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青い髪のシーリス
髪に櫛を通し、爪先を整える。清楚に見えながらも女の色気をほんの少しだけ残すような服を選ぶ、鏡の前で、最高の微笑みの練習を数回、そうして深呼吸を三回、扉の前で覚悟を決めて、三、二、一
その青年の顔を見て一呼吸、その柔らかな笑顔に圧倒されながら朝の挨拶を交わす。彼が無事出かけるのを見送って、扉の陰に戻る。頬がゆるみっぱなしだ、きっと私の頬は心地よい紅色だ。
『やれやれ、シーリス様ともあろうものが、なんたる様、なんたるていたらく、あの冷厳としたシーリス様はどこに』やれやれという仕草さえ聞こえそうな程、その言葉は私の頭に響く、だからどうしたというのだ、この幸福感、この充実感の前にそんなもの等たいした事ではない。
私の名前はシーリス、青い髪の魔物だ。そう、私は今、ありえない事に人間に恋をしている。
ちゃんと笑顔で挨拶できただろうか、自分の顔は火照りすぎていなかっただろうか、髪の毛はきちんとしていただろうか、去り際に自分はドジをしなかっただろうか、彼は、私の事を覚えて、そうして、好意を持って見てくれただろうか?
『…』ため息という名の沈黙が頭の中に響く”彼の名はマズロウ”故あって、私の中に居る。




