公望、バンドを組む
皆さん、お久しぶりです。このサイトでの評価・感想にて心無い人に荒らし行為を受け、ガラスのハートが見事に砕け散って落ち込んでいた作者です。いやー、荒らしを受けてから書く気力が無くなって連載も止めようかと思っていましたが、とりあえず、更新いたしました。もし待っていた方がいらっしゃったら申し訳ありません。私、辛口感想だとへこむし、頑張ってといわれると頑張る単純な性格しておりますので、今後も何かと落ち込んで本気で連載が中止になるかもしれませんが、楽しみにしてる方がいらっしゃいましたら励ましの一つもいただければ直ぐに復帰いたします(笑
さて、第二部に入り封神演技からほとんど外れたオリジナルラブコメとして再スタートを切りました。この先どうなっていくのかは私にもわかりませんが、まぁ、ラブありシリアスありほのぼのありのゆっくりなペースで進めて行きたいと思っておりますので、応援の程よろしくお願いいたします。
まだハートブレイク中の作者より
「マジで竜吉様と組めるのか!!!」
「うむ」
「最高じゃん!なぁ、奇勝」
「まぁ、そうだな」
連絡を聞いて早速やってきた泰然は、あの竜吉とバンドが組めると聞き俄然張り切っていた。奇勝は相変わらずクールさを保ってはいたが、内心高揚していたようで珍しく笑顔を見せている。
「じゃあ、竜吉様がメインボーカルで花鈴がサブになるのか?」
「いや、曲に合わせてメインを決めるか同じくらいにした方がいいじゃろ」
「あ、ああ、そうだな。その方がバンドとしては良いんだった。いやー、しばらくバンドなんて組まなかったから基本的なことをすっかり忘れてるぜ」
頭を掻きながら、はっはっはと泰然は笑っている。
「それは別に構わんが、まさか腕の方まで忘れてなまってるとか言うんじゃなかろうな?二人とも」
「まさか。仙人界に来ても練習は怠ってないぜ。よく奇勝とジャムったりしてたしな」
「ああ」
「それなら安心したわい」
「そういう公望こそ、ドラム大丈夫なのかよ?お前がドラムやるなんて聞いた事もなかったぜ?俺らの腕についてこれるか?」
「まぁ、わしはブランクがあるからの。仙人界に来て一度もドラムには触れてないし。じゃが、音楽感性は鈍っておらんぞ。直ぐに実力取り戻してやるわい。曲がりなりにも竜吉と組むのじゃからな。下手な演奏しては、失礼に当たるというもの。わしとて自信ぐらいある」
「なら良いか」
「そういったことは、やはり一度スタジオに入って併せて見ればわかるだろ」
「そうだな。奇勝の言うように実際併せればお互いの実力とか音楽方針とかがわかるだろ」
「うむ」
「そういえば、その事なんだけどよ。スタジオどうするよ?仙人界にはスタジオどころか、アンプもないぞ?いや俺達は楽器とアンプは個人で持ってるけど、繋ぐ電気もないし」
泰然がふと思い出したかのように話を持ちかけてきた。まあ、泰然の言う事も最もである。仙人界に電気という文化はない。よって人間界のアンプやギターもろもろは使えないのだ。しかし、公望はその問いを見越していたかのように答えを返した。
「その辺は大丈夫じゃ。大乙に頼んで、人間界と同等の電気が流せる発電機みたいな宝貝を作ってもらっているところじゃからな。大乙も難しい事ではないと言っておったから、そろそろ出来ておる頃じゃないかの」
「さすが公望だな。ちゃんとぬかりはないというところか」
「当たり前じゃ、奇勝。自分からやりたいといっておいて準備が出来てなくてどうする」
「じゃ、その問題は大丈夫として。本題に入ろうか」
そう言って五人は今後のバンドの方針について話し出した。
「あの、皆さんすみません。そもそもばんどってどういうものなのですか?」
「うむ、わらわもその辺を聞いておきたいぞ」
話の輪に入れず、花鈴と竜吉が質問してくる。泰然が公望の変わりに答えた。
「簡単ですよ。バンドというのは軽音楽、ポップスとかロックとかいろいろジャンル分けされますけど、基本はギター、ベース、ドラム、ボーカルで構成されるもので集まって一つの音楽を演奏しようというものです。俺がギターをやらせてもらって、奇勝がベース、ドラムは公望がやります。お二方にはその演奏に併せて唄って頂ければいいんです」
「軽音楽とはなんじゃ?わらわの歌会とは違うのか?」
「うーん。説明するのは難しいですね。竜吉様が開かれている歌会。あれは少なくとも軽音楽とは言いません。民族曲に近いですね。音楽にもジャンルという分野で様々なものがありまして、オーケストラだったり、吹奏楽だったり、ジャズだったりといろいろあって言葉では説明できませんね。実際聞いてみるのがよろしいかと思います」
「そうか」
竜吉には丁寧な言葉遣いで泰然は受け答えをしている。どうも、まだ竜吉の存在には慣れていないようだ。
「最初は慣れないかと思いますけど、絶対にはまりますよ。とりあえず、何のジャンルでどういった曲調のものをやるか、つまり音楽性ですね。それを決めようと今話しているのです。で、公望、やるなら当然オリジナルだよな?」
「もちのろん。わしはオリジナル以外やる気はせん。というか、わしらは生まれ育った時代も国も違う故、コピーはできんじゃろ。やっても意味がない。面白味もない。その辺はむしろわしが心配しておるぞ?おぬしら二人のうちどちらか曲は作れるのか?わしは作れるが、譜面にはおこせんし、弦楽器は弾けんからの」
「それは問題ない。俺達は二人とも曲は作れる。ただ後は音楽性か。何のジャンルをやる?俺達はメロコア系が好きだが」
「奇勝達はメロコアか。わしはメタルが好きなんじゃが。それもデスメタルとかヴァイキングメタルとか。しかし、基本的にはなんでもやれるからの」
「じゃあ、このバンドの方向性はメロディックメタル辺りになるのか」
「そうじゃな。それが一番良いと思うが・・・。しかし、できればせっかくこの様に仙人になっておるのじゃから、仙人界では、やる以上新しいジャンルを開拓して行きたいと思っておる」
「ほぉ、おもしろそうじゃないか。なぁ、泰然」
「ああ、新ジャンル開拓って言うのは音楽家として夢見る所だからな。全員が違う時代、国で育っているなら融合ができるかもしれない。よし!それで行こう!!!」
泰然は今にもギターを弾こうかと言わんばかりに張り切りだした。それを嬉しそうに見ながら公望はさらに今後の方向等について話し出した。
「とりあえず、バンドの方針は楽しく音楽をやり、本気で音楽を愛するという事でいこう。という事で、全員絶対に仲良くやる事が前提じゃな。その辺は問題なかろう?」
「ああ」
「うむ」
「はい」
「大丈夫だろ」
「うむうむ。では、あとバンド名とバンドリーダーはどうする?わしとしては、バンド名はバンドの華である竜吉と花鈴の名を取って、竜花と名づけたいのじゃが・・・」
「竜花か・・・。良いんじゃないか?なぁ」
泰然は全員の顔を見た。全員それで良いといった感じで、頷く。
「では、後はバンドリーダーじゃが・・・。やはり竜吉が良いのかの?」
「そうじゃないか。やっぱり竜吉様は既に歌会をやってらっしゃるし、知名度もナンバーワンだし」
そこに今まで話についていけず黙って聞いていた竜吉がやっと口を挟んだ。
「のぉ、バンドリーダーとは、聞いてるところじゃとバンドの代表者みたいなものの様じゃが」
「ええ」
「それをわらわにやれと言うのか?」
「嫌ですか?バンド名も竜吉様と花鈴から取ってますし、地位的にも仙人達に好かれていることからもやはり竜吉様が一番良いかと思うんですけど」
「嫌ではない。しかし、反対ではある。そもそもバンドをやりたいといいだしたのは、公であろう?わらわも公が誘ったからバンドをやる気になったのであって、公でなければやる気なぞでなかった。だから、公がバンドリーダーを勤めるべきではないのか?」
「私もお師様がりーだーとか言うのやられた方が良いと思います!」
花鈴もようやく話に入ってきた。
「うーん。公望ねぇ。俺は良いけど・・・。どう思う、奇勝?」
「俺は、音楽がやれれば誰がリーダーだろうと関係ない」
奇勝は根っからの音楽好きなのでそういった面倒な事は気にしないのだ。奇勝は音楽に関しては純粋なところがあるらしいと泰然からは聞いていた。
「ええ〜、わしがやるのぉ〜。面倒じゃし、わしは上に立ってまとめる器なぞないぞ?」
「しかし、公。そちが言い出したことじゃろ?わらわは公がリーダーでないのなら、バンドは組まんぞ?」
「わ、私もです!」
「え〜」
文句をぶーぶー言っている公望に対し竜吉と花鈴はそこだけは譲れないと言い張った。泰然の方を見ると、諦めろという感じに笑っている。しょうがなく公望は承諾した。
「あくまで形式上じゃからな。じゃあ、リーダーとして一言。とにかく仲良くやっていくこと。楽しくなければ音楽ではない。その辺だけはちゃんと守る事。良いな?」
全員が快く返事をした。こうしてバンド「竜花」が結成されたのである。その日はそれで解散する事になったが、帰り際、泰然が肝心な事を聞いてきた。
「おい、公望。で、練習場所のスタジオはどうするよ。後、練習する日は?」
「練習場所はわしの家じゃな。スタジオを作っておく故に。後は練習日は今日から一週間事に一日やるとの事でどうじゃ?」
「了解。じゃあ、来週までに奇勝と二人で何曲か作っておくよ」
「頼むぞ」
「任しておけ」
そう言って二人は帰っていった。
「うーん!来週が楽しみじゃな!!!」
「お師様、嬉しそうですね」
珍しくやる気を出して楽しそうにしている公望を見て花鈴が尋ねてきた。
「当然じゃ。バンドがやれるとは正直思ってなかったからの。仙人には娯楽が無い故に、良い娯楽が見つかったものじゃ。これもそなたらがボーカルをやってくれると言ってくれたからの事。心からお礼を言うぞ」
「そんな、お礼だなんていいですよ」
「そうじゃぞ、公。わらわ達もそちとやれて嬉しいからの。のぉ、花鈴?」
「はい!」
「しかし、公がそこまで嬉しがるという事は、バンドというものは相当面白いものじゃという事か?」
「うむ!音楽が好きな者なら絶対にはまるぞ。しかも自分達で音楽を作っていくというのじゃからな。わしの音楽感性がビビビっと反応しておる。このバンドは絶対に成功するぞー!」
公望はやるぞー!といった感じに早速来週に向けて準備を始めた。それを嬉しそうに見ていた二人に、公望は思いだしたかのように言葉を向けた。
「そうい・え・ば、竜吉は今日から我が家で暮らすのじゃったな?」
「うむ」
「では、ひとつだけ守って欲しい事がある」
「なんぞや?」
「花鈴とは仲良くする事。これは、花鈴にも言いたい。花鈴も竜吉と仲良くするのじゃぞ?郷に入れば郷に従うという諺もあるしの。二人とも良いな?」
「相分かった」
「はーい!」
「ま、それだけ守ってくれれば文句は無い。後は好きに暮らしてくれ」
そう言ってまた公望は準備を続けた。竜吉と花鈴は縁側に座り、話を始める。最初に話を振ったのは花鈴だった。
「竜吉様。本気で宣戦布告してきましたね。家にまでやってくるなんて」
「当然じゃ。チャンスがあるなら最大限に活かさねば。今までそちに遅れを取っておったからな。一挙に巻き返してやるぞ」
「そううまくいきますかね。私、はっきり言っておきますけど、手を一切抜かず譲る気はさらさらありませんから」
「わらわも譲る気は全くないぞ。この際地位だとか体裁だとかすべて捨てる覚悟じゃからな。本気で公を落してみせる」
「私だって!」
「ふむ、おもしろい。わらわの大人の魅力が勝つか、そなたの若い故の子供らしい素直さが勝つか勝負じゃ。恋愛において立場なぞ関係ないからの。わらわの地位だとか気にせず、そちも真っ向から掛かってくるが良い。それでこそ落した時の充実感が増すというもの」
「言われるまでもありませんよ」
二人はお互い見つめあい、ふっ!っと笑った。
「まあ、公の事以外は仲良くやっていこう。公に言われたからの。下手に約束を破って嫌われたくもないし、別にそちが憎いわけでもないしの。わらわにとってしてみれば、そちは好敵手みたいなものじゃしな」
「そうですね。私もお師様には嫌われたくないし。竜吉様、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
お互い深々と頭を下げ、この時点で本格的な公望争奪戦が始まったのである。