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仙人事録  作者: 三神ざき
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プロローグ〜公望、家を持つ〜

皆さん封神演技という作品をご存知でしょうか?この作品は、その漫画(原作は知りません)が大好きで、現代のしかも一風変わった仙人だったらと想像しその続きを私が勝手に書こうと思い作り上げているものです。ですからこれから読んで言っていただければ、何かと封神演技とかぶる部分は有るかと思います。封神演技を知っている方もそうでない方も、この作品を読んで封神演技というすばらしい作品があったということを思い出して興味を持っていただければ良いなと思います。

「こらー!公望こうぼう!!」


 目を瞑り岩の上であぐらをかいていた男に、突然大声が飛び込んできた。


「ん、んーん。なんじゃ、白桜童子はくおうどうじではないか」


 公望と呼ばれた男は、のんびりと目を開けると背伸びをして返事をした。


「そなた、なにを師匠の様な怒鳴り方をして。どうした?わしに何か用かの?」


「いえ、大老君たいろうくん様から、その様に伝えよとの事でしたので。公望様、大老君様が御呼びです」


「うむ、そうか。風麒麟ふうきりん。蓬莱山に向かうぞ」


「はっ!」


 公望は、風麒麟にまたがると蓬莱山に飛んでいった。しばらくして、蓬莱山頂上に聳え立つドーム型の建物が目に入る。そしてそのまま最上階の広場に降り立ち、中へ入っていった。広い通路を真っ直ぐのんびりと歩き広い部屋を抜け、奥の扉の前に着いた。ゆっくりと扉を開けると、目の前に顎に白く長い髭をたらし額にビー玉のような丸い玉が付いている老人が立っていた。


「師匠、御呼びにより、公望、参りました」


「うむ」


 師匠と呼ばれるその老人は、長い髭をなでながら、公望をにらみつけていた。


「またそんな怖い顔をして。なにか、御用ですか?」


「御用ですかではない!おぬし、仙人になってから修行もせず、瞑想と称して寝てばかりおるではないか。いったい何を考えておる!曲がりなりにもわしの弟子であり、聖眼も受け継いでもう立派な仙人であろう。わざわざおぬしのために、仙人界でもっとも速く気位の高い霊獣も与えたというのに、仕事らしい仕事もせず、弟子も取ろうともしないではないか!」


公望の間の抜けた返事に、その老人、公望の師匠でありこの仙人界最高責任者である大老君は、激怒して怒鳴り散らしてきた。


「まーた、その話ですか?ですから、何度も申し上げているでしょう。私は私なりに考えがあって、仙人界や人間界の事を思い、いろいろ頭を働かしていたら寝てしまっているんですよ。弟子の件は、私は自分が気に入った可愛い女の道士が見つかるまで絶対取らないと申し上げたはずです」


やれやれと、公望は面倒くさそうに話す。それを見た大老君は、はぁーっとため息をついた。


「おぬし、そうは言うが、正直なところやる気ないであろう?」


「あ、わかります?」


 公望は、てへっと笑いながら頭を掻いた。大老君は遠い目をして物思いにふけるように、言葉を発した。


「ほんに、道士の頃は、それはまじめに修行に明け暮れておったというのに。なんじゃ、この変わり具合は」


 大老君は怒るのも馬鹿らしいと思ったようで、すでに呆れ果てている。その姿を見ながら、公望はいつもと変わらないなぁ等と思っていた。


「師匠ぉ、愚痴を言うために呼んだのであれば、私、帰りますよ?」


 公望の言葉を聞いて、大老君は本題に入った。


「いや、待て。今回は愚痴ではない。実は、そろそろ仙人界を束ねる十二仙を決めようかと思っての。そろそろ仙人界も世代交代に入ってきておるし、なにより片付けねばならぬ仕事が増えてきたからの。その一人におぬしを入れようと思って呼んだのじゃ」


「はぁ?嫌ですよ、私」


 大老君が言い終わるが否や、即答して公望は言った。しかし大老君は、その返事を見越していたように強く言い放った。


「嫌だろうがなんだろうが、わしが決めた事じゃ!。これは師匠からの命令。近いうち、十二仙の集会が開かれるので参加するように!」


「ったく!この、くそじじいめ!」


 公望は、ちっ!っと舌打ちすると小さな声で自分の師匠を罵った。


「ん?なにか、申したか?」


「いえ、なにも。用件はそれだけですか?」


 知らん顔しながら公望は話を進める。


「うむ」


「それでは、詳しく決まったら、また呼んでください。では」


 さっさと帰ろうとした公望に、大老君は声をかけた。


「あ、後それとじゃ。おぬしも仙人になり十二仙の地位に立つのなら、自分の邸宅ぐらい持つのじゃぞ。いつまでもふらふらしておるのではない。良いな?」


「わかりましたよ。それでは、失礼しますよ」


 大老君に背を向け振り向きもせずに手を振りながら、公望はその場を後にした。入り口の前には風麒麟が静かに待っていた。


「待たせたの、風麒麟。さてと、面倒くさくなってきたのぉ。とりあえず、家を持てとの事じゃったが、のんびりとその辺散策でもして良い場所でも探すか。風麒麟、すまぬが散歩がてら飛んでくれるか?」


「はっ!」


 風麒麟は凛として答えると、公望を背中に乗せた。ゆっくりと飛び立つ。辺りは気持ちの良い風が吹き、天気は快晴。山々が連なり、空には島がいたるところ点在して浮いている。

 そう、ここは仙人、道士が住まう仙人界、蓬莱島。人間界の上に存在し、人間界とは別の時間、空気が流れる世界。ここには、大老君をトップに様々な仙人が存在し、その下に弟子として道士が存在する。公望は、そのトップの大老君の直の弟子であり、仙人になってまだ5年程。齢35歳の若い仙人である。基本的に仙人は不老不死である。病気、あるいは外傷的な怪我で死ぬ以外、死ぬ事はない。実際、大老君はもう何千年と生きているベテラン中のベテランな仙人である。


 しかし、誰でも簡単に仙人になれるわけではない。まず仙人になるには条件がある。まず、腰とお尻の間ぐらいに、仙骨と呼ばれる特別な骨を持つ人間を仙人が人間界に降り立ちスカウトする。そして、その者の弟子になると、まず、道士として修行を積む。そして、何十年とたった後、試験を受けそれに合格したものが晴れて仙人となれるのだ。しかし、この仙骨を持つ人間はとてつもなく少ない。さらに、仙骨を持っていたとしてもスカウトされることなく人間として一生を終える者もいる。つまり、道士になれる者というのは人間の中でもエリート中のエリート的な存在なのだ。


 公望も、たまたま仙骨を持っていて大老君にある日スカウトされ弟子となり、道士として修行を積み仙人になったのである。


 さて、この公望の師匠であり仙人界蓬莱島を束ねる大老君は、他の仙人とは一風変わっている。それがトップに立つ所以でもある。何かと言えば、遥か昔、仙人は己の体内に流れる氣を用い仙術というとても強力な術を使っていた。しかし、長い年月が経つにつれ、何時の間にかその仙術は失われ現在では宝貝ぱおぺいという道具が用いられている。この宝貝は、氣をエネルギーとして奇跡的な力を発揮する道具であり種類は多種多様。だが、大老君は宝貝を用いない。何故なら、今だ古代の仙術を引き継ぎ仙人界で唯一使えることのできるのが、大老君なのである。さらに、額にある聖眼と呼ばれる印を大老君は持っていた。聖眼には千里眼の役目を持ち、さらに代々伝わる仙術の他、一種類の属性ではあるが自分オリジナルの術を開発することができる。そのため、大老君は蓬莱島のトップに位置しているのだ。


 その弟子である公望も、もちろん仙術を学び、さらに仙人になると同時に聖眼も受け継いだ。公望の聖眼は大老君と違い、本物の眼の印だった。公望はそれを嫌って、普段は鉢巻をして隠している。聖眼を引き継いだため、当然のことながら公望もオリジナルの術を開発している。


「ほんに、平和なのんびりとした日じゃのー」


 風麒麟に乗りながら公望は、ぼーっと蓬莱山を飛んでいた。


「こういう日は、大乙たいいつや、妖仁ようじんと宴会でもするのが良いんじゃが。そういえば、ここしばらくあやつらと話しておらぬな」


「お二方も、お忙しいのでしょう」


 風麒麟は丁寧に答えていた。大乙と妖仁とは、公望が道士になったばかりの頃、時を同じくして道士になった公望の数少ない友人である。年齢も近かったことから、三人は道士の時からよく修行をさぼっては遊んでいたものだった。大乙は宝貝作りの名手の下に弟子入りし、その才能を開花させていたし、妖仁は仙人界でも稀に見る、変化の術を用い、三人の中でも最年少で仙人になった天才仙人と呼ばれている。なんにせよ、この二人には公望は心から信頼を置いていたし、お互いの性格はすべて把握していた。


 しばし散策すること、東に10キロ程。小さな島が浮いているのが見えた。何の変哲もない平らな島で、少し大きめの岩がポツリとあった。


「ふむ、ここでよかろう。風麒麟、この島に下ろしてくれ」


 公望は島に降り立つと岩の前に立った。そして、目に見えない速さで手で印を組むと岩に手をかざした。すると岩の表面が歪み穴が開いた。そのまま中に入っていく。暗い通路を歩くとまた印を組む。目の前が、ぱっと明るくなりとても広い空間が広がった。


「さてと、どんな家にするかの?」


 広い空間を見つめながら、頭の中でイメージを膨らます。最初に、滝と流れる川、そして、池が浮かんだ。するとどうだろう。イメージ通り、空間に、滝、川、池ができた。さらに、イメージを膨らます。今度は入り口近くに小さめの一軒家が建ち、向かって右側に簡易な長屋が建った。公望はうんうんと頷くと外に出て公望の家と岩に刻んだ。そして、また中に入っていく。


「風麒麟、そなたはそこの一軒家で休むがよい。不自由を感じたら何時でもわしに申せよ」


「ありがとうございます」


「うむ。まあ今日はこれですることもないし、わしは師匠から連絡があるまで瞑想にふけるゆえ、そなたは休んでおれ」


「わかりました」


 風麒麟は言われたとおり一軒家に入っていった。公望は、いそいそと庭を歩いて滝近くにある岩山に上るとあぐらを組み瞑想にふけることにした。

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