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仙人事録  作者: 三神ざき
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生きる故に摂取する。其の四

 夢を見た。どこか場所は分からない。何か大きく黒い見たこともない変な生き物がいる。その生き物と公望が対峙していた。

 公望は刀を握り荒い息遣いをして服がボロボロに破けていて、生き物は鋭い爪をガチガチぶつけ音を鳴らしながら口からよだれを垂らしている。

 公望がその生物に向かってなにやらしゃべっているが何をしゃべっているか聞き取れない。しゃべりながらその生物に斬りかかるが、公望の刀は相手の爪でなんなく防がれる。そして、その刀は払い落とされ、生物の鋭い爪が公望を切り裂いた。

 切り裂かれた身体から鮮血が迸り、公望は力なく倒れこむ。

「は、花鈴・・・すまぬ・・・」

 最後の言葉を言い残し公望の身体は光に包まれ消えていった。その言葉だけがはっきりと聞こえた。


「お師様ーーー!!」

 ガバっ!と花鈴はベッドから起き上がった。体中に汗をかいている。時刻は真夜中を過ぎたところ。

 目からこぼれ落ち濡れていた頬を拭い、汗にまみれた服を着替えると部屋の外に出た。空には綺麗な月が輝いている。その月を見上げながら今見ていた夢を思い出す。やけにリアルな夢。

「・・・」

 じっとしていられず、ジュニアの寝床に向かった。

「ジュニア起きてる?」

「はれ?ご主人様どうしたんですか、こんな夜更けに?」

「あのね、ちょっと出かけたいところがあるんだけどいい?」

「はい、いいですよ」

 ジュニアは寝床から起き上がると無理やり起こされたのを気にもせず明るく返事をした。花鈴はジュニアの背にまたがる。

「それでご主人様。何処に行くんですか?」

「わからないけど、お師様の行きそうなところを探してくれないかな?」

「公望様の行きそうなところですか?うーん。わかりました。とりあえず思い当たるところを飛んでみますね」

「お願い」

 ジュニアは花鈴を乗せ家から出ると、空を颯爽と駆けていく。その間、花鈴は何処か暗かった。ジュニアは自分の主の雰囲気を敏感に感じ取り気を使って声を掛ける。

「ご主人様、なんか元気ないですね。お疲れですか?」

「ううん。そうじゃないんだけど」

「寝れないんですか?何か悪い夢でも見られましたか?」

「・・・うん」

 ジュニアの鋭い指摘に花鈴は力なく答えた。

「やはり、公望様がいないとご主人様はどこか元気ないですね。僕、そんなご主人様は見てて辛いです」

「心配かけてごめんね、ジュニア。とにかく、今はお師様を何とか見つけたいの」

「わかりました。不肖ながら僕精一杯探します」

 依然として元気のない花鈴を励ますかのようにジュニアはスピードを上げた。そして、公望が行きそうな場所を手当たりしだいに探して回る。しかし、公望の姿は一向に見つからない。

「・・・本当にお師様何処に言ったんだろう」

 花鈴はポツリと呟きながら、また夢のことを思い出していた。もしかしたら、夢のように襲われてもうこの世にいないのでは?とそんな不安が心を支配する。

―そんなことない!お師様に限ってそんなこと!―

 頭を振り、必死に夢のことを忘れようとする。しかし、不安はやはり消えなかった。

「ご主人様、他に僕は思い当たるところないですよ?何処に行きますか?」

「うーん。とりあえず、適当にその辺飛んでもらえる?」

「わかりました」

「ごめんね。無理につき合わせちゃって」

「そんなこと気にしないでください。僕はご主人様のお役に立てて嬉しいですから」

「ありがとう」

 ジュニアは、いえいえと微笑むとまた空を駆け抜けていく。

 しばらく空を飛び回っていると、少し先でなにやら浮遊している物体がいた。キョロキョロと公望を探していた花鈴の目にその物体が映る。

―あれ?もしかして、お師様!?―

 花鈴はそちらを向くと目を凝らした。期待に満ちた目でその物体を見る。しかし、暗闇の中月明かりに照らされて映し出されたのはまったく違うものだった。

 見たこともない変てこな物体。いや、動いているから生物だろう。まさに夢で見たような生物。その生物は、まだこちらに気づいた様子もなく、悠々自適に空を飛んでいる。

「あれが、隕石から生み出されたとか言う生き物かな?」

 花鈴は最初、あちらが気づいていないならそのまま移動して普賢に報告しようと考えた。今は一人。普賢の話では一人では決してやりあうなと言われていたからだ。自然と連絡宝貝に手を伸ばす。しかし、連絡宝貝を手にしたところで別の考えが浮かんだ。いや、考えと言うより感情かもしれない。

―あんな生き物のせいでお師様が・・・。夢のようなことになったら私は嫌!―

 そう思った瞬間、体中に憎しみが駆け巡り、知らず知らずのうちに印を組んでいた。

「牙狼遊戯!」

 高レベルの攻撃用仙術を唱えると、まだこちらに気づいていない生物に向かって放った。狼の姿をした氣が物凄い勢いでその生物に向かって駆け、喰らいつく。

「そのまま飲まれちゃえ!」

 狼の姿をした氣は、生物を銜えたまま上下左右と飛び交っている。そして数十秒後、ぐちゃっ!という音と共に噛み砕かれたその生物は四散した。

―お師様に害を加えるやつはみんな私がやっつけるんだから!―

 生物の残骸が宙を舞うのを、今までの花鈴には考えられないほどの憎しみのこもった目で見つめていた。

 公望を傷つける存在を倒したということで少しは安堵を感じた花鈴だったが、そんな折、急に後ろから嫌な気配を感じた。ねちっとまとわり付くような殺気。

 条件反射で横に飛ぶ。もちろん着地地点にはジュニアが直ぐに移動している。飛んだ花鈴の横をすれすれで何かがかすめていった。

 着地して殺気を感じたほうを見る。そこには、今倒したはずの生物がいた。

「え?なんで?普賢様の話じゃ、一匹しかいないって話じゃ・・・」

 花鈴の疑問をよそにその生物は再び花鈴に襲い掛かる。鋭い爪が花鈴の身体を切り裂こうとした。すぐさま、宝貝を持ちその爪をはじく。

「むむぅ!どれだけいるか知らないけど、お師様に危害を与える存在は私が許さないんだから!」

 そう言って、爪をはじいた衝撃で距離をとるとそのまま先ほど組んだ牙狼遊戯の印を組む。

「あんたなんか、さっさといなくなっちゃえ!」

 再び、生物に向かって氣によって作られた狼が襲い掛かった。先ほどと同じように狼は異形な生物に噛み付く。

 しかし、先ほどとは違う展開が起こった。花鈴にしてみれば、さっきの生物がこの術で倒せたのだから大丈夫だろうと思って術を発動させたのだが、なんと今目の前にいる生物は牙狼遊戯を打ち消したのだ。

 狼の牙から逃れ、異形なる者は再び花鈴に視線を向ける。

「うそー!」

「ぐるるるる〜」

 低い唸り声を上げ、異形なる者はじりじりと距離を詰めてきている。

「なんでさっきの術が効いたのにこいつには効かないのよ!」

 花鈴は宝貝を握り締めた。手には汗をかいている。正直今放った術、牙狼遊戯は攻撃用仙術の中でも最高レベルに属する術だ。それが同じ生物のはずなのに効かないとはさすがに花鈴も焦った。

「やばっ!ひとりで相手するには危険だわ」

 直感的に花鈴は相手の力量を把握した。そして、それと同時に、恐怖を拭い去るかのように身体が自然と異形なる者へと攻撃を開始していた。しかし、振りかぶった氷の刀は異形なる者の爪でなんなく受け止められる。そして、その反動で宝貝は弾き飛ばされた。

「あっ!」

 花鈴の声と同時に、鋭い爪が花鈴に振りかかる。

―やられる!―

 花鈴はそう思うとギュっと目を瞑った。しかし、次に聞こえたのは身体を切り裂かれる音でも、迸る鮮血の音でもなく、太い悲鳴だった。

 恐る恐る目を開ける。

 すると、異形な生物の身体になにやら水の刃がいくつも突き刺さり、異形な生物は腕を振りかぶった状態で力なく地面へと落下していった。

「危なかったの、花鈴」

 声のしたほうに振り向く。そこには竜吉がいた。

「あ!竜吉様!」

「大丈夫か?」

「は、はい」

「なにやら、夜更けにそなたが出て行くのがわかったのでな。心配になって後を追ってきたのじゃが、大事に至らなくてよかった」

「あ、ありがとうございます」

「ほんに、今戦闘態勢レベル二に移行しておることくらい承知であろう?なのに、一人で出歩くなぞ自殺行為じゃぞ?それとも、自分の実力なら大丈夫とでも思ったか?」

 若干厳しくかつ呆れた感じの態度で竜吉は話す。

「い、いえ、めっそうもない!実は・・・」

 花鈴は夢で見たことを話した。公望が異形なる者と戦っていたこと、そして、やられ消えてしまったこと。それを思ったらいてもたってもいれらなくなってしまったこと。

「そうか。うむ。そちの気持ちは分かる。わらわもそういう気持ちになるじゃろうし、実際そういう不安は常にある」

「そうですよね」

「しかし、だからと言って今一人で動くのはあまりに危険じゃ。いや、だからこそ一人であろう公望のことを心配するのじゃが。う〜む。確かにもどかしい」

「はい。もう心配で心配で・・・」

「ふむ。では、とりあえず今回のことを報告した後、やはり無理を言ってでも二人で公を探しに行かせてもらえるよう掛け合って見るか」

「はい!」

「なんにせよ。今日はこれ以上外を出回っているのは良くあるまい。いったん家に戻ろうぞ」

「はい。わかりました」

 そういって二人は家に引き返していったのであった。   

 

あとがきですにょろーん。

はい、どうもこんばんわ。ただいま酒に溺れグデングデンになってる作者です。

お酒はあまり好きでないんですが、最近飲まなきゃやってられないという気持ちが強くなりまして、荒れ気味でございます。コップ一杯で酔いつぶれる寸前なので、本当弱いんですけどね。

まぁ、それはさておき、今回も短めになってしまいました。幕間以降かなり時間が経っていたので練りこんだ長い話が書けるかとも思っていたのですが、何故か二月に入って、話がちっともまとまらない状態になってうまく書き上げられないんです。余計なことを考えすぎてるからかもしれませんね。

ちなみに最近考えていることは、「恋を意識する基準は何か?」です(笑

 いつもいつも中途半端な駄作になってしまって申し訳ございません。それでもお付き合いしてくださる皆様に本当感謝します。

 今後も不束者ですがよろしくお願いします。

 それでは、また次回お会いしましょう。

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