割れた静寂
研究室の外が、にわかに騒がしくなった。
複数の足音。
早足で、迷いがない。
次の瞬間、扉がノックもなく開く。
「おい、大丈夫か!?」
「今の音、ここか?」
見慣れたギルド職員と、警備担当が数人、なだれ込んできた。
扉の近くにいた私は、反射的に一歩下がる。
「……大丈夫、です」
声が、少し遅れた。
彼らの視線は、すぐに室内を走る。
作業台の焦げ跡。
爆発した荷物の断片。
「——うわ……」
誰かが、息を呑む。
「何が爆発したんだ?」
「すごい音がしたぞ」
「怪我人は?」
エルンストは、彼らの前に立つように一歩出た。
「怪我人はいない」
短く、断定的に。
それだけで、場の空気が一段落ち着く。
警備の一人が首を傾げる。
「こんな二カ所で同時に爆発が起きるなんて、なんでだろうな」
言葉が、遅れて理解に届いた。
二カ所。
同時。
偶然では、ない。
「ここ以外も、爆発があったんですか?」
「ああ、仕分け部屋のところでな。荷の確認中に、爆発が起きたらしい」
——仕分け部屋。
それは、ルーカスが、いるところではなかったか。
「……怪我人は、いるんですか?」
自分でも驚くほど、声が低くなった。
警備の男が、答えた。
「一人いる。若い魔法使いだ。仕分け担当の。爆発を魔法で押さえ込んで、周りに被害はなかったらしい」
——ルーカス。
確信に近い予感が、胸を打つ。
「医務室に運ばれた。自分で歩いてたから、そこまでひどくはないだろう」
その言葉に、少しだけ、息が戻る。
「……自分で、開けたんですね」
ぽつりと、零れた言葉に、エルンストが、私の方を見る。
けれど、何も言わない。
「私、医務室に行きます」
そう告げると、警備の人が驚く。
「え、やっぱり怪我してるの?」
「私はしてないです。友達が、怪我してるかもしれなくて」
声に焦りが滲む。
エルンストが、静かに頷いた。
「行きなさい」
私は研究室を飛び出した。
⸻
廊下に出ると、空気が違った。
ざわめき。
あちこちで立ち止まる人影。
「爆発って……」
「魔石がどうとか……」
「二か所、ほぼ同時だって」
断片的な言葉が、耳に入る。
背中に、冷たいものが走る。
走りながら、頭の中で、点が繋がっていく。
研究室に届いた複数の箱。
同じタイミングでの爆発。
仕分け部屋にも残ってしまっていたのかもしれない。
医務室の扉が見えた。
私は、呼吸を整える暇もなく、その扉を押し開けた。




