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実在していたプロローグ

「盗聴ごっこは楽しかったかい?」


俺は扉を開けそいつに声をかける。





ここは、つい最近完成したという301階建てのビルの屋上。


うちの278階建てのウラヌスグループ本社ビルに隣接している。


時間は午後8時24分。


季節は真夏だが、ここまで空に近いとさすがに風が強くて、汗をかくほどの暑さではない。





「な、なんで貴様がここにいる!! 貴様はたった今巣に帰ったはずだ!!」


「向こうの俺、よく出来てるだろう? もっとも、天長の目をごまかせてるかは分からないが」


「ど、どういうことだ!?」


「まだ分からないか? 『お前の言う俺』は、精巧に作られた偽物……幻像だ」


「バカな!! いつから!!」


「んー、一応会議室に入ったところからってことになんのかなあ?」


「最初から……だと!?」


男が驚愕に満ちた顔をしている。


「お前仕事雑すぎるぜ。今時植え込みに隠しカメラなんてすぐ分かるっての。しかも一個だけとか。 だから俺、植え込みの前にわざわざイスを動かしてそこに座ることでカメラの視界を塞いだだろう? アレもわざとだ。 あと、俺の新しい夢を考えるという『お前ら』にとってはどうでもいい議題。会議をそっちの方面に進めたのも、俺の作戦ってわけだ。隠しカメラが仕掛けられてるんだ、盗聴器も同時にあったって不思議じゃない」


「……!!」


「さて、理由を聞こうか。 何が目的だ」


「……ふふ……。 ふはははははははは!! 俺がそれを言うとでも思ってんのかぁ!?」


「あの子はもう堕天使キリングロイドじゃないはずだ。お前らがあの子を狙う理由なんてないはずだ」


「あいつはなぁ!!レベル31はなぁ!! だが……この世界には死に損ないのレベル27がいるはずだ。それに脱獄者のレベル28もだ。二人の鍵はあのレベル31が握っている。 それなら、我が主がレベル31に『興味』をお示しになられるのは、当然のことだろう!!」


「『興味』で盗聴か、ストーカーレベルだな。 さて、そこまで天界うえの事情を知っているようならもうひとつ聞こう。なぜレベル……あー、『お前ら』流のこの呼び方好きじゃねえわ、なぜ鈴宮アリスをそこまで執拗に狙う? お前だってラグナロク事件の恐ろしさを知らないわけじゃないだろう?転生回路アリスネットの力はそれほどまでに偉大だ。事実、お前らが殺した俺がこうして生きている事自体が転生回路アリスネットによる奇跡の恩恵だからな。 ……こういう力が欲しいのか?」


「ふん、貴様のような『歯無し(レッサー)』に力量を心配されるほどではない。 それにその疑問こそ愚問だ。真意は神のみぞ知る」


「要は知らねえんだな、相当の下っ端だなお前。大好きな主様に情報すら開示してもらえていないなんてな。同情するぜ」


「うるさい!!貴様に何が分かる!! 俺は必ずこのご命令を成し遂げあの方に許しを請い、生まれ変わるのだ!!」


「そうかい。だがこの状況をよく見るんだな。チェックメイトだ」


「たった一人の歯無し(レッサー)ごときで俺を止められるかぁぁぁぁ!!」





男の黒い服が破けて真の姿が顕になった。


紫と黒が混じったような暗い翼。鋭く伸びた爪。『悪魔』だ。





「……確かに俺一人じゃ手に負えそうにねえな。 だが落ち着いて考えてみろ。チェスって一つの駒で『チェックメイト』出来るか?いくら相手が『キング』一体だろうと無理だろ。おれはせいぜい『ルーク』だからな」


「ふん、何が言いたい。それが遺言でいいのか? 高橋準よ」






「……想定外の『ナイト』も加えて三人だからこその、『チェックメイト』だってことだよ」







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