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仙人事録  作者: 三神ざき
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公望、人間界に降り立つ。其の三

 約一週間後、祈る事しかできなかった花鈴と風麒麟に笑みがこぼれた。


「う、うーん・・・。してやられたのぉ」


「お師様!」


「公望様!」


「ん?なんじゃ二人とも、そんなうれしそうな顔をして。革命でも成功したのか?」


「違いますよ、公望様」


「?」


「お師様。お身体の方はもう大丈夫なんですか?」


「うむ。毒には耐性をつけておるからな。ちと回復に時間がかかったようじゃが、身体の方は問題ない」


「よかったぁ」


 花鈴は安堵のため息をつくと本当に心配したんですからね!と瞳を潤ませながら公望に抱きよった。風麒麟もご無事で何よりと声をかけてくる。


「ふたりともわしの事を心配しておったのか?それはすまんかったのぉ。ほれ、もう大丈夫じゃよ」


 公望は手をパタパタさせて元気になったことをアピールした。


「ところで、仏貴の方はどうなった?うまく事は進んでおるのか?そろそろ三国から返事がきても良い頃じゃが」


「さあ?私はその事はわかりません。お師様の事が心配で仏貴さんの事すっかり忘れてましたから」


「これこれ、なんのためにそなたを人間界に連れてきたのじゃぁ〜。もうちょっと手伝ってくれてもよかろう」


「だってお師様、ただ観光してろとしか仰らなかったじゃないですか?私、詳しい事何も知りませんよ?」


「ふ〜、しょうがない。さすがに今回はわしも予想外じゃったし、仏貴に聞きに行くか」


 二人は部屋を後にし仏貴の元に向かった。仕事をしていた仏貴が公望に気がつき近寄って来る。


「うん?公望、おまえもう身体は大丈夫なのか?なにやら妖怪仙人にやられたとか」


「うむ!見事にやられたぞ!」


「いや、そんな威張って言う事ではないだろ・・・。おまえ、一応俺の参謀なんだしその妖怪仙人対策でここにいるんだろうが。そのお前が早速やられてどうする。頼むぞ本当に」


「すまぬすまぬ。ちと予想内に予想外の事が起こった」


「なんだそりゃ?そもそも象でなにやってた?」


「うむ。今回の革命に猫姫が出てきてもらっては大変面倒なことになるのでな。公譚の自尊心を否が応でも崩す事と、猫姫をおびき出してどういう仙人なのか確認し、あわよくば人間界から手を引いてもらおうとしておったのじゃ。しかし猫姫が思った以上に強くて野心家での。おびき出す所まではうまくいったのじゃが、逆にまんまとしてやられた訳じゃ」


 ほっほっほっと公望は笑った。


「お師様!笑い事じゃないですよ!!」


 花鈴が公望を叱った。それもそのはず。下手したら公望は死んでいたかもしれないのだから、花鈴としては公望に無謀な事をして欲しくはなかったのだ。


「まぁまぁ、とりあえず仏貴よ。三国とは連絡がついたのか?」


「あ?ああ、ついたぜ。満場一致で公譚を倒す協定が結ばれた」


「新たな建国とその皇帝にそなたがなることは?」


「それも、北越の桐生きりゅうが摂政になることで了承を得た。あいつは人徳があるからな」


「うむ。結構結構。では、三国の兵は既に動き出しておるのじゃな?」


「そうだろう。お前に言われた通り三国の了承が得たら直ぐに象の国の西北西に位置する、豪防関の傍に集まるように通達してあるからな。でも何故合流地点をあそこにした?豪防関は難所中の難所、決して落とせないと謳われた象の要塞だ。いわば象の要であり戦になったらこちらが不利だろ?」


「説明するのが面倒くさい、それぐらい自分で考えるのじゃ。とにかくそなたは直ぐに兵を動かす準備をしろ。三国が既に動いておるなら、こちらも迅速に動かねばならん」


「それなら問題ない。いつでも兵は出せるぞ」


「では、今から出発する。そなたも準備が出来次第さっさと行くぞ。もちろん農機具も忘れさせてはならんからな」


「あ、ああ。わかった。じゃあ、直ぐ支度しよう」


 仏貴は走って部屋を出ると戦の準備に取り掛かり、こうして西漢軍総勢2万3000人と公望達は豪防関に赴いていった。

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