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着地2回目

 風が弱まり、足元の空気がゆっくりと沈んでいく。


「着地する」


 エルンストの声が、耳元で低く響いた。


 ふわりと体が落ちる感覚。

 一瞬、膝が頼りなくなる。


 地面に触れた衝撃が、遅れて体に伝わった。

 空よりも、この重みの方が安心できた。


 ぐらり、と視界が揺れる。


 転びそうになり、半歩よろめいたところを、エルンストがしっかり支えてくれた。


「……大丈夫か」


 エルンストの声は、先ほどよりも近かった。


 私は息を整えながら頷く。


「だ、大丈夫です。ちょっと驚いただけで」


 エルンストは一瞬だけ私の顔をじっと見て、呼吸の乱れや視線の焦点を確かめるように観察する。


 やがて、小さく息を吐いた。


「問題なさそうだな」


 それから、ほんのわずかに眉を寄せる。


「もう少し速度を落とすべきだった」


 自分に言い聞かせるような声音だった。


 少し離れた場所で、アルドが自転車を肩に担いだまま笑う。


「十分慎重だったと思うけど?」


 軽い声。


 その向こう。

 ルーカスが降り立っていた。


 迷いのない着地だった。

 ふらつきもせず、しっかりと。


 金の髪が、少しだけ乱れている。


「まあまあまあ!」


 弾むような声が、倉庫の入り口から響いた。


 振り向くと、扇を片手にクララが立っている。


 深い藍色のドレスに、金糸の刺繍。

 夕暮れの光を背に、まるで舞台の上みたいだ。


「まさか飛んで来られるとは。貴方方、魔法使いなのね。壮観だわ」


 ぱちぱちと手を叩く。


「フィーネ、久しぶりね」


「はい。今日はありがとうございます」


 私は一歩前に出て、頭を下げた。


「いいのよ。面白いものには投資する主義なの」


 そして、視線をエルンストに移す。


「場所の確認に来た」


 短く、無駄のない声。


「倉庫はこちらよ。どうぞいらして」


 くるりと踵を返す。


 倉庫の大きな扉が、ぎい、と開いた。


 私は、一歩踏み出す。


 空から来たのに、

 私が踏み出すのは、やっぱり地面だった。


 胸の奥が、少しだけ高鳴る。


 ここから、また始められるかもしない。

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