……?」
「ひぅぅ……」
三者三様の反応を頂いたところで。
ガチャッ。
再びロッカーを開ける。今度は後ろの三人も見えるように全開にし、俺は横に退く。
ロッカーの中は――――――
空っぽだった。
メアの姿はなく、あるのは掃除道具のみ。
『えっ、えええぇぇぇ!?』
天長とアリフとアリルがハモる。
ウラヌスグループ天会。
ここでは、今日も怪奇な会話が繰り広げられている。
メインキャラクタープロファイリング②
天王院アリフ 真名:アリフ・フーブリザ=モリロ
生年月日:5月19日 身長:170cm 体重:50kg 血液型:AB型 B80(D)/W60/H86
好きな食べ物:ポテト 好きなもの:平和 趣味:バスケ
嫌いな食べ物:レンコン 嫌いなもの:喧嘩 特技:執筆
知識:6 行動力:8 社交性:8 人情:10 運:6 戦闘力:8
・ウラヌスグループの跡取り娘の次女。準のご主人様。天王院家の家計、天会の活動費用の計算を担当している。快晴高校では27代目生徒会副会長をしている。
・地毛の銀髪ロングヘアーに、女性キャラの中で特に高い身長と脚の長さ。黒目が少し大きめで肌が白い。決して筋肉質ではないが、身体の大きさにコンプレックスを持っている。
・柔らかい言葉遣いでアリルを諭すなど、争いを好まない性格。使用人である準やタクスに対しても敬語で話す。スカートが嫌いなのでズボンで過ごすことが多い。
・高身長を活かし、バスケではジャンプボールとセンターを担当する。クラスでの成績は高いほうだが、興味ない科目は仮眠か執筆に費やすなど、多少不真面目な面もある。
・小学生の時に男子にイジメられた経験があり、また傍観の立場にあったこともあって、私みたいな傷つく人を自ら生みたくない、傷つく人を見たくないという思いから争いを好まなくなった。
天王院アリル 真名:アリル・シルヴドライツ=ラペーヌ
生年月日:4月9日 身長:150cm 体重:40kg 血液型:AB型 B70(B)/W50/H72
好きな食べ物:黒飴 好きなもの:アリス 趣味:アリスストーカー
嫌いな食べ物:牛乳 嫌いなもの:高橋準 特技:アリス研究
知識:4 行動力:9 社交性:4 人情:7 運:5 戦闘力:6
・ウラヌスグループの跡取り娘の三女。
・艶やかな黒髪ロングヘアーに、中学生レベルの身長と胸。しかしれっきとした高校1年生。アリスと似た服の嗜好を持っている。
・自分の好きなものを愛し、自分の嫌いなものを徹底的に排除しようとする一途(?)なタイプ。我が強いところも多く、アリス以外の忠告は毅然として聞かない。その異常なほどの崇高心から、アリス以外の人間(特に男性)に毒を吐くことも多い。
・アリスのお願いなら何でも聞くと公言しているが、肝心のそのお願いはほとんどタクスに頼まれるので、その能力が発揮されることはめったにない。
・幼少の時、公園で男子にスカートをめくられて泣いてたところをアリスに助けられたのが、アリスに心酔するきっかけとなった。アリスはこの事を忘れているが、アリルにとっては大事な記憶。
メア(龍馬) 本名:メア=ローナッツ
生年月日:不明 身長:169cm 体重:55kg(推定) 血液型:B型(本人談)
好きな食べ物:砂糖 好きなもの:祭り 趣味:野球観戦
嫌いな食べ物:ゴーヤ 嫌いなもの:コウモリ野郎 特技:絵描き
知識:10 行動力:6 社交性:7 人情:6 運:7 戦闘力:3
・ウラヌスグループ経営戦略部部長。念の為に自分のことを龍馬と呼んでくれと頼むが、いつもスルーされてしまう。
・普段からお面を被っているため素顔は分からず、お面からはみ出てる髪の毛は、黒髪に白のメッシュが入っておりボサボサ。上下真っ白の長袖長ズボンのパジャマという格好がお気に入り。
・かなりの甘党。コーヒーに砂糖ではなく、砂糖にコーヒーを淹れる方が手っ取り早いと考えている。割りとマジメなタイプだが、楽しいことが好きなので遊びには全力で参加する子供じみた面もある。
・アリスも一目置くほどの知識人で、頭のキレの持ち主。また、絵や歌が上手いなど器用な面も見られる。メアが部長になってからのウラヌスグループは、子供向けの玩具や製菓、ゲーム等の分野にも目を向けるようになった。野球にすごく詳しい。