似ている光
ルーカスが出ていき、会議室の扉が閉まったあと、少しだけ静かになった。
「……面倒なの拾ったね」
軽く言ったつもりだったけど、
自分の声が、思ったより低かった。
エルンストは、机の上の書類を揃えながら、顔も上げない。
「君のせいだろう」
「そっちじゃない」
「何の話だ」
「女の子。フィーネの方」
エルンストの書類を捲る手が、一瞬止まる。だけど、すぐに動き出す。
「才能ある。無茶する。周りが止めても聞かない。しかも、自分が危ないって自覚が薄い」
エルンストから、研究に至った経緯や研究内容を聞いた時に、フィーネに対して思ったことを指折り数えて、肩をすくめる。
「一番、事故るタイプだよ」
エルンストが、こちらをむく。
「……だから?」
「だから、距離を取った方がいいって話」
俺は壁に背を預ける。
「エルンスト、君さ。守れなかった過去に、まだ引っ張られてるわけ」
ぴし、と空気が張る。
「関係ない」
短い否定。
「本当に?」
俺は笑ってみせたけど、たぶん、目は笑ってない。
「前もそうだった。危なっかしくて、放っておけなくて」
——妹みたいな幼馴染。
——可哀想で、健気で。
——でも、欲しいものは、ちゃんと狙ってた。
「君が目を離した隙に、君の魔具、勝手にいじってさ」
言葉を選ばない。
「結果、爆発。しかも、君の家族を、綺麗に吹き飛ばしてさ」
エルンストの顔がわずかに強張る。
「……アルド」
「事実でしょ」
俺は続ける。
「”あれ”もさ。最初は、被害者みたいな顔してた」
俺にも、甘い言葉を囁いていた。
味方に引き込もうとした。
だから、余計にわかる。
「“自分は悪くない”って顔で、
一番危ないところに、火種を置くタイプ」
視線を細める。
「フィーネも、同じ匂いがする」
一拍。
「違う」
エルンストが、はっきり言った。
「彼女は、壊す側じゃない」
低い声。
感情を削ぎ落とした、強い否定。
そして、視線を少し下げる。
「むしろ、背負い込む側だ」
俺は小さく息を吐いた。
そして苦笑する。
「……同じ過ちを、繰り返さないといいけどね」
「繰り返させない」
迷いのない声。
予想通り。
「……ああ。そう言うと思った」
扉を開ける。
……さて。
今度は、守り切れるといいね。




